頑張れシニアベンチャー
成果報酬システムで急成長する注目の節水ビジネス「スリースターズ」
自ら開発した節水器具と、効果の「見える化」、徹底した成果報酬で信頼を築き、急成長している株式会社スリースターズ。顧客の立場に立った提案と安心のシステムで業界ナンバーワンを目指す。
株式会社スリースターズ
取締役会長 瀧川正則
1951年生まれ。北海道出身。若い頃から貿易や飲食業、観光事業などで起業を試みるが、株式会社ダスキンのレンタル事業に興味を持ち、加盟店への参加を経て入社。本社の営業推進部で節水事業に取り組み、'04年退社。4年後、仲間と3人で15万円ずつ出資して株式会社スリースターズを設立。
「効果の見える化」で安心を売る
──御社のユニークな節水ビジネスが注目を集めています。
取り扱っているのは、水道の蛇口やシャワーに取り付ける節水器具ですが、単に器具を売るビジネスではありません。まず試用期間として3カ月間お使いいただき、節水の効果が出なければ料金は一切いただかず、器具を撤去します。効果が出て導入のご契約をいただけば、その後は実際に削減できた水道料の4割を成果報酬としていただくというものです。
一応レンタルシステムということになりますが、料金はレンタル料というより、節水システムの管理費用という考え方ですね。半年に1回メンテナンスも行ないますし、当社がさらに節水効果のある器具を開発したら無償で取り替えます。
──実際の節水効果はどのくらいですか?
この器具で、1分間に約10リットルの水量を約7リットルに減らすことができます。佐賀県のトライアル事業に採用されて県立高校でお試しいただいた時は最大で27%の削減効果がありました。現在は全国のホテルや病院、学校をはじめさまざな施設でご利用いただいていますが、あるホテルでは年間700万円も水道料を削減できました。百貨店で400万円削減したところもあります。規模が大きいほど、何千人もの職員やお客さまが毎日使う水の量も膨大になります。「ケチる」のではなく、無駄を省くだけでコスト削減ができるんです。
──成果報酬でお客さまにはリスクのないシステムですね。
このビジネスは何よりも安心を売るものだというのが私の考えなんです。無料の試用期間も成果報酬もそのためです。また、削減効果を示す計算方法の精度の高さもご好評をいただいています。
私どもはまずお客さまのところへ出向き、水の使われ方を詳細に調査します。そして3カ月間ご試用いただき、業種によって施設全体で前年同期と比較したり、ひとり当たりの使用量で比較したり、お客さまにもっともご納得いただける方法で計算します。削減効果を実証し、さらに「見える化」することが非常に需要だと考えています。 設備投資が不要な点でもお客さまにリスクはありません。おかげさまで試用期間後の契約率は90%以上です。
成功を支える強力なパートナー陣
──器具の特長を教えてください。
器具は金属製で親指の先端大。中にはミリ単位の小さな円形の穴が開いた部品があり、この穴が水の流れを絞り、水圧を上げることで節水します。特長としては、当社の器具なら水量を減らしても水圧は落ちないということです。水はシャワー状になって出ますが、「勢いはむしろ強くなったと感じる」という評価をいただいています。管に入れて流圧の変化を確認する円盤器具を応用し、0.01ミリ単位の調節を繰り返して開発しました。
──開発や事業を立ち上げたきっかけは?
この会社を設立する前、私は清掃用具レンタル業界の最大手であるダスキンで営業推進の仕事をしていました。かつてダスキンが節水事業に取り組もうとした時期があり、私は節水についていろいろ勉強していたんです。その経験から新しい器具の開発を思いついたのですが、ダスキンという大会社で事業として進めるには難しい面があり、53歳で退職して起業することにしました。
その後、試行錯誤しながら、仲間を集め、徐々に実績をつくっていきました。大きかったのは、佐賀市内にある精密機械の町工場の社長さんが「応援するから」と、試作品の製造に協力してくれたことですね。現在も製造はここにお願いしていますし、より効果の出る新製品の開発などにも一緒に取り組んでいます。ゼロからスタートするベンチャーにとっては、理解者や協力者がどれだけいるかということが成功の鍵だと思います。
──急成長していますが、導入実績はどのくらいですか?
おかげさまで、すでに東京から沖縄まで全国で600社以上のご契約をいただいています。クチコミでどんどん広がっている印象です。3カ月の試用期間のために一つひとつの蛇口に器具を取り付けるのは大変な手間ですし、このビジネスを始める時は、周囲からよく「失敗するからやめろ」と言われたものです。でも私は確かな技術と製品の品質には絶対の自信がありましたし、当社に対するお客さまの信頼を築くことさえできれば必ず成功すると確信していました。
──販売方法は代理店システムですか?
うちの技術や事業に共感していただける方に、ビジネスパートナーとしてご協力いただいています。個人事業主、企業を含め、現在40社ほどが全国各地の拠点として活動してくれています。特に今、定年退職後の60歳前後の方は本当にパワフルで、当社の強力なパートナーとなっています。私は販売代理店という考え方が好きじゃないので、皆さんとはフィフティフィフティの関係で、お互いにお互いの価値を高めあう存在だと考えています。皆さんと共にパートナービジネスとしての新しいモデルをつくっていけたらと思っています。
"非常識"を武器に、業界ナンバーワンを目指す
──将来に向けての目標や夢は?
水で利益を上げさせていただいているのだから、水で社会貢献したいと考えています。57歳という年齢でこの事業を始めた背景には、そういう思いがありました。世界には汚い水しか飲めない子どもたちもたくさんいます。まだ模索中ですが、とりあえず第一歩として、そういう現状を日本の子供たちに伝えるために、教育用のDVDを制作し、全小中学校に配っていただけるよう佐賀の教育委員会に寄付しました。
──起業における成功の秘訣は何だと思いますか?
お客さまの信頼を得ることや協力者の存在などいろいろありますが、ベンチャー企業としては、私は社員によく『非常識であれ』と言っています。常識的な考え方は常識的な結果しか生みません。非常識な考えが思わぬ結果を生み、急成長も可能にするんです。
うちは小規模でスタートしたばかりですが、節水は環境対策でもあり、コスト削減にもなります。まだまだ成長・拡大する業界だと思いますし、やるからには業界ナンバーワンを目指します。
掲載日:2011年12月15日