会議が始まると開口一番、「なぜ現場に女性を採用しないのか。これからは女性が現場にいてもおかしくないのではないか」と提案。居並ぶ作業服姿の幹部たちは一様に複雑な表情を浮かべた。現場のベテラン技能工たちがどう思うか、現場に聞かなくても反対するのは分っていた。
東京・大田区の蒲田には伝統と格式を誇る蒲田女子高等学校がある。野村は幹部の不安をよそに蒲田女子高校からの募集を決断する。といっても相手のあること。面接に応じてくれたバスケット部出身の2人に対し野村はおそるおそる「現場に興味あるかい」と聞いてみた。答えは意外にハッキリしていた。「あります」だった。
南武に応募した2人の女子高生の目的は、単なる興味本位からではなかった。学校で学んだコンピュータ技術を現場で実践できることにあった。南武が導入している最新鋭の機械装置は、ほとんど例外なくコンピュータで制御されている。いわゆる現場の職人たちの腕の見せ所は削るものによってドリルを交換したり、加工プログラムに沿って鉄を削っていく技術などに限られている。裏を返せば、基礎となるコンピュータ技術を理解できなければ、南武の現場では使い物にならないわけである。
「今から10年前の現場ではコンピュータが理解できなくても勤まりました。ところがコンピュータの知識が必要な時代だというのに、最近、コンピュータのできる高卒男子がいなくなりましたね」と、野村はため息をつく。
南武の現場には現在、6人の「ドリルガール」と呼ばれる女子社員がモノづくりに励んでいる。だが、女性の活用という意味では同社の一職場のことに過ぎない。ほかの技術部門の職場を覗くと目を見張る場面が飛び込んでくる。(敬称略)