売上アップ取り組み事例集
お客さまのことを知りたい!手作りポイントカードの活用(事例4回目)
キーワードは「お客さまの気持ち」と「伝える力」。社長を中心に、社員全員で経営革新に挑む。
売上アップのためには、お客さまの心をつかむ地道な努力が欠かせません。今回は、社長を中心に、社員全員で経営革新に挑んだ2つの事例を、3回にわたってご紹介します。
文:大石幸紀(中小企業診断士)
お客様のことを知りたい
さいたま市見沼区にある胡蝶蘭販売ショップ「らんや」は、胡蝶蘭生産農家の黒臼秀之さんが、栽培した胡蝶蘭を市場を通さず一般のお客様へ小売するために平成19年に設立されました。贈答用胡蝶蘭を卸価格で販売しているために、土日を中心に関東近郊からお客様が車で訪れます。平成22年度の売上高は、年間で3,000万円ほどでした。
来店者数が増える中、当店では一つ困ったことを抱え始めました。それは、お客様のことを全く知らない、ということです。胡蝶蘭は一鉢で1万円以上する高級品ですから、当店で一度にお買い上げいただく金額は相当の額になります。また何度もご来店いただけるお客様もいらっしゃいます。にもかかわらず、当店ではお名前を呼んでお礼を申し上げることもできない。また、どれくらい購入していただいているかもわからない。そんな状態が続いていたのです。
そこで、社長を中心にらんやの店員は、どうすればお客様のことを知ることができるかを考えました。いろいろと勉強したり、中小企業診断士に相談した結果、ポイントカードを導入することにしました。通常、ポイントカード導入の狙いはリピーターを増やすことや、客単価を上げることですが、当店では、まずはお客様のことを教えていただくためのツールとして活用することにしたのです。
お金を極力掛けずに顧客管理まで実践
ポイントカードは、どのパソコンにも入っているワープロソフトを使って自作しました。大きな文具店に行き、通常のコピー用紙よりも多少厚い色紙を購入し、自社の複合機で印刷しました。A4一枚の紙から4枚のポイントカードを作ったので、掛かったお金は厚紙100枚の料金だけでした。
お買い上げ1000円毎にスタンプを押していき、50個たまったら、次のお買い物時に3,000円割引しています。それほど、高い率ではありませんが、ほとんどのお客様に、カードを作って頂いています。
ポイントカードには、お客様のお名前とご住所、お誕生日を記入してもらっています。なお、個人情報保護法に則り、お客様宛にお手紙を送らせていただいても良いかなど、ご許可をいただくようにしています。
ポイントカードをきっかけに、お客様のことを知ることができました。お客様を○○様とお名前でお声がけができるようになったことで、お客様とのお話も弾むようになりました。当社では、そのことだけでポイントカードの目的は達成できたと言っています。
当店では、ポイントカードは原則として店舗で保管させてもらうようにしています。胡蝶蘭は、それほど頻繁に購入されるものではないので、せっかくご来店いただいても、ポイントカードを忘れたり、無くしてしまうことがあるだろうという、お客様の利便性を考えてのことです。レジでお名前を言っていただければ、すぐに取り出しができるようにカードの右上にお名前の頭文字を記入できるようにしています。
カードを預かっているのには、もう一つ理由があります。それは、お客様お一人お一人が、どれだけ購入しているかを把握するのに使っているからです。
お客様が利用されたカードは、すぐにしまわず、閉店後に今日一日に使われたカードが、そのお客様毎に、何冊目で、どこまでスタンプが押されているかを、表計算ソフトに顧客番号とともに入力しています。例えば、そのカードが発行3冊目で45までスタンプが押されているとすれば、今まで(2×50)+45=145個のスタンプを押しているので、145,000円以上のお買い上げをしていただいたことを把握できているのです。ですので、ポイントカードの裏面には、そのカードがそのお客様にとって何冊目の発行なのかを記載する欄を設けています。高額なシステムを導入しなくても、表計算ソフトだけで、どのお顧客が当店に貢献してくださっているのを、知ることができるようになりました。
お客さまとのコミュニケーションにも
お客様の住所を知ることができたことを契機に、手紙を送っても良いとのご許可をいただいているお客様には、当店の出来事を綴った「らんや通信」を送ることを始めました。また、今後は当店に特に貢献しているお客様には、特別な商品の提供やクーポン券の発送などをしていきたいと考えています。このような、お客様のことを知りたい、と始めた活動の成果が少しずつ実を結んでいることもあり、当店では今年度は売上が130%アップする見込みです。お客様のことを知りたいという思いが伝われば、お客様も応えてくださる。それが、黒臼社長の感想です。
企業データ
- 企業名
- 有限会社黒臼洋蘭園
- Webサイト
- 代表者
- 黒臼秀之
- 所在地
- 埼玉県さいたま市見沼区染谷1-188
- Tel
- 048-683-6727
- 事業内容
- 胡蝶蘭の販売
掲載日:2012年3月 6日
同じテーマの記事
- やってみる、あきらめない。地域密着徹底でファン獲得(事例1回目)
- 行動から学びつかむ成長の糸口。販路拡大で待ちの営業脱却(事例2回目)
- 協力と外部資源の活用が原動力。開業支援で規模の利益獲得(事例3回目)
- お客さまのことを知りたい!手作りポイントカードの活用(事例4回目)
- 「伝える力」の相乗効果POPで磨かれる社員の取組み(事例5回目)
- コミュニケーションの真髄。イベントでスタッフと共に育つ(事例6回目)
- 既存顧客数をアップする。中小・零細店舗の大型店対策(事例7回目)
- 顧客単価をアップする。中小・零細店舗の大型店対策(事例8回目)
- パート社員の能力を開発する。中小・零細店舗の大型店対策(事例9回目)