中小企業NEWS特集記事
「ミライロ」障害を価値に変えて儲ける
この記事の内容
- JVA2018経済産業大臣賞の受賞が仕事に励みに
- 健常者と障害者が共に考えてよりよいものを生み出すのがポリシー
- 2020年東京オリンピック・パラリンピックを機に海外展開も
革新的で潜在能力の高い事業を展開する志の高い経営者を表彰する中小機構の「Japan Venture Awards (JVA) 2018」の大賞にあたる経済大臣賞をミライロの垣内俊哉社長(28歳)が受賞した。施設や設備のバリアフリー化やユニバーサルデザイン(UD)関連事業に取り組む同氏は骨形成不全症という骨が折れやすい遺伝性の病気で車いす生活を送りながらも事業を拡大し続けている。障害者だけでなく高齢者や3歳未満の乳幼児などUDを求める人は日本の総人口の3人に1人。「日本をUD先進国に」と意気込む同氏に受賞の抱負や将来展望を聞いた。
——JVA2018の受賞、おめでとうございます
「20歳で起業して8年。栄えある賞をいただいたことは、私はもちろん一緒に働いてくれている若いメンバーの励みになります。学生時代の友人とアパートの1室から始めた創業当時は飲まず食わずの日々でしたが、賞をいただいたことで私たちが描いていた夢は実は、みんなの夢でもあると確認できました。もっとがんばろうと背中を押してもらったような気分です」
——「バリアバリュー」が企業理念ですが
「障害のある人の視点を新しい価値に変えようという意味です。車いすに乗っていれば健常者が気づけない5ミリの段差に気づく。僕らは5000人の障害者にモニターとして協力していただいて、その声や経験から新しいビジネスチャンスを見つけています」
——バリアフリー、ここが変だなと思うことはありますか
「駄目だから変えてくださいとは言いません。一緒につくって行きましょう、というスタンスです。課題は環境、意識、情報の3バリアです。環境では、段差や階段、トイレをどう変えていくか。意識では、高齢者や障害者には無関心か過剰になりがちですが、知識や契機がないだけなので、この『ない』を変えていきます」
「情報では、車いすで行ける飲食店やホテルにたどり着く術を提供していきます。これらにビジネスとして取り組んだ人たちが儲かって、やって良かったと心の底から思えるようにしたいと考えています。『一緒に生み出して一緒に儲けていく』のは私たちが大切にしているポリシーですし、日本を良くする基盤になると思います」
——UD化を進めていますね
「『すべての人のために』が起点の考え方ですが、みんなが使いやすいようにするには、みんなが少しずつ我慢しなくてはいけません。例えば横断歩道の段差。車いすやベビーカーのユーザーにはバリアですが、視覚障害者は段差がないと境界に気づきません。点字ブロックも同じです。誰かにとっての自由や使いやすさが他の誰かの不自由さになります。お互いに使い易いものは何か考えることが大事です」
「完璧なユニバーサルデザインはおそらく存在しません。点字ブロックも5年、10年先にはなくなっているかもしれません。今はGPS(全地球無線測位システム)の精度が上がって誤差は1センチ単位と言われています。わざわざ棒で突かなくてもスマートフォンで誘導できるように、変わっていくものなのです」
——2020年のオリンピック・パラリンピックまで、さらに注目されそうですね
「もっと打って出るべきだと思っていますし、それが2020年以降の展開につながるだろうなと思っています。日本はバリアフリーが進みつつありますが、そうでない途上国も多いのです。私たちが培ったコンテンツやビジネスモデルを世界に発信していくことで世界中の障害者に新しい活躍の場をつくることが私たちの役割です。2020年の成功は必要条件。2020年を日本のユニバーサルデザインが世界に打って出て行くための飛躍台にしたいですね」
企業データ
- 企業名
- ミライロ
- Webサイト
- 設立
- 2010年6月
- 従業員数
- 51人
- 代表者
- 垣内俊哉氏
- 所在地
- 大阪市淀川区西中島3-8-5 新大阪松島ビル8F
- Tel
- 06-6195-7853
- 事業内容
- 店舗、設備、製品のユニバーサルデザイン化にともなう企画・設計、バリアフリーマップの企画・デザイン制作及び販売、ユニバーサルデザインに関する各種情報の収集及び提供、企業・行政・教育機関における教育および研修