中小企業応援士に聞く
企業規模よりもキラリと光る技術で地域の「未来エンジン」に【西光エンジニアリング株式会社(静岡県藤枝市)代表取締役・岡村邦康氏】
中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。
2021年9月13日
1.事業内容をおしえてください
当社は1987年10月に創業し、今年で34期目を迎える。創業前は茶どころで知られる静岡県島田市内の製茶機メーカーで設計・開発を行っていた。そこで培った技術や経験をもとに焙煎と乾燥の分野で機械の設計・開発などを手掛けている。
このうち焙煎については、創業以来、伊藤園の麦茶の焙煎機の製造を行っている。現在、伊藤園の麦茶の国内市場占有率は約45%で、その大部分が当社の焙煎機を利用したもの。創業以来、当社の収益を支えてきている分野である。
一方、乾燥分野では、気流導入型のマイクロ波減圧乾燥機を世界で初めて実用化した。野菜やフルーツなど素材の持つ色彩・風味を損なうことなく、しかも高い熱効率で乾燥することができる機械。食べ物だけでなく、植物由来で軽量・高強度の新素材として注目されるセルロースナノファイバー溶液の濃縮や、水素で走る自動車に不可欠な触媒の原料の製造にも利用できる。脱炭素社会やSDGsが注目されるなか、将来性・可能性を秘めたコア技術となっている。
経営目標は『マイクロビジネス型の地域企業として、「地域の未来エンジン」を目指す』。売上高や資本金、従業員数など企業規模を大きくすることよりも、他社の一歩、二歩先を行く技術開発を優先させている。それにより、小さいながらも大企業にはないキラリと光る技術を持ち、その技術を活用して地域経済に活力を提供していきたいと考えている。
2.強みは何でしょう
下請けからの脱却を目指し、関連会社である株式会社沖友(1998年設立)とともに、中小企業新事業活動促進法や農商工等連携促進法などに基づく事業を積極的に進めた。まず2007年に新連携事業として、熱風乾燥とマイクロ波加熱を併用した紙管・帆立貝柱・モズク乾燥方法の開発と事業化、2008年には、地域資源活用事業として地元・藤枝産のお茶を活用した新製品開発、さらに農商工連携事業として、塩蔵しない生の宮古島モズクを用いた新商品の開発・販売について、それぞれ法律の認定を受け、事業を行ってきた。
これらの事業を通じ、帆立貝では北海道の企業、モズクでは沖縄の企業とのつながりができるなど、約40社におよぶ全国ネットワークが構築された。この全国ネットワークを活用し、2013年に戦略的なBCP契約を締結した。これにより平時には営業面での業務提携、災害時には生産面での相互応援体制を築くことができ、盤石の経営基盤を有することとなった。こうしたさまざまな取り組みを取引先や支援機関に評価していただき、強固な信頼関係を築けている点が当社の強みだと考えている。
また、マイクロ波減圧乾燥機をはじめとした高度な技術力を武器に、ドライフルーツなどニッチ産業の専用機を中心に手掛けていることで、技術面やコスト面での競合が少ない。そこから生まれてくる利益を研究開発に係る先行投資に充当することができている点も強みである。
3.課題はありますか
人材の採用・育成が永遠の課題だ。当社の従業員は私を含めて12人で、経験を重ねた熟練の技術者が多い。しかし、ファブレス型の企業であることから、発想力や企画力に富んだ人材がぜひとも必要である。当社の経営目標である「マイクロビジネス型の地域企業」として発展していくためにも、高度な技術に裏打ちされた企業価値の向上を目指した社員教育に取り組んでいきたい。
また、日本市場では限界もあることから、海外拠点の整備など将来を見据えてJICAの事業によるミャンマー人の人材教育の計画を進めてきた。ただ、今年2月の軍事クーデターの影響で計画はストップし、現在は様子見の状態だ。
4.将来をどう展望しますか
事業承継後の当社の事業展開を見据え、既存取引先との連携強化はもとより、新たな案件発掘に向けた種まきを行っている。将来的に事業後継者が安心して経営を担っていけるように、しっかりと事業基盤を固め、現在保有しているコア技術を応用した商品開発などを展開していければと考えている。
今後も、創業当時からの経営理念でもある、光るコア技術をもって「地域の未来エンジン」を目指し、地域を牽引していける存在になっていきたいと考えている。
5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか
当社が所在する藤枝市と沖縄県宮古島市は2011年に友好都市を提携した。そのきっかけとなったのは、生モズクを扱った農商工連携事業、さらに、宮古島で仕入れて駿河湾の深層水で養生した海ブドウの商品化・販路開拓の事業といった当社と宮古島との連携事業だった。当社の地道な取り組みが端緒となって友好都市提携が実現したことは大変光栄なことだと思っている。2016年には私が会長となって「藤枝と宮古島の交流を進める会」を発足させた。双方の地域の産品や技術を生かして新たな特産品を創出するとともに、スポーツ・文化の交流も進めていきたい。
また、当社が構築した全国ネットワーク約40社の連携企業とも良好な関係を維持している。これは、誠心誠意お互いに協調し合いながらウィンウィンの関係を築けていることによるものであり、今後も連携企業とは協力していきたい。
6.応援士としての抱負は
私は「中小企業応援士」として、そして当社は「地域未来牽引企業」としての使命を果たす。それはまさに私の信念そのものだ。2019年には、「茶の都・藤枝」を目指し、茶農家や茶商、製茶機メーカー、飲料メーカーといった関係者が一堂に会す「藤枝茶を何とかしようプロジェクト」を設立するなど、地域の活性化に向けた活動を行っている。「地域と共に」を合言葉に、地元企業の皆さんと寄り添いながら地域の発展のために尽力していきたい。
企業データ
- 企業名
- 西光エンジニアリング株式会社
- Webサイト
- 設立
- 1987年10月20日
- 代表者
- 岡村邦康氏
- 所在地
- 静岡県藤枝市高柳3-30-23
- Tel
- 054-636-0311
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