BreakThrough 企業インタビュー
正確な表現を可能にするLEDライト「KELZ」は誰もが簡単に使えることを念頭に開発された【株式会社エーディエス】
2018年 3月 29日
summary
LEDライトで実用レベルの調光を可能に
使い手の使いやすさが第一
まずは正しく興味を持ってもらうことが大事
作者の意図を忠実に表現するLEDライト
美術館や博物館に展示される絵画などの作品は、光の照らし方によってその印象が大きく変わってくる。
「作品を展示するとき、絵がしっかりと作者が意図するような形でライトアップされないといけない。」
そう語るのは、無線ネットワーク技術を活用したシステム開発を得意とするエーディーエスのLED照明デザイナーである馬場美次氏だ。これまで博物館や美術館で利用されるミュージアムライトは白熱球をベースとしたものがほとんどだった。その理由はシンプルなもので、LEDライトでの調光と白熱球での調光ではその見え方が異なってしまうという問題があったからだ。
しかし、省エネ・長寿命化が叫ばれる時代の流れから、今後は白熱球からLEDライトに置き換わっていくと予測し、ミュージアム側が要求する高いレベルの色温度を実現したのがミュージアムライト『KELZ』だ。
不慣れでも感覚的に操作できる仕様を追求
「KELZ」には同社が得意とする無線ネットワーク技術が用いられており、スマートフォンやパソコンから簡単にライトの調光を行うことができるようになっている。1台ごとの個別調光はもちろん、複数台をグルーピングすることで一括調光にも対応しているというのがポイントだ。
ライトを無線調光する上でこだわったのが、たとえ素人であっても感覚的に使えるという点。無線調光では機器ごとに、もしくはグループごとに調光を行うための識別を必要とする。従来のやり方であれば、管理するために機器ごとのシリアル番号を管理機器に入力して紐付けする必要があるが、これは利用者の機器管理においてハードルを高める要因となっていた。しかし、同ライトではNFCを搭載したことでスマートフォンを“かざすだけ”で容易に関連付けができ、調光が可能となる。
調光データはサーバー経由でゲートウェイに記録する仕組みとなっているが、セキュリティ面から外部への通信を遮断しているケースや、建造物の構造上無線が届きにくいといったケースにも対応させるため、KELZ本体にもデータメモリを実装しており、通電することで調光することも可能だ。
常に最善な選択をとるために
芸術・美術品は照明によって見え方が大きく異なる。本来の魅力を感じるためには照明は非常に大きな役割を担う。しかし、日本と海外では事情が異なり、日本の博物館や美術館には照明をデザインする照明デザイナーは不在だ。
学芸員は美術・芸術品に対する知識は豊富でも、どのような照明が作品にとってベストかという点については疎いという現状も「簡単に調光できる」ことにこだわった理由だという。
また、無線技術の寿命と技術革新のスピードは比例しない。このことは同ライトでも十分考慮された作りとなっており、同社が予想する範囲以外への技術進化があった場合でも、一部のパーツを付け替えることで対応可能な柔軟性も持ち合わせている。
調光に対する理解を深めるところから
今後、「KELZ」を展開していくにあたって最も必要なことは美術館・博物館におけるこれからのLEDライトでの調光に対する理解だという。
というのも、LEDライトは急激に進化が進んでいる分野であるものの、どのように変化していくのかという点においては、いまだ未知数。そのため、同社では実証実験と並行して美術系大学などでライティング講義を行うなどの照明デザインの周知活動に注力しつつ、ファブレス展開を見据えている。
本当に必要なものを自由に組み合わせることができ、“誰でも”“簡単に”使えることこそこれからの時代に求められるもの。独自の規格で先駆者になろうという企業が多いなか、同社の製品にはユーザーを第一に考える姿勢が随所に見られる。ミュージアム以外にも、洋服、貴金属などのディスプレイ展示用、ライブイベント用など、ライトの用途や種類の数だけ、活躍の幅も拡大していくだろう。
企業データ
- 企業名
- 株式会社エーディエス
株式会社エーディエスは、最先端のデジタルミュージアム技術、映像技術、センサー技術で安心・安全で豊かな社会の実現に貢献します。