PICK UP

医療機器を搭載した軽自動車で、過疎地域の医療格差を解消する【株式会社エスティサポート】

2020年 4月 2日

簡易医療を提供できるヘルスケアビークル
コンパクトな車体でも、搬送用の本格的なストレッチャーなどを搭載
製品名=「ヘルスケアビークル」

小回りの利く軽自動車に基本的な医療機器を搭載

離島や山間地域などには救急車が通行できない道幅の狭い道路も少なくない。そのような地域での緊急時に簡易医療を提供できるように開発されたのが、株式会社エスティサポートの「ヘルスケアビークル」だ。高規格救急車両の約5分の1という低価格で提供できる。

車体は小回りの利く軽自動車を採用。患者搬送用の本格的なストレッチャーや酸素吸入用ボンベ装備、AEDは基本仕様で、オプションとして超音波診断機やコンパクトX線投影機等、車いす収納固定装置などの用意も可能だ。このほか独自開発された正弦波100V電源(外部電源自動切り換え装置付き)を装備しているため、安定的な電源を車内で供給できる。

同製品は救急車やドクターカーではないため、緊急指定は必要なく、一般の患者移動車として登録するだけで誰でも所有できる。緊急走行はできないものの、特区指定地域であれば、パトライト/サイレン装備することにより、小型救急車として緊急車両登録も可能となる。

東日本大震災の教訓をもとに製作

同社は東日本大震災後、東北3県に「コンパクトドクターカー」を計11台導入。その際のノウハウを生かし、使い勝手を改良・発展させたのが同製品で、一般に広く普及させるため、軽自動車検査協会からも助言を受けながら製作を進めた。

車両は基本的に一台ずつ製作しており、顧客からのカスタマイズの要望などにも臨機応変に対応。また、有限会社ドリームクリエーションとの提携により、車両納入の際の煩わしい登録申請処理も一括で請け負っている。

過疎地域の医療格差をなくすためのコラボを

同製品の活躍が期待されるのは、狭あいな道路の先や山間部の集落などでの医療や介護で、緊急対応時だ。今後は日本国内のみならず、東南アジアなど道路整備が遅れている国と地域への販売も強化していくという。

また製品自体も車内に通信モバイルを整備し、遠隔医療に対応できるようアップデートさせていく予定。未熟児搬送用の保育器を搭載し、「未熟児ドクターカー」としての展開も考えている。さらに、さまざまな医療機器メーカーとのコラボレーションで、過疎地域の医療格差をなくしていきたいとする同社。思いを共有する企業との共創で、さらなる課題解決につながる新価値の誕生に期待したい。

取材日:2020年1月6日

企業データ

企業名
株式会社エスティサポート

2008年設立。特種用途車両・身体障がい者用車両および機器の設計・製造・販売を行う。19年8月より、軽自動車ドクターカーのノウハウを活かし、医療・介護分野を包括的にカバーする専用巡回車を新たに提案。「ヘルスケアビークル」として展開している。