「ミクシィやフェイスブックに非常に近いシステムです」。月井精密の名取磨一(なとり・きよかず)代表取締役社長(34)は、代表的なSNS(ソーシャルネットワークサービス)の名を挙げて、見積り作成支援システム「Terminal(ターミナル)Q」の仕組みを説明する。単に見積り作業を自動化できるだけでなく、登録企業同士で受発注できるという画期的な機能を持っているからだ。今後、認知度が上がるにつれて急速に普及し、日本の中小製造業の生産性を大きく向上させるコアシステムとなる可能性を秘めている。
「ターミナルQ」の基本的な機能は見積書の自動作成にある。見積り金額は「単価×時間」で計算するので、ユーザーは予め「旋盤」「塗装」など見積り金額に反映させる自社の各作業工程と作業者を自由に登録し、それぞれの工程と作業者ごとの時間当たりの単価を設定しておけばいい。顧客から送られてきた図面をパソコンやタブレット、スマートホンなどの画面に取り込み、その図面をもとに、材料や作業工程、機械、作業者などを画面上で選択していけば、自動で見積書が作成される。見積書の書式はもちろん社名やロゴマークなども予め自在に設定しておくことができる。
もう一つの機能がSNSだ。製造業には、1社だけでは顧客の注文通りの製品を仕上げることが難しい場合に、「転注」と言って、同業他社などにその製品の一部分の製作を発注するケースが往々にしてある。「ターミナルQ」はこの転注がスムーズにできるように工夫されているのだ。発注側の企業は、画面で「東京都」など地域と「メッキ」など業種を選択して検索すると、該当する企業がリストアップされるので、その企業名にリンクされているホームページで企業概要などをチェックしたうえで、転注先候補企業を選び、相手の画面に図面を送って見積りをとればいい。最大3社までの相見積りがとれる仕組みになっている。チャットの機能もついているので、発注側と受注側はこのシステムを通じて自在にやりとりできる。
そして3つ目の機能がデータベース化だ。「ターミナルQ」は見積書作成の過程で入力した数字や選択した工程、機械、作業者、発注先・受注先間のやりとり、顧客データなどのすべてがクラウドコンピューティングの環境下で保存されるので、それらのデータを使って各種の経営分析ができる。例えば「工数分析」。図面ごとに作業時間を入力しておけば、見積り時の予想作業時間との差異が月ごとに自動集計されるので、工程や作業者など社内の強みを分析することが可能だ。
名取社長は自社に導入した経験から、「とくに、これまであまり顧みなかった失注率を分析できるのが大きい」と語る。「ターミナルQ」に蓄積された見積りから統計データを自動集計するので、受注率や受注額の推移、顧客別の傾向などがひと目でわかるようになり、失注の要因も明らかになるのだ。