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「RKL(京田辺市)」福祉・介護の現場発アイデアを事業化

この記事の内容

  • 認知症患者の徘徊時・転倒リスクに思い悩む
  • 歩行困難者のリハビリで「歩行器補助シート」がひらめく
  • 目指すゴールは国民の健康寿命の延伸
補助シート「アルケル」を装着した歩行器を押しながら、ほほえむ姫野氏

長年、働いてき福祉・介護の現場で、ふと思いついたアイデアを事業化したのが,RKL代表取締役の姫野宏氏だ。理学療法士として、また按摩(あんま)マッサージ指圧師として、さまざまな現場を体験してきた姫野氏は、認知症を患った人たちが昼夜を問わずに徘徊し、とくに徘徊時の転倒リスクが大問題であることを知る。

何とか転ばないようにできないものか…。その思いが歩行器補助シート「RKL(アルケル)」に結実する。

RKLは既存の歩行器に簡単に取り付けられる補助シート。下肢筋力の低下などで歩くことが困難になった人を助ける歩行器を、より安全・安心の装置に変えるものだ。

歩行器を使ったリハビリのサポートを数多く経験してきた姫野氏は、ある時、ひらめきを得た。通常、歩行訓練は、介助者が、リハビリ者の脇の下に、後ろから両腕を通す格好で進める。そんな形でリハビリを支援していた姫野氏は、たまたま持ってきていたカバンが目に入り、「カバンを座面代わりにしたらどうだろう」とのアイデアが浮かぶ。

すぐに、カバンの本体部分を裂き、持ち手部分を歩行器に引っ掛けて使ってみたら、これが大正解。RKL製品化へのスタート点となる。

姫野氏は働いていた施設で、施設職員の苦労をたくさん目にし、また自ら実体験する。とくに認知症への対応には泣かされたという。その施設では、認知症の人たち20~30人に職員1人が対応していたが、徘徊者が少なくなく、職員は夜も眠れない状況が続いた。

年配の認知症徘徊者は、よく転ぶので転倒防止も大きな課題。何か策はないものかと頭を悩ませていた。リハビリでのカバンの活用と施設での徘徊対策問題。この二つが重なりあって歩行器補助シートRK Lが開発され、また株式会社RKLが誕生する。

姫野氏は子供の時からのラガーマンで、大学時代は名門・同志社ラグビー部で活躍する。残念ながら大ケガをしてラグビー選手の道は絶たれたが、ケガを契機にトレーナーと親しくなって、マッサージや鍼灸・指圧を知り、今日につながる。また、母校同志社大の縁でD-eggに拠点を構えることになる。

RKLの販売実績は、発売からまだ日が浅く、「ポツンポツンと売れている」(姫野氏)といった状況だが、高齢化と人手不足の同時進行から福祉・介護分野での需要拡大が見込まれよう。同社では、福祉・介護関連の市場拡大を見越して、車椅子ブレーキ棒、自立支援万能棒といったアイデア製品の開発も進めているところだ。

姫野氏がラグビーで培ったチームプレーの精神が発揮されたのか、同社はD-egg入居企業の有志を募るなどで「チームRKL」を結成している。チームRKLでは、日本茶の無農薬栽培方法の研究開発、微酸性電解水の用途開発と障がい者就労施設などの経済的自立支援、海藻アカモクの加工による京都北部の地域振興-など多岐にわたる事業プランを描き、そのいくつかの実践に乗りだしている。

事業内容は異なるが、貫かれているもの、目指す方向性は一つだという。それはチームRKLがミッションとして掲げている『国民の健康寿命延伸を図り、誰もが働くことで生活を営むことができる社会の実現』である。

「訪問介護やマッサージの仕事で、毎日15軒ほど回っていた時もある。福祉や介護の現場体験では誰にも負けないとの自負がある」(姫野氏)。ラグビーで鍛えた体力と、事業のタネを次々と見つけ出すアイデア・発想力-この2つを備えた姫野氏が率いるチームRKLが、どんな成果を収めるか。その行方に大きな期待を寄せる向きが少なくない。

企業データ

企業名
RKL
Webサイト
設立
2016年3月
資本金
10万円
従業員数
登録ヘルパー含め5人
代表者
姫野宏氏
所在地
京都府京田辺市興戸地蔵谷1、同志社大学京田辺キャンパス業成館D-egg内
Tel
0774・66・3676
事業内容
介護関連用品の開発・販売、地域特産品の粉砕加工