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「犬小屋製作工房Kハウス」犬小屋を全国へネット販売

この記事の内容

  • 実家の農業を継ぐため高知県土佐町にUターン
  • 農閑期に犬小屋製作を始めネット販売を開始
  • 年500軒の注文、猫用も好調、マンション用も計画
「インターネットなくしてはできない仕事」という川村代表(作業場の壁に飾った見本の前で)

eコマース(電子商取引)の国内市場が急成長を続けている。経済産業省の調査(昨年5月)によると、2014年の消費者向けの市場規模は12・8兆円で前年比14・6%増と高い伸びを示した。インターネットで購入できる手軽さと自宅まで届く利便性が、市場を拡大している。中小企業、小規模事業者の販路拡大としてeコマース活用は有効であり、無店舗で国内外に販売できるメリットは大きい。eコマースを使い事業拡大を図る中小企業や小規模事業者の活躍を紹介する。

高知県土佐町は、四国の中心に位置し豊富な森林資源に囲まれた風光明媚な山間部にある。この地で作る犬小屋を求め、全国から注文が入る。犬種や屋内外など飼い主の飼育環境は多様だ。既製品で満足できない人たちが、インターネットで「注文犬小屋」を見つけ出し問い合わせてくる。欲しいモノは、作っている人を探す時代ともいえる。

こうしたニーズを掴んだ犬小屋製作工房Kハウスは、川村幸雄代表取締役(60)が個人事業主として始め、事業拡大に合わせ法人化するまでに成長した。「農作業の空いた時間を利用したいと考え、ダムで探した流木をeコマースで売り、戌年に合せて犬小屋作りを始めた。これがヒットして注文が入るようになり、今は犬小屋製作に専念している」と事業化の経緯を説明する。

川村氏は関西で建築業に従事し、15年前に実家の農業を継ぐため土佐町にUターンした。犬小屋作りは10年前に始めたという。犬小屋とはいえ家屋並の構造と強度を備えた本格的な造り。材料は、地元産れいほく杉を使用する。「柱・梁材などに使われる杉で、匂いも少なくペットに適している。地元の原木市場で買い、地元で製材するので地域貢献にもつながるのが嬉しい」と表情が緩む。

1人で始めた事業だが現在は社員4人。スタッフは大工さんを含め総勢13人の規模にまで増えた。全員が地元雇用だ。家造りの技術を持つ大工さんが犬小屋を作るだけに高品質は自慢のひとつ。

注文は、メールで受け、詳細な要望を聞き川村氏が設計図を書いて送信する。何度もやりとりを繰り返し、納得した形で製作に入る「注文住宅」。このため納期は1カ月かかるが、これが満足度を高め、口コミなどで広がる。こだわるのは、完成した犬小屋を分解しパーツに分けて送る仕組み。愛犬家が自宅で組み立てる手作り感も人気を高めている要因だろう。

10年間の累計販売数は4000軒以上、現在は年間500軒程度の注文がある。2年前に始めた猫小屋も好調で、20万円以上の犬・猫小屋の注文が増えているという。「山の中で始めた95%以上が地産外消ビジネスは、インターネットがなくてはできない」と語る。

川村氏がパソコンを始めたのはUターンしてから。商工会の勉強会や研修会、セミナーなどへ通いeコマースを学んだ。ホームページ制作は専門家に依頼したが、情報更新は自分で行っている。

ただ、「何でも自分でやってみようと考えたが、売り方や販路開拓は苦手。適性価格もどうしていいのか分からない」という状態があった。2010年6月に地域資源活用事業の認定を受け、その後、中小機構の販路開拓コーディネート事業による販路支援で企業と接点を持ち、値付けなどを教わる。

IT(情報技術)設備は、パソコンと光回線だけ。ホームページには、これまで製作した犬小屋、猫小屋の写真を豊富に貼り付け、愛犬家へのアピールを怠らない。

今後は、新開発の防音ケージカバーの量産化に乗り出す方針。アクリル製の扉と換気装置を備え小型化した規格品の犬小屋を12万円程度で販売する計画だ。マンションでペットを飼う愛犬家のニーズに対応する。

「新たに生産工場を設け、効率よい生産を行うことで現在の3倍の規模に拡大させていきたい」と計画を披露する。本格的な工場設備を整えることで、社員を増やし、技術者を育て、次の新商品開発を行う環境ができる。大手通販サイトにも出店する考え。

インターネットを活用すれば、事業の場は限定されない。むしろ豊富な素材がある地域こそeコマース活用に最適ともいえる。

企業データ

企業名
犬小屋製作工房Kハウス
Webサイト
設立
2007(平成19)年7月
資本金
100万円
従業員数
13人(社員4人)
代表者
川村幸雄氏
所在地
高知県土佐郡土佐町田井2097-2
Tel
0887-82-2625
事業内容
犬、猫用のパーツ式木製ペットハウスの製造販売