中小企業応援士に聞く

助け合いの精神で生産者とともに「琉球の自立」を目指す【ゆいまーる沖縄株式会社(沖縄県南風原町)代表取締役社長・鈴木修司氏】

中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。

2022年 6月13日

ゆいまーる沖縄の本店では沖縄の工芸品を数多く取り扱っている
ゆいまーる沖縄の本店では沖縄の工芸品を数多く取り扱っている

1.事業内容をおしえてください

沖縄の焼物「やちむん」
沖縄の焼物「やちむん」

やちむん(焼物)や琉球ガラス、染織など沖縄の工芸品をメイン商材として取り扱い、卸売と小売り事業を展開している。なお、社名にある「ゆいまーる」は、沖縄の言葉で「労働交換」や「相互補助」という意味。畑仕事などお互いに労働で助け合うということで、沖縄では昔から使われる言葉。事業を通じて沖縄にお金を回すことを意識しながらも、貨幣経済とは異なる助け合いの精神も大事にしたいという思いが込められている。

当社は1988年、先代の玉城幹男が「琉球を自立させたい」との思いで創業した。当初は沖縄の食品を主に県外にある沖縄料理店や県人会など沖縄関連の取引先へ卸していた。創業から数年後、県内最大級の総合産業展「沖縄の産業まつり」でブース内に民具を飾ったところ、とても好評で、それがきっかけとなり、工芸品を多く取り扱うようになった。

私は当社が2001年に法人化する少し前にアルバイトとして働き始めたが、2007年に先代が死去したことで代表取締役に就任することになった。事業承継後、とくに力を入れたのが工芸生産者の課題解決事業だった。商品を仕入れて販売するだけでは解決できない課題が工芸業界には多い。そこで、仕入れ先の生産者に対し、市場調査や商品開発、原価計算、価格設定などの経営支援を始めた。行政からの受託事業を活用したものもあれば、当社が自主的に行ったものもある。「琉球の自立」という当社創業の思いを、生産者の支援という一つの形にしたものといえる。

2.強みは何でしょう

ゆいまーる沖縄のブランドの一つ「シマノネ」
ゆいまーる沖縄のブランドの一つ「シマノネ」

創業当時は、沖縄の食品も含めた商材を県外に卸す商社は当社以外にはなく、現在でも、工芸については当社のほかには県内ではほとんどない。

生産者とのつながりも強みといえる。最近では、作り手と買い手が直接やり取りする「D2C」のような機会が増えてきたので、仲介役である卸売業の役割も少しずつ変化してきている。具体的には、工芸品に対して「ブランド」という概念を持ったうえで、売り方や集客の仕方も含め、生産者と深くかかわる形で提案を行っている。実際に、陶器・ガラス工芸品の「serumama(セルママ)」などのブランドを立ち上げている。その結果として生産者の販路獲得・拡大につながってきている。

このように業界全体の課題や問題点まで踏み込み、それらに向き合った事業を展開していくということを当社以外では行っているところは少ない。当社は創業から35年間で、「沖縄により根を張る」「問題点、課題とも向き合う」ことを大事にしており、仕入れ先の生産者を対象とした勉強会やワークショップなどを通じて信頼関係を築き地域の信頼を得ている。この点も強みのひとつである。

3.課題はありますか

沖縄県の産業はまだまだ観光の比率が高く、昨今のコロナ禍で沖縄全体が大きな痛手を被った。「琉球を自立させたい」との思いで創業した当社としても、なんらかの対応を考える必要がある。

当社の事業としては、新規事業の立ち上げ、具体的には、ツーリズム事業を計画している。コロナ禍で遠方からの観光客が減少したこともあるが、地元の人たちにもあらためて足元を見つめ直してほしい、というものだ。そのための人材育成を展開していきたい。また取引先の課題解決に資するよう、当社従業員のポテンシャルを高める取り組みも行っていきたい。このほか、直販の比率を増やして利益率の向上を図りたい、というのも課題として挙げられる。

ゆいまーる沖縄本店の外観
ゆいまーる沖縄本店の外観

4.将来をどう展望しますか

課題としても取り上げたが、ツーリズムを展開し、地元や県外の人に沖縄文化の魅力を知ってもらうためのプログラムを検討していこうと考えている。旅行会社など外部ネットワークを活用していくことや、工芸生産者との連携も考えている。たとえば、工房を周遊してもらい、実はあまり分かっていなかった伝統工芸を知ってもらうとともに、生産者にも新たな収入源を確保することになってもらえればと思う。

ツーリズムといったサービス事業を立ち上げ、当社としても収入の多角化を図り、「卸売事業1/3・小売り事業1/3・サービス事業1/3」との目標に向けて取り組んでいきたい。

5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか

「炎の芸術」と呼ばれる琉球ガラス
「炎の芸術」と呼ばれる琉球ガラス

課題解決に結びつく「つながり」を意識している。収入や後継者などいろいろな課題を抱える染織業界や離島地域の人たちがそれらの解決のために展開する活動に対し、当社のスタッフが一緒になって取り組んでいる。そこでは文化領域との付き合いが多く、「どのように稼ぐか?」といった経済性を取り込みつつも、「どう文化を育んでいくか?」という、経済性から離れたテーマも念頭に置きながら、考え行動している。そして、文化を紡ぐ生産者たちと一緒にその文化を作っていこうと考えている。今のままでは文化自体が残せなくなってしまうかもしれないという危機感を持ち、一緒に文化を紡ぎ後世に残していきたい。

6.応援士としての抱負は

「生産者と一緒に地域の文化を守っていきたい」と語る鈴木氏
「生産者と一緒に地域の文化を守っていきたい」と語る鈴木氏

ブランド構築の際に中小機構の支援制度などを活用し、大いに役立った。こうした各種の支援制度について情報発信を行うとともに、当社、あるいは私個人でできることがあれば、可能な限りお手伝いをしたい。たとえば、地域の生産者や事業者のために当社の販路を提供することができると考えている。

とくに生産者については、「稼げない」ということが後継者不足を招く一つの要因にもなりかねない。そうならないために、生産者の収益性を上げていくお手伝いをしていきたい。収益性を上げる売り方の仕組みをどう作るかなど、生産者と一緒になって考え、地域の文化を守っていこうと考えている。地域に根差した事業展開を行うことで、地域も一緒になって成長していくことにつながると思う。

企業データ

企業名
ゆいまーる沖縄株式会社
Webサイト
設立
1988年(2001年に法人化)
代表者
鈴木修司 氏
所在地
沖縄県島尻郡南風原町字宮平652
Tel
098-882-6990

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