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“創造生産性”発揮に向け、自社の殻を破り、自信をもって表舞台へ【株式会社ローランド・ベルガー日本法人代表取締役社長・長島聡氏 ※現グローバルイノベーションオフィサー】<連載第4回>(全4回)

2020年 4月23日

長島 聡(ローランドベルガー日本法人代表取締役社長 ※現グローバルイノベーションオフィサー)
長島 聡(ローランドベルガー日本法人代表取締役社長 ※現グローバルイノベーションオフィサー)

中小企業の生産性向上をテーマに、世界的コンサルティング企業、ローランドベルガー日本法人代表取締役社長(※現グローバルイノベーションオフィサー)を務める長島聡氏にお話を伺ってきた本連載も最終回を迎えました。「中小ものづくり企業には、ぜひ“創造生産性”を発揮して、成長してほしい」という長島氏に、実現化のポイントや中小企業へのアドバイスを伺いました。

顧客を起点に考え、「ありもの」を使い倒す

効率化やコスト圧縮で、「投入リソース」を減らす生産性向上の方法がある一方、「製品・サービスの価値」を高めることで生産性向上を目指すのが“創造生産性”の考え方です。長島氏はこの「製品・サービスの価値」を高確率かつスピーディに高めていく鍵として、二つのキーワードを挙げました。

「一つ目は、『お客様起点』で価値向上を考えることです。従来の3倍長く、3倍深くお客様と付き合うにはどんな価値が必要かと想像を巡らせましょう。顧客に大きな喜びを与え、より高い欲求を満たせば、価格が高くても納得してもらえるはずです」

そのハードルを自社だけで超えるのが難しい場合は、企業連携も有効な手段だということは、これまでの記事で紹介してきたとおりです。

「二つ目は、『ありものを使い倒す』ことです。あのiPhoneも、初代は液晶画面にタッチセンサーといった『ありもの』が主な構成要素。新しい価値をゼロからつくるよりずっとスピーディーになります」

“創造生産性”を高める七つの行動

さらに長島氏は、“創造生産性”を向上させるために、「今日から挑戦したい七つのこと」を挙げてくれました。その第一は、異質や違いを好むこと。第二は使いやすい得意技をもつこと。第三は対話の場を盛り上げることです。

「異なる分野の人と対話をすれば視野も発想も広がり、突き詰めていた分野を活かしやすくなります。そのためにも、どんどん外に出る機会をつくる。そして、自社の『ありもの』を、分かりやすい表現で積極的にアピールし、話を盛り上げることです。異分野の相手にも興味を持ってもらえるような得意技があれば、具体的な話にも進みやすいでしょう」

第四は「得意技を使い倒す」こと。この内容は、先ほどの「ありものを使い倒す」で述べたとおりです。第五は顧客と何度も対話すること。「話を重ねていると、いざというとき相手から声がかかる」と長島氏は言います。そして第六はこれまでのやり方をいったん忘れることで、第七は感性を信じることです。

「受注を継続するために、何十年も品質・コスト・納期を必死に追求し続けてきた企業は少なくないでしょう。ただ、“創造生産性”を高めるには、いったんそれを脇に置いてみることが大切。自分たちが楽しいと感じることは正しいことだと考え、無理なく可能な範囲でチャレンジしてみましょう」

どんな企業にもある「強み」を伝え続けよう

「日本にはユニークな技術を持つ中小企業が多く、そうした技術を使いながら新たな価値を創造し、大きく成長した企業も多数出ています」と長島氏。しかしそうした企業を特別視するだけで、自社の可能性に気づかない中小企業経営者も多いと言います。

「ほとんどの会社には独自の強みがあります。臆することなく表舞台へ出てその強みを伝え続けていくと、やがて協力したい人たちが集まってきます。ぜひ自信をもって、自社の殻を破り、新たな価値創造に挑んでいただきたい。あなたの企業もきっと“特別”になれるはずです」

連載「“創造生産性”発揮に向け、自社の殻を破り、自信をもって表舞台へ」

長島 聡(ながしま・さとし)
(ローランドベルガー日本法人代表取締役社長 ※現グローバルイノベーションオフィサー)

早稲田大学理工学研究科博士課程修了。工学博士。早稲田大学理工学部助手などを経て、ドイツを拠点とする世界的な戦略コンサルティング企業、ローランド・ベルガーに参画。製造業のグランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装などのプロジェクトを手がける。経済産業省の「自動車新時代戦略会議」委員、中小企業庁の中小企業政策審議会専門委員なども歴任。

◇主な編著書
・『AI現場力「和ノベーション」で圧倒的に強くなる』(日本経済新聞出版社)2017年刊
・『日本型インダストリー4.0』(日本経済新聞出版社)2015年刊

取材日:2020年 1月30日