「これからも、少子高齢化が進む中で、どのようにして機械化を進め、生産性を高めていくかということを考えていかなくてはいけない」。
こう語る西澤社長は、もともと旧日本電信電話(現NTTグループ)の技術系サラリーマンだった。電報電話局長のときに鋳物会社にスカウトされ、そこの営業担当として岡谷熱処理工業を訪れたのが縁となった。創業者の先々代社長に後継者として見染められ、その跡を継いだ奥さんからも重ねて勧誘されて、60歳になった2002年に副社長として入社。翌年に社長に就任した。以来、企業理念の一つにも掲げている「本質を考えよう 前例に頼らず」を信条に、従来の常識にはとらわれない新技術の開発にチャレンジしてきた。
その一つが「平成21年度補正ものづくり中小企業製品開発等支援補助金」を活用し、信州大学工学部、長野県工業技術総合センターと連携して、「産・学・官」で取り組んだ「プレス用金型の熱処理における歪みを極小化する技術」の開発だ。「鋼を熱すれば変形・反り・曲がりなどの歪みが生じる」という人類が鉄器を使い始めた有史以前からの常識に果敢に挑戦したもので、「試行錯誤しながら19の手法を試してみたら、2つの手法に可能性を見出した」(西澤社長)。そこで、23、24年度も「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)」を活用して研究開発を継続。ついに歪みを従来の30分の1以下に抑える世界初の技術開発に成功した。
歪みが少ないと表面を研磨する際の研磨代(しろ)を少なくできるし、穴を開ける際も最小の大きさで済むので、金型を熱処理した後の工程を大幅に短縮できる。西澤社長によると、従来は半日から2日ほど要していた金型の仕上げ加工が数分から2時間程度に短縮できるという。これに伴い、金型の製造コストが8分の1以下に低減できるそうだ。この技術は新聞社や業界団体、自治体などから数々の賞を受賞。国際特許を取得するとともに、「?syori(G処理)」という商標登録で事業化し、顧客の金型メーカー及びその金型を用いたエンドユーザーに喜ばれている。
このほかにも、金型や切削工具などの材料選定から熱処理、表面改質(ショットピーニング・ショット研磨)、表面処理(コーティング)までをオーダーメードで一貫して行うことで、高性能化・長寿命化を図る加工技術「O.Nsyori(ON処理)」を提供するなど、新しいアイデア、技術を次々と生み出している。これらの創意工夫を凝らした経営にたゆまず取り組む姿勢が評価され、昨年末には「地域未来投資促進法」に基づき、地域経済を牽引する企業として国(経済産業省)から「地域未来牽引企業」に選定された。