支援機関によるカーボンニュートラル支援事例
省エネお助け隊による省エネ診断を実施 脱炭素化に向けて大きな一歩を踏み出した:札幌商工会議所(北海道札幌市)
2024年 4月 25日
札幌商工会議所
機関分類:商工会議所
所在地:北海道札幌市中央区北1条西2丁目
電話:011-231-1373
Webサイト:https://www.sapporo-cci.or.jp/
令和5年度から、省エネに関する個社支援に注力するため「省エネ・再エネ導入窓口」を開設。省エネ診断に関する専門家を揃え、事業者のニーズに合った提案を可能にしている。経営改善支援業務と連携することで、資金調達や補助金の情報提供、申請支援も可能。会員企業2万社のネットワークを活かし、相談内容に応じて省エネの取り組みに必要な設備・施工業者や融資先を紹介する支援も行っている。
支援事例
企業データ
- 企業名
- 株式会社じゃがいもはうす
- Webサイト
- 設立
- 1988年(昭和63年)8月
- 従業員数
- 28名
- 所在地
- 北海道札幌市南区南39条西10丁目1-3
- 業種
- 食品製造業
北海道産のジャガイモを熟成させてから製造する全国でも希少な未冷凍のチルドコロッケを販売。全国百貨店で開催される北海道物産展のほか、通販サイト(https://jagaimohouse.co.jp)でも購入可能。
[経緯]
燃料費の高騰が経営を直撃。その改善方法について相談
ジャガイモ(北海黄金)をはじめ、北海道で採れた食材を使ったチルドコロッケの製造・販売をしている株式会社じゃがいもはうす。同社代表取締役 上野広幸氏は、かつて飲食店で料理人をしていたため食に対するこだわりが強く、その姿勢が高く評価され、今や全国の大手百貨店から北海道物産展の出店依頼が集まるようになった。
「弊社はジャガイモを収穫した後、冷蔵庫で一年間熟成させ、甘みが増したものを使っています。一般的な冷凍コロッケとは異なり、製造後は冷凍せずにチルド状態のまま即日出荷します。その製造法を徹底することで、味が美味しいと評価してもらえるのは大変喜ばしいのですが、やはりどうしても手間がかかってしまい、利益が少なくなりがちです。また、近年、ガス代が高騰しており、今のままでは従業員の給与が上げられないので悩んでいました」(上野氏)
上野氏は、日ごろから節電や節水の取り組みをしていたが、自助努力ではやはり限界があるため、何か改善できる方法はないかと考えた。そこで、これまで経営に関するアドバイスや、補助金の申請などで支援してもらっていた札幌商工会議所に相談した。
[現状掌握]
省エネ診断を提案し、エネルギーの無駄遣いを徹底的に究明
本件は、札幌商工会議所 産業部 地域振興・ものづくり課 佐藤智史氏が担当した。佐藤氏は、じゃがいもはうすが新型コロナウイルス感染症の影響で経営難に陥っていた際、事業再構築補助金を提案し、再生に向けた支援をしたという経緯があった。そこからの付き合いである上野氏は、このところ電気代やガス代などの燃料費が高騰しており、光熱費を少しでも削減できる方法はないかという相談を持ちかけた。
「連絡をいただいた時期が、ちょうど当商工会議所が省エネお助け隊による省エネ診断・省エネ支援を実施していたタイミングでしたので、私から省エネ診断を提案させていただきました。じゃがいもはうす様の製造工程を専門家の目線で見直すことで、何らかの新しい発見や気付きがあるのではないかと考えました」(佐藤氏)
上野氏が省エネ診断を希望したため、佐藤氏は札幌商工会議所に登録している専門家に省エネ診断を依頼。提供可能な資料等をじゃがいもはうすにあらかじめ用意してもらい、事前ヒアリングを経て、後日操業中の工場の視察に向かった。
[解決策]
専門家が改善項目を提案。従業員にも省エネ意識が浸透
省エネ診断では、操業中の工場を専門家が視察し、機器の稼働状況を調査。後日、報告書がまとまった。
「自分たちで実施する省エネの取り組みとは違い、専門家の方からの提案は、今まで気付かなかった項目ばかりでしたので、やはりプロに見てもらって良かったと思います。燃料費を削減することを目的に、当初は省エネに関する知識もなく省エネ診断を実施しましたが、札幌商工会議所や専門家の方から話を聞いていくうちに、こうした省エネの取り組みが、その先のカーボンニュートラル社会の実現に繋がっているということを知りました。また、今回の省エネ診断をきっかけに、従業員たちの省エネに関する意識も、少しずつ高まっているように感じます。これまで缶だった容器を紙のパッケージに変更してゴミを少なくする工夫や、水道水の使用量を抑える器具を新たに設置するなど、現場を知り尽くしている従業員だからこそできる取り組みが進んでいます。また、最近は取引先である百貨店のカーボンニュートラルの取り組みも徐々に進んでいるので、弊社も少しずつ取り組んでいこうと思っています」(上野氏)
札幌商工会議所が提案した省エネ診断がきっかけとなり、従業員たちの省エネ意識が向上。作業上の改善点を話し合う際、省エネに関する問題提起も出ているという。
[伴走支援・今後の取り組み]
脱炭素経営に向けた投資改善も引き続き支援していく
従業員たちの省エネに関する意識醸成に伴い、取り組みが徐々に進むようになった。しかし、工場内には創業当時のまま更新されていない機器がいくつかあり、それらが稼働している間は、燃料費の根本的な削減には繋がらない。今後は、脱炭素経営を見据えた設備投資が必要になる。
「上野社長から要望があった照明のLED化については、更新するとどの程度のコスト削減効果があるのかを算出して提案しました。次の補助金のタイミングに合わせて、設備を更新する予定にしています。また、現在ガス式の真空冷却器から電気式に切り替える件に関しては、今後のスケジュールを相談しながら、必要に応じて金融機関からの資金調達や、活用できる補助金を提案する準備を進めています。省エネの目線だけでなく、経営支援という商工会議所が日ごろ行っている業務と併せながら、じゃがいもはうす様への個社支援を引き続き継続していきたいと思っています」(佐藤氏)
担当支援機関からのひと言
札幌商工会議所 産業部 地域振興・ものづくり課
佐藤智史氏
省エネ診断の認知度はまだ低く、利用されている事業者はわずかです。しかし、専門家の目線で診断するとどういったメリットがあるのかをお伝えすると、興味を持たれる事業者様は多くいらっしゃいます。省エネの取り組みは、カーボンニュートラルにも繋がるため、経営的な部分で非常にメリットがあります。やはり5年から10年先を見据えると、カーボンニュートラルと経営とは、切っても切り離せない関係になるでしょう。当商工会議所としては、日ごろ行っている経営支援や相談業務の延長に、カーボンニュートラルの個社支援を進めていきたいと考えています。