BreakThrough 企業インタビュー

日本人への適用率100%を実現 頸動脈から脳梗塞の要因を検出する『FURUHATA』【橋本電子工業株式会社】

2018年 3月 20日

超音波頸動脈血流モニターHDK-BM001 FURUHATA
日本人でも100%栓子の測定を可能にした『超音波頸動脈血流モニターHDK-BM001 FURUHATA』

summary

日本人の身体的特徴が考慮された測定方法
開発してわかった多用な用途
優位性を説くのは地道な営業活動

測定部位を変えることで素早く、容易に脳梗塞の予兆を発見

厚生労働省による「人口動態統計の概要」では、平成27年度に脳梗塞を原因とする死亡者数が年間6万4523人に達した。これは死因順位として4位となる。

脳梗塞の原因として血栓などの栓子が挙げられることが多く、早期発見の手段としてこれまで栓子検出装置「経頭蓋超音波ドプラ」を用いた頭部測定手法が用いられてきた。

欧米でこそ主流となる方法だが、実は日本人を含むアジア系人種は欧米人と比較して頭蓋骨が厚いため頭部の血流測定が困難であること、測定には熟練の技能を必要とすること、測定に30分以上を要することなどの理由でこれらの問題を解決できる機器の開発は急務の課題であった。

橋本電子工業株式会社は、電子応用制御機器・装置やソフトウェア・システムなどの開発に従事し、これらのノウハウを融合した技術の応用を得意としている。同社は、経済産業省が実施する医療従事者の課題解決を目的とした医療機器開発事業である「課題解決型医療機器等開発事業」において、頸部測定することで日本人においても栓子を100%検出できる『超音波頸動脈血流モニターHDK-BM001 FURUFATA』を東京慈恵会医科大学との共同研究で開発した。

検診利用以外の用途発見

「FURUHATA」はもともと、脳梗塞や心筋梗塞の要因となる栓子の早期発見、予防を目的に開発された医療機器だったが、開発後に新たな用途に利用できることもわかった。

それが心臓・血管手術中の栓子モニタリングだ。術後の脳梗塞発症率は従来2.2%から5.2%ほどの割合で発症していた。日本では現状年間約6万人が心臓・血管手術を行っていることから約1000人から3000人ほどが術後に脳梗塞のリスクを抱えることになる。

「FURUHATA」で術中モニタリングすることで、わずかでも危険な可能性の芽を潰すことができる。東京・榊原記念病院ではすでに同用途を目的に「FURUHATA」を採用している。

また、もうひとつの用途が脳梗塞発症後の経過観察用途だ。投薬治療を行う患者において、従来より容易にその効果のほどを把握することが可能となる。

術中モニタリングの様子

信頼性を高めるためにアクティブに活動

「FURUHATA」を開発するにあたり、東京慈恵会医科大学の主任教授がチームリーダーだったが、チーム発足から半年を過ぎた頃に志半ばで逝去したことは、開発チームにおいて大きな痛手となった。同社と同大学はチームを組んでからの付き合いで日が浅かったことから、事業全体の方向性や完成後の販売先といったビジョンの共有がほとんどなされていなかったからだ。

そんな状況下であっても同社代表取締役社長である橋本正敏氏は医療現場のニーズを形にするためにその意志を引き継ぎ、3年の歳月を経て「FURUHATA」を完成させたのだ。

日本人患者への適用率100%の優位性を説くべく、医師、関係各所への営業活動を続ける傍ら、海外展開の足がかりとしてイタリアのラクイラ大学に研究用途として提供している。もちろん、海外展開では規格の問題をすべてクリアにしていく必要があるが、海外においてもその頸部測定の優位性は高い評価を得ており、すでに計測の2チャンネル化や他部位での計測対応といった要望も多くあがっている。

代表取締役社長 橋本正敏氏

脳梗塞の要因を検出するために、日本人に不向きと言われていた頭部測定という方法ではなく、頸部で100%測定可能にした「FURUHATA」。その測定の容易さや手軽さから、国内の病院はもとより、従来の測定方法に不満を感じていた海外の現場においても、その活躍が期待される。

企業データ

企業名
橋本電子工業株式会社

制御計測機器および医療機器の設計(メカ、ハード、ソフト)、試作、評価、量産のプロセスを一貫して行っております。少ロットから承っておりますので、ものづくりでお困りの際はお気軽にご相談ください。