コロナ禍でがんばる中小企業

加工品販売でイチゴ狩り客の落ち込みをカバー【株式会社フルーツガーデンやまがた】(徳島県鳴門市)

2021年12月 6日

自社ハウス内で山形社長
自社ハウス内で山形社長

1.コロナでどのような影響を受けましたか

うずしおベリー
うずしおベリー

フルーツガーデンやまがたは徳島県鳴門市で山形文吾(44歳)が2012年に設立した観光農園だ。主な栽培品目は10年かがりで栽培に成功し2015年12月に商標登録した「うずしおベリー」という独自ブランドのイチゴで、有害肥料を一切使わず、天然海藻エキス、鳴門の海で獲れた牡蠣殻パウダー、有機酸カルシウム、カツオエキスをブレンドした肥料で栽培する。洗わずに食べられるうえ、他のイチゴ品種より大粒で、甘みと酸味、旨味のバランスがいい。

イチゴを栽培するビニールハウスの販売や、イチゴ農園運営のノウハウを提供するコンサルタント業にも携わっている。鳴門を「イチゴの町」にと、戸田建設が提案し20年1月にオープンした「TODA Berry Farm」の設立にもかかわった。児童数減少で2019年に閉校した旧鳴門市北灘西小学校の校舎などを活用しイチゴ狩りを楽しめる施設で、校庭にはビニールハウス7棟で約8000株の「うずしおベリー」を栽培、校舎にはハウスで摘み取ったイチゴをドリンクやスイーツにしてもらえるミニカフェや鳴門の歴史や文化を見られる郷土資料館を開設し、好評だ。

主力の農園でのイチゴ狩りは60分間で大人2000円、子供1500円。1シーズンに4回も5回も来園されるリピーター客も多く、新型コロナウイルス感染症が顕在化する前の2018年には年間約1万2000人の来園客でにぎわっていた。だが、感染者増による外出自粛などで2019年の来園客は約4000人に減少。売り上げが大きく減ってしまった。

2.どのような対策を講じましたか

フルーツガーデンやまがたの看板
フルーツガーデンやまがたの看板

20年度には緊急事態宣言が発出され、出歩く市民もほとんどいなくなったため、春先から農園で収穫したイチゴのデリバリー販売を実施した。専用サイトを開設して予約を取り、社内のスタッフが週に2~3回、車で徳島市内のお客さんに直接お届けした。3パック1000円で、日に160パック出る日もあったが、イチゴの収穫から選別、パック包装などに手間や時間がかかり、営業利益は赤字だった。

そこで21年度からはイチゴの加工品の製造・販売に着手した。材料はイチゴ狩り客が減ったために冷凍保存した余剰イチゴで、徳島県の産業振興機構の支援を得て、「うずしおベリーの生キャラメル(税別1600円)」「いちごバスクチーズケーキ(同1750円)」「うずしおベリーカタラーナ(氷菓・同750円)」「うずしおミルクプリン(同410円)」「うずしおベリージャム(大瓶・同1000円)」の5品種を開発、21年5月から販売を開始した。

宣伝はSNS程度だったが、鳴門市のふるさと納税の返礼品に選ばれ、阿波銀行のECサイト「Lacycle(ラクシル)モール」に掲載されるなど順調に販売量を伸ばしている。一番人気は県内「道の駅」限定の「みるくプリン」で、6月は600個・約25万円、7月も430個・約17万円売れた。

イチゴ農園の来客減で2019年度に約4300万円だった全社売上は、加工品販売やビニールハウス販売などのカバーで20年度は7800万円を確保できた。

3.今後はどのように展開していく予定ですか

人気のイチゴ加工品
人気のイチゴ加工品

加工品販売は21年11月現在、「ジェラート」「アイスクリーム」「濃厚ミルクプリン」が加わり、8品目に拡大。東京ビッグサイト(東京都江東区)など全国各地の食品展示会に出展するなど宣伝方法を拡充してPRに努めている。さらに自社ホームページをリニューアルして、商品を見やすく展示し、オンラインでの購入者も増やしていきたい。

コロナ緊急事態宣言も解除され、先行きが明るくなってきた。イチゴの収穫期は12月から6月。かがまずに収穫できる位置でイチゴを栽培しているし、ハウス内に車いす専用レーンも設けているから、天候に関係なく、車いすやベビーカーでもイチゴ狩りを楽しめる。お客さんが安心して来ていただけるよう消毒や検温など感染防止対策も整えた。本業のイチゴ農園の売り上げ回復に期待をかけている。

企業データ

企業名
株式会社フルーツガーデンやまがた
Webサイト
設立
2012年6月
代表者
山形 文吾 氏
所在地
徳島県鳴門市大津町大代645-1
Tel
088-685-4721

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