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企業の“創造生産性”は、自社を知り、人と会うことで高められる【株式会社ローランド・ベルガー日本法人代表取締役社長・長島聡氏】<連載第2回>(全4回)
2020年 4月 9日
「生産性」を表す式は、分子が「産出価値」で、分母が「投入リソース」。その分子を増やして“創造生産性”を高めることが中小企業のブレークスルーの鍵になると、世界的コンサルティング企業であるローランド・ベルガー日本法人代表取締役社長の長島聡氏は語ります。連載第2回は、ものづくり中小企業がどのようなステップで生産性を高めていくべきかを紹介します。
IoTなどを使った効率化で、“創造生産性”向上のための時間をつくる
“創造生産性”を高めて、自社が提供する製品やサービスの価値を上げれば、企業の収益力は向上します。しかし、何か取り組みを始めようとしてもその時間もリソースもない中小企業が多いことは前回の記事でも触れました。
「その場合、“創造生産性”の向上とは逆のアプローチになりますが、まずは算出式の分母にあたる『投入リソース』を減らす“効率化”から始めてもいいと思います。例えば工場のIoT化に少しずつ取り組むなどして作業の工数を減らし、時間を捻出する。その時間を“創造生産性”を向上させるための取り組みに充てることがスタートラインになります」
その際に試してほしいこととして長島氏が挙げたのが「棚卸しで自社の強みを考えること」と「自分とは異質な人に会いに行くこと」の2点でした。
自社の強みを知り、伝えられるようにする
「自社の強みを考えるには、まず、これまでにつくったものを棚卸しすることから始めます。製品がどこに組み込まれて、どんな役に立ったのかを、できるだけたくさん出してほしい。気をつけたいのは、『お客様に貢献できたもの』という視点で考えてみることです」
「生産性」の分子に来る「産出価値」というのは、「顧客にどれだけ認めてもらえたか」です。業界内で誇れる高精度を達成したといった実績はもちろん価値を生み出す武器になりますが、そうしたもの自体は顧客の心をあまり動かしません。創造生産性を向上させているほとんどの企業は「要望にぴったり合う提案をして喜ばれた」「製品が美しく仕上がって感謝された」など人の気持ちを動かすような価値を、自らの持つ技術を上手く活用して生み出していると長島氏は力を込めます。
「棚卸しで自社の強みが分かったら、人に分かりやすく伝えられるような話にまとめる。そして、それをネタに人に会いに行くことです」
中小企業が持つ独自の強みを掛け合わせて新たな価値を生む
自分とは異質な人に会いに行くことが、“創造生産性”の向上に与えるメリットは二つ。一つは、新しい刺激に触れて、自分の視野が広がること。もう一つは、出会いを企業連携につなげることでスピーディーに新しい価値を生み出せることです。
「日本の中小企業は、深いこだわりに支えられた独自の価値を持っているところが多いですね。板金でも鋳造でもインジェクションでも、各社でこだわりの方向性が違っていて、多様な要素が揃っている。この独自性とこだわりの深さは、世界と比べても日本企業が一番であるように感じます。上手に組み合わせれば、自社だけで新価値の創出に取り組むより、はるかに早く、より高い価値を生み出すことができるでしょう」
連携をする上では、日本の「すり合わせる力」の高さもプラスに働くと長島氏は続けます。
「例えば海外で連携というと、まず利益配分が先に来るのではないでしょうか。それも大切ですが、日本では同じ志をもって『ゴールを達成しよう』という発想が強い。これは連携をスムーズに進める上で大きな力だと思います」
連載「“創造生産性”発揮に向け、自社の殻を破り、自信をもって表舞台へ」
- 第一回 “創造生産性”の向上で、中小企業も付加価値アップを目指せ
- 第二回 企業の“創造生産性”は、自社を知り、人と会うことで高められる
- 第三回 自社の「強み」を見直すこと、掛け合わせることで価値を創出
- 第四回 “創造生産性”発揮に向け、自社の殻を破り、自信をもって表舞台へ
長島 聡(ながしま・さとし)
(ローランド・ベルガー 日本法人代表取締役社長)
早稲田大学理工学研究科博士課程修了。工学博士。早稲田大学理工学部助手などを経て、ドイツを拠点とする世界的な戦略コンサルティング企業、ローランド・ベルガーに参画。製造業のグランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装などのプロジェクトを手がける。経済産業省の「自動車新時代戦略会議」委員、中小企業庁の中小企業政策審議会専門委員なども歴任。
◇主な編著書
・『AI現場力「和ノベーション」で圧倒的に強くなる』(日本経済新聞出版社)2017年刊
・『日本型インダストリー4.0』(日本経済新聞出版社)2015年刊
取材日:2020年 1月30日
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