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“創造生産性”の向上で、中小企業も付加価値アップを目指せ【株式会社ローランド・ベルガー日本法人代表取締役社長・長島聡氏】<連載第1回>(全4回)
2020年 4月 2日
生産性向上によって製品・サービスの付加価値を高められれば、収益は大きく改善する。中小企業でもそれは可能——。世界的コンサルティング企業、ローランド・ベルガーの日本法人の社長を務める長島聡氏はそのように語ります。“創造生産性”という概念の創出により“生産性向上”の議論に新しい視点を投げかけ、国内中小企業との協働プロジェクトにも力を注ぐ長島氏にお話を伺い、中小企業が生産性を高めるためのアドバイスなどを4回にわたって紹介します。
生産性向上には二つの方向性がある
あらゆる企業にとっての大きな課題である「生産性」は、分数で表すことができます。分子は「産出した価値」で、つまりは創り出したサービスや製品の価値。分母は「投入したリソース」で、例えばものづくり企業なら人件費、原料費、設備費などが当てはまります。この「生産性」を上げるには、二つの方向性があると長島氏は言います。
「今、“生産性向上”と聞くと、ITの活用や仕事の標準化により『同じ仕事をどれだけ短時間で効率的にこなすか』という方向性で考える人が多いのではないでしょうか。これは生産性の算出式の分母を減らす方法です。しかし、生み出す製品やサービスの価値を向上させる、つまり分子を上げるという方法もあります」
ここで長島氏が例に挙げたのが、自動車のフルモデルチェンジ。新たな機能を加えたり、デザインを一新させるには一定のリソース投入が必要ですが、それにより顧客がより高い価格でも購入してくれるようになれば、それが収益アップにつながっていくわけです。
“創造生産性”の発揮で売り上げを増やす
「分子を増やす生産性向上」の方法は他にもあります。
「例えば超高級ホテルのサービスなどもそうだと思いますが、統一理念に基づいたサービス提供やスタッフの教育などによって、一人の人が同じ時間でほかより格段にクオリティが高いサービスを提供できれば、顧客はそこに価値を見いだしてくれるでしょう」
長島氏はさらに別の例として、マスカスタマイズなどにより個人のニーズにあった製品を提供することなども挙げてくれました。
「実のところ、分母を減らす生産性向上の方が取り組みやすいのは確かです。ただ、分子を増やす生産性向上で、お客様に刺激や発見をもたらすイノベーティブな価値を創造できれば、 投入リソースを大きく変えないまま2倍の売り上げを上げることも可能。それがローランド・ベルガーでも提唱している“創造生産性”の向上です」
中小企業でも“創造生産性”発揮の方法はある
生産性の分母である投入リソースを減らすには限度がありますが、分子の産出価値を上げるのは限りがなく、それが売上増に直結します。とはいうものの、「受注を受けた図面通りのものづくりに徹し、品質・コスト・納期の維持に常日頃追われていて、新たな価値創造に費やす時間がない」という中小企業も多いでしょう。
「ただ、どこかで状況を変えなければ、ずっとそのまま続けていくしかありません。少しでも創造生産性について考える時間をつくり、突破口を開いてほしいのです。実際、私がお付き合いしている中小企業もそうしてブレイクスルーを果たした例は珍しくありません」
では、中小ものづくり企業は、どのような形で“創造生産性”を向上させていけばよいのでしょうか。第2回では、その方法について順を追って紹介していきます。
連載「“創造生産性”発揮に向け、自社の殻を破り、自信をもって表舞台へ」
- 第一回 “創造生産性”の向上で、中小企業も付加価値アップを目指せ
- 第二回 企業の“創造生産性”は、自社を知り、人と会うことで高められる
- 第三回 自社の「強み」を見直すこと、掛け合わせることで価値を創出
- 第四回 “創造生産性”発揮に向け、自社の殻を破り、自信をもって表舞台へ
長島 聡(ながしま・さとし)
(ローランド・ベルガー 日本法人代表取締役社長)
早稲田大学理工学研究科博士課程修了。工学博士。早稲田大学理工学部助手などを経て、ドイツを拠点とする世界的な戦略コンサルティング企業、ローランド・ベルガーに参画。製造業のグランドストラテジー、事業ロードマップ、チェンジマネジメント、現場のデジタル武装などのプロジェクトを手がける。経済産業省の「自動車新時代戦略会議」委員、中小企業庁の中小企業政策審議会専門委員なども歴任。
◇主な編著書
・『AI現場力「和ノベーション」で圧倒的に強くなる』(日本経済新聞出版社)2017年刊
・『日本型インダストリー4.0』(日本経済新聞出版社)2015年刊
取材日:2020年 1月30日
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