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小型化・軽量化・高性能化・低価格化を実現した非常用浄水器【株式会社ミヤサカ工業】
2020年 3月 10日
製品名=非常用浄水器「コッくん飲めるゾウミニ」
非常時に消費期限切れのペットボトルや風呂の残り湯を飲料用に浄水できる
自然災害への備えのなかでも最重要と言えるのが、人間が生きる上で最低限欠かすことのできない飲料水の確保だろう。株式会社ミヤサカ工業の「コッくん飲めるゾウミニ」は、消費期限切れのペットボトルの水や雨水、プールや貯水タンクの水、風呂の残り湯などを非常時に飲料用に浄水できる非常用浄水器だ。
大型で使用場所に制約のある従来品とは異なり、容量は約18Lと持ち運びに便利な大きさ。電源のない場所でも手動ポンプを数回押し込み加圧するだけで浄水できるなど高い操作性を誇りながら、価格は従来品に比べ5分の1〜20分の1におさえたという。肝心の安全性は、独自開発のフィルターユニットを通せば、ゴミや臭い、各種病原菌、カビ、原生動物に加え、家庭用品品質表示法で除去対象物質に指定された13項目の除去も可能。厚生労働省登録検査機関による検査で消費期限が12年切れたペットボトルの水を飲料用として活用できることも確認されているため、例えば大量に水を備蓄している自治体などが同製品を導入すれば、大幅なコストカットや廃プラスチックの削減にも期待ができる。
3層構造のフィルターがゴミや臭い、細菌などをキャッチ
同製品は、軽量かつ丈夫で持ち運びやすいように設計されたポリタンクに、同社独自開発のフィルターユニットが装着された給水コック、手動ポンプで構成。フィルターユニットは、MF中空糸膜フィルター、粒状活性炭フィルター、不織紙・スポンジ・カーボンからなるプレフィルターの3層構造で、高度な浄水機能を実現している。またプレフィルターは取り外して掃除することや、不織紙の交換も可能だ。これらの従来にない機能が高く評価され、2019年の“超”モノづくり部品大賞で、ものづくり生命文明機構理事長賞を受賞している。
発売から1年半での出荷数は1500台超。導入元は、行政組織や学校、自治会、企業、マンション、個人など多岐にわたっており、同製品を導入した大学からは「手頃な値段なのに高性能。備蓄水を再利用できる点も大きい」といった反響が寄せられている。
世界中の人の生命を支える浄水装置へ
同製品は、平成26年9月の鬼怒川の氾濫に際し、災害支援を行っていた同社が給水車まで来られない多くの人を目の当たりにしたことが開発のきっかけとなった。安全性の確認に必要なレジオネラ菌などの細菌の入手に手を焼きながらも、パートナー企業である株式会社アセラの協力を得るなどしてなんとか製品化。同製品とあわせ、避難所等の規模や用途に応じて3タイプを用意し、「コックン飲めるゾウ」シリーズとして展開している。
飲料水確保のための浄水装置の部品として、発展途上国にもサンプル出荷を行っているという同製品。同社の浄水機能が今後日本および世界の舞台でどんな役割を果たしていくのか──。注目する価値は高いだろう。
取材日:2019年12月12日
企業データ
- 企業名
- 株式会社ミヤサカ工業
1985年に創業した精密部品加工メーカー。センターレス研削加工を事業の柱としつつ、極細線直線加工、平面研削のほか、ワンタッチ給油栓「コッくん」、非常用浄水器「コックン飲めるゾウ」シリーズなどの自社開発製品の製造販売などを行う。「コッくん飲めるゾウミニ」は、2019年の“超”モノづくり部品大賞で、ものづくり生命文明機構理事長賞、2018年防災製品大賞銀賞を受賞。