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"100年企業"に向け卓越した技術集団を目指す「株式会社エスイージー」

2023年 6月 5日

エスイージーの濱田順久社長は中小企業応援士でもある
エスイージーの濱田順久社長は中小企業応援士でもある

高知空港を擁し、「土佐の玄関交流都市」とも呼ばれる高知県南国市。空港周辺に広がる香長(かちょう)平野に4つの工場を構えるのが株式会社エスイージーだ。温暖な気候が特徴で、同じ水田で1年に2回、稲作を行う二期作が盛んなこの地に農機具部品メーカーとして設立。農機具を含めた産業機械部品の専業メーカーとして今年で60周年を迎える。「スペシャル・エンジニアリング・グループ」の頭文字(SEG)から付けた社名のとおり、金属のあらゆる加工・組立に卓越した技術集団を目指している。

年間400万個の部品を生産、溶接治具内製化で表彰

一貫生産のうち素材加工部門を担う西工場
一貫生産のうち素材加工部門を担う西工場

同社は1963年、協和農機(現ヤンマーアグリ)の系列工場として設立され、プレス・溶接加工を主体としていた陵和工業がルーツ。その後、ヤンマーの関係会社同士による合併を重ね、2008年に現社名となった。

同社の強みは一貫生産。得意分野が異なる4社の部品加工メーカーが合併したことから、精密板金や製缶加工、溶接、塗装、機械加工、焼き入れ、組立などの多種多様な加工を行うことができ、「通常は何社かに分けて発注しなければならない部品でも、当社ならば1回の発注で済む」(濱田順久社長)という。同社は現在、4工場合わせて大小759台もの設備を有し、年間3万アイテム、400万個の部品を出荷。「これだけの生産規模を持つのは、県内はもちろん、四国全体でも他に類を見ないのではないか。一品モノでも対応でき、少量から大量生産まで、発注元が満足いく形で生産できる」と濱田氏は胸を張る。

溶接する製品を固定する溶接治具も内製化している。かつては外注していたが、溶接作業を続けているうちに治具についてのノウハウが蓄積されていき、25年ほど前から自社で設計・製作に着手。その後も治具の品質を高め、2011年には職域における技術の改善向上に貢献したとして「文部科学大臣表彰 創意工夫功労者賞」を受けた。

生産性向上の知恵を絞る「ステップアップ会議」

2台が連結し生産性を高める溶接ロボット
2台が連結し生産性を高める溶接ロボット

創意工夫は、大きな課題である生産性向上でも行われている。社員がさまざまな知恵を絞る「ステップアップ会議」だ。慢性的な人手不足に悩んでいる同社にとって、生産工程でのムダをなくし、生産性向上を目指すことは永遠の課題だ。そこで同社は「ステップアップ会議」を2005年にスタートさせた。月1回の開催で、南国工場、東工場、南工場、西工場の部署ごとに生産性向上につながる改善テーマを発表。幹部らが各工場を回りながら、現場での実行状況や成果を確認している。工場間や部署間で切磋琢磨する格好の会議は今年3月には200回の節目を迎えた。

経費節減など改善効果は大きく、そのうえで特に役立ったのが、濱田氏が提案した中小機構のハンズオン支援だった。取引関係がある銀行の出身だった濱田氏はさらなる改善が必要だと感じ、銀行時代に出向していた香川県内のメーカー経営者に相談。そこでハンズオン支援を紹介されたという。

支援は、中小機構から派遣された専門家のアドバイスを受けながら2期に分けて行われ、1期目(2018年10月~19年9月)は製造現場での改善を中心とし、2期目(2020年5月~21年3月)では原価管理の仕組みづくりを進め、製造原価の低減を図った。こうした支援をもとにステップアップ会議も進化を遂げ、その結果、年間4000万円相当のコストが削減されたという。

「ものづくりの基本をあらためて体得することができ、ムダを省くことで会社の利益に結び付けることができた」と濱田氏は振り返る。濱田氏は昨年5月、中小機構から中小企業応援士を委嘱されており、「地域の中小企業を応援する立場から、今度は私が中小機構の支援策を紹介していきたい」と話す。

空港近接地に新工場、2025年4月に操業開始

自動で材料供給から加工完了までをこなす切削ロボット
自動で材料供給から加工完了までをこなす切削ロボット

生産性向上とともに、重要な課題となっているのが働き方改革だ。農業機械関連は季節変動が大きく、とくに収穫期前の年度上半期(4~9月)はコンバインなどの生産が集中し、多忙を極める。「この時期にストレスや疲労がたまり、休職せざるを得ない社員も少なからず出ている」(濱田氏)という。

こうした課題解決につながると期待されているのが、空港近接地に建設中の「日章工場」だ。総工費55億円、敷地面積2万8000平方メートルで、2025年4月の操業開始を予定している。新工場は、老朽化した現在の東工場を移転・増設する形で生産体制を刷新し、同社のモノづくり体制そのものを新たに構築する。南国工場にも近く、稼働すれば工場間の移動は大幅に減少する見込みだ。デジタル技術を活用し、工程の見える化を実現するスマート工場へと生まれ変わり、生産性のさらなる向上と同時に、働き方改革に大きく寄与しうるという。

女性の管理職登用などジェンダー平等、高知県のSDGs推進企業に

浸炭炉焼入れから出てくる硬度を要する部品
浸炭炉焼入れから出てくる硬度を要する部品

さらにSDGsへの取り組みも積極的に進めており、今年2月には「こうちSDGs推進企業」として県に登録された。SDGsを担当する総合企画部の山本周佑課長は「ゴールのひとつ、ジェンダー平等には特に力を入れている」と話す。昨年より新しく導入した「能力に基づく評価制」を背景に、実力を備えた女性の管理職登用を推進するほか、目まぐるしく変化する昨今の法制度にも柔軟に対応し、各種休暇を取りやすくすることで仕事と私生活の両立をサポートするなど、男性・女性を問わない従業員の活躍に向けた改革を進めている。女性の割合は現在、社員全体の12%程度だが、「ものづくりの現場で活躍する女性たちをクローズアップすることで、会社のイメージアップや若手人材の確保につなげていきたい」(山本氏)という。

新工場の創業、そして一連の取り組みを進め、同社は"100年企業"を目指す。「社名のごとく社員ひとりひとりが技量を高めていき、エスイージーに頼めば間違いない、と思ってもらえるような企業であり続けたい」。濱田氏は力強く語った。

企業データ

企業名
株式会社エスイージー
Webサイト
設立
1963年12月
資本金
1070万円
従業員数
330人
代表者
濱田順久 氏
所在地
高知県南国市大埇甲1498
Tel
088-865-8130
事業内容
農業機械用部品・建設機械用部品・ボイラー部品など産業用機械部品の製造