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現場を知り、使う側の視点を大切にし、そして技術を理解する【千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo」所長・古田貴之氏】<連載第2回>(全4回)
2020年 8月 6日
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo」所長の古田貴之氏に、中小企業がロボットといかに関わるべきかを伺う本連載。第2回は自社の生産性を向上させるロボット活用のポイントと、ロボット開発事業のヒントについて語っていただきました。
「まずは現場を知る」ことから
ロボットを活用して現場の省人・省力化や生産性向上を狙う。あるいは自社製品にロボット技術を取り入れて価値を高めたり、ロボット事業に参入する——。ものづくり企業のロボットとの関わり方としては、大きくこの二つが思い浮かびます。その両方に共通するポイントとして、古田氏が挙げたのが「まずは現場を知る」ことでした。
「ロボットはあくまで人の仕事や生活を助けるためのツールです。まずは現場を見て、現場の具体的な問題を抽出し、どんなロボット技術を使えばその問題が解決できるかという順番で考えるべきでしょう」
例えば自社工場で高齢化が進んでいるなら、細かい検品作業の負担を軽減するロボットカメラを導入したり、作業ロボットで重労働を自動化するといったことが考えられます。古田氏自身、このアプローチにより、建設会社の鉄筋結束作業へのロボット導入、印刷機メーカーにおける製品チェック時の紙を取り除く作業の自動化、ロボットを活用した食品メーカーでの検品支援など、さまざまな企業の課題解決に協力してきました。
「私の教え子が設立した『株式会社ワークロボティクス』など、ロボット導入をサポートするベンチャーも多いので、そうした専門家の力を借りるのもいいですね」
ロボットの開発でも「使う側の視点」が大切
一方、企業が自社製品にロボット技術を取り入れて価値を向上させたり、ロボット事業に参入する場合はどうでしょうか。古田氏が自身のロボット開発で重視しているのは、“現場の人が使いたくなるもの”という点です。
「福島第一原子力発電所で使われた災害用探査ロボットの開発の際も、現場の要望を何回も聞いて、一緒にユーザーインターフェースを設計し、それをこちらの技術で形にする作業を重ねました。現場の方々と共に新しい“災害用探査ロボットのあり方”を創造するような意識でしたね」
特に先端機器の開発では、つい忘れがちな“使う側の視点”を大切にするのが古田氏流。「パナソニック株式会社」と共同で進めた新型ロボット掃除機の開発では、“家電マニア”のロボット専門家として、自宅で何種類もの掃除機を使い比べていた経験が大いに役立ったといいます。
経営者もある程度はロボット技術を理解すべき
ただ、現場のことが分かっても、ロボットについての知識が全くなければ、「人間型の万能ロボットですべての作業を代替しよう」などといった幻想を抱きかねません。
「例えばディープラーニングを使ったAIは、完全にミスをなくすのは不可能な上、ミスの理由を示せないというウィークポイントがあります。ですから業務の最終工程に使うべきではありません。このようなロボットの特性に対する一定の知識を経営層が持たなければ、有効活用は難しいと思います」
かつては特別な知識をもつ専門家しか扱えなかったパソコンやインターネットなどは、すでに誰にとっても身近で欠かせないツールになりました。
「パソコンやインターネットと同様、ロボット技術も今後ますます一般化が進んでいくはずです。そこで適正な判断をするためにも、文系か理系か、技術畑の出であるか否かを問わず、ある程度の知識は持っておくべきです」
連載「中小企業は「ロボット」にどのように関わっていくべきか」
- 第一回 企業の競争力強化の鍵を握る「ロボット」とどうつきあうか
- 第二回 現場を知り、使う側の視点を大切にし、そして技術を理解する
- 第三回 中小企業は、ロボット技術で自社製品の高付加価値化を
- 第四回 スピード感のある中小企業はイノベーションとの相性がいい
古田 貴之(ふるた・たかゆき)
千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo」所長
1996年、青山学院大学大学院 理工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程中途退学後、同大理工学部 機械工学科 助手。2000年、博士(工学)取得。同年、科学技術振興機構のロボット開発グループリーダーとして、ヒューマノイドロボット開発に従事。2003年6月より、千葉工業大学 未来ロボット技術研究センター「fuRo(Future Robotics Technology Center)」所長。気鋭のロボットクリエーターとして世界的な注目を集め、政府系ロボット関連プロジェクトにも多数参画。企業連携も推進し、新産業のシーズ育成やニーズ開拓に取り組む。
取材日:2020年 5月22日
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