Be a Great Small
サカワ
融合技術で市場を開拓
サカワは旧来の学校黒板にICT技術を融合し、教育現場に新風を吹かせている。iPhone、iPadアプリ「Kocri(コクリ)」を核に、映像を鮮明に映し出す黒板、黒板サイズに映写を可能にしたプロジェクターで構成する独自システムは教育関連の展示会で注目の的。現場を預かる教師らから導入を求める声が高まっているという。
2015年に投入したアプリケーション「Kocri」はiPhone、iPadを無線で映像管理端末と結び、プロジェクターから黒板に文字や図形、資料写真、動画などを映写する。文字などは白黒反転により、チョークで書いたように表現可能。資料作成に役立つ罫線や図形のテンプレートなども備える。管理画面は黒板に映し出されず、必要な画面だけを生徒たちに見せられるのが、パソコンを使う場合と大きく異なる点だ。不用意な操作で招くトラブルを避けられる。合わせて開発した「Kocriボード」は表面が少し白みを帯びた黒板で従来の学校黒板と同サイズ。素材を工夫して視認性を高めた。もちろん通常のチョークで板書もできる。
- 技術開発の機動力
- ユーザーニーズの製品への落とし込み
- 自社の強みが活きる分野の目利き
よりよい製品を提供する
サカワは1668年に漆塗装で創業。1919年に漆の技術を応用して黒板製造に乗り出した。この後は黒板製造を軸に事業を展開し、黒板の木枠製造技術から建築分野へも進出している。電子黒板については認知が高まる中、同社もカナダのスマート社からシステムを輸入・販売している経緯はある。ただ「仕入れだけではおもしろくない」と、独自のシステム開発に至った。従来の電子黒板は専用ボードを利用し、映像機器、ソフトなどを合わせた導入費は約100万円。一方、Kocriは「Kocriボード」が従来の学校黒板と同等の約20万円。アプリは年間6000円(月額は600円)で利用できる。「よりよい製品を安価に提供したい」、坂和副社長は力を込める。
重要なハードは自社で手がける
2016年5月、「教育ITソリューションEXPO」の会場となった東京ビッグサイトでサカワのブースは来場者、メディア関係者の注目を集めた。超広角・短焦点プロジェクター「ワイード」の登場が理由だ。約60センチメートルから140インチの画面に投影可能で学校黒板の全領域をスクリーンにできる独自の新ハード。中央設置で黒板の左右に映像の移動ができ、レーザー光源を用いて長寿命化も果たした。「電子黒板のシステムでは独自プロジェクターでなければ、コストが高くなる」と、坂和副社長。システムをすべて手がけることで利益が確保でき、十分な開発投資が可能になるという。若手中心の開発会議では新製品のアイデアが必要に応じて自然と出てくる。「IT技術は追撃が早い」(坂和副社長)が、新旧技術の融合で独自路線を切り開く。
One Point
チャンスはどの分野にも
「できることは社内で。そうでなければ外注へ」と、サカワの開発戦略はわかりやすい。情報収集の網を張り巡らし、積み上げてきた自社の強みに付加すべき技術を柔軟に取り込む。ワイードも委託生産だが、開発は独自。坂和副社長は「電機分野参入への第一歩」と胸を張る。「黒板製造」と言ってしまえば聞こえは古いが、変革を生み出すチャンスはどの分野にも眠っていると再認識させられる。
企業データ
- 企業名
- 株式会社サカワ
- Webサイト
- 法人番号
- 6500001007277
- 代表者
- 坂和壽々子社長
- 事業内容
- 電子黒板、黒板、集成材、特殊建材などの製造施工販売