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フルハートジャパン

“下町ボブスレー”から製品開発を学ぶ

フルハートジャパンはあらゆる分野でコンピューター制御機器の設計・製作を手掛ける。國廣愛彦社長は「当社の強みは、設計も絡めて提供できるところ。単に依頼されたものを製造・販売するのではなく、ソリューションとして提供できる」とはつらつとした笑顔をみせる。現在は数種の自社製品を開発中。地元大田区で下町ボブスレーネットワークプロジェクトに参加し、製品サイクルやPR方法を学んでいる。

  • 失敗を生かした製品開発
  • 下町ボブスレーネットワークプロジェクトを活用
  • 製品開発を人材育成にも利用

自社製品の開発、そして失敗

これまで同社では薬品を誰がどのくらい持ち出したかを管理できる薬品監視保管システム、書籍の上下横の紙部分を自動で磨く書籍三面自動研磨機など多種多様なものを開発してきた。しかしこれらは全て、プロトタイプで終わり量産化に至っていない。開発はしたが、製品化するための改良を行わなかったからだ。國廣社長は「『組み込んだ計量器を減らしてコストダウンを図ってほしい』、『半自動の方が使いやすい』などの具体的な改良点をいただいたにもかかわらず改良に取り組まず、当社の技術をPRする製品を作っただけで満足してしまった」と苦笑する。

この反省を生かし、現在「アイソレーションアンプ」「導電率計」「ケーキカッター」の3品の製品化に社を挙げて取り組んでいる。「アイソレーションアンプ」は、信号の増幅器。圧力などを測る計測器と管理する機器の間に設置すると、計測器が感知した信号を増幅できる。微弱な信号もアイソレーションアンプを通せば通常の信号に変換され、異常を検知できる。

同社では従来品の2倍である4チャンネルの信号を増幅できるアイソレーションアンプを製造した。ただ、4チャンネルもいらないとう市場の声もあった。そこで2チャンネルか4チャンネル、選んで搭載できるものを開発した。十分に顧客ニーズを聞いて開発したこの製品は、2015年後半に発売した。顧客のニーズにぴったりと合っているのか、反応が気になるところだ。

導電率計は、牛丼などの塩分を計り結果を本部に送れる塩分濃度計測器。鍋にセンサーを入れると塩分濃度が計れ、結果を自動で本部に送る。塩分濃度を集中管理すれば、店舗ごとの味の差をなくせる。試作品は既に完成。今後検証してもらい、通信機能を再開発するという。失敗を生かし、改良点をもらったら即座に対応する。大手牛丼チェーンの市場開拓を狙う。ケーキカッターは超音波を使ってケーキを切る機械。超音波の利用でパイ生地などやわらかい部分も、外観をたもったままきれいに切れる。大型のモノは既に大田区内の会社から出ているが、同社で小型・中型版を作成中。現在図面から考案中で、社長だけでなく若手社員を中心に一丸となって開発を進めている。

顧客ニーズに合わせ機能を絞り込んだアイソレーションアンプ

世界征服プラン

國廣社長は「どの製品も当社でなければできないという技術を使っているわけではない。ただ、多様なニーズに応えながら他社がつくるより格段に安くできる」とコストダウンに自信をみせる。将来に向けては「世界征服プラン」と名付けた製品の開発計画を立てている。国を巻き込んだ製品開発になる予定だという。アイデアを積極的に形にし、下請けに留まらない能動的なモノづくりの姿勢をみせる。

また「社長自らが動くのは簡単だが、それでは人は育たない。自社製品の開発を社長が勝手にやっていることにしないためにも、社員1人ひとりに責任を持ってやってもらう。ひとつずつ地道に学んでもらうため、自分はモノづくりのプロではないがじっくり指導していくしかない」(國廣社長)と目標を設定しながらの人材育成を行う。製品開発を人材育成にも利用し、社内のベクトルを同じ方向に向ける。

世界を目指す「下町ボブスレー」に参加

現在、國廣社長は大田区の中小町工場が中心となり、世界の舞台で戦える国産マシンの開発をしようというモノづくりプロジェクトである「下町ボブスレーネットワークプロジェクト」に参加している。「下請け根性の受動的なモノづくりを脱却したくてプロジェクトに突っ込んでいった」と当時を振り返る。

「みんなで定期的に集まって、どうやったら速いそりを作れるか議論する。製作者だけでなく選手の声も取り入れ、改良していく。『お客さまの声を拾う』のと同じことを体験している。ボブスレーから製品を改良する方法を学んでいる」と明かす。

また作っただけでは売れない、ということはこれまでの製品開発から学習済み。「いい製品を作っても、知ってもらわなければ売れるわけがない」と真剣な表情をみせる。下町ボブスレーもマスコミへの露出、参加交流型サイト(SNS)の利用など、様々なPR活動を行い知名度を上げている。プロジェクトのPR活動にも参加し、製品を広く世の中にPRする方法を学んでいる。これらの結果、下町ボブスレーは韓国ピョンチャン五輪を目指すジャマイカのナショナルチームに採用され、いよいよ大田区から世界デビューが決まった。

そりの開発に加え、選手の育成にも携わり、社外でも人材育成に取り組んでいる。経営姿勢は積極的で前のめりだが、人材育成はじっくりと見守る。強さと優しさを兼ね備えた國廣社長ならではのやり方だ。地元でのネットワークを作りながら製品を開発し、人材育成まで行う。一石二鳥を超えた『一石三鳥』の経営手腕をみせる。

One Point

國廣社長は自社の技術を高める以上に技術を組み合わせた「ソリューションの提供」に取り組んでいる。自社製品開発だけでなく、下請けの仕事においても改善点があれば積極的に提案する。アイデアで新しいことに挑戦していく姿勢が同社の魅力だ。能動的なモノづくりを定着させるべく、設計力と技術力両方の向上が求められる。

企業データ

國廣愛彦社長
企業名
株式会社フルハートジャパン
Webサイト
法人番号
7010801010685
代表者
國廣愛彦社長
所在地
東京都大田区中央3-20-8
事業内容
各種産業用コンピューター制御機器の設計・製造