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「京都花室 おむろ(京都市)」店舗とサイトが相互補完
この記事の内容
- 老舗花店の4代目に就任した島本氏は、「京都の四季」を世界に届ける目標を持つ
- 京都小鉢(ミニ盆栽)を考案し土壌検査、配送、通関など手間を惜しまず海外へ
- 英文ECサイトでミニ盆栽をアピール、シンガポールの特設店舗で販売を始めた
「春の桜、夏の睡蓮木、秋の紅葉、冬の椿など、京都の四季を飾る彩り鮮やかな花々。この素晴らしさを世界に届けたいとの思いが海外へ目を向けさせた」と京都花室 おむろ(フラワーハウスおむろ)店主の島本壮樹代表取締役(31)は語る。同社は、京都の古刹で世界遺産に登録されている仁和寺の門前に店舗を構え、境内での対面販売を許されている唯一の花店だ。
京都は外国人観光客の人気が高い地域。とくに花見、紅葉のシーズンには、仁和寺を訪れる外国人が増え、京都花室 おむろの店舗で「自分の国に持って帰りたい」という声が多く寄せられるという。ただ、植物類の輸出は、国の土壌検査などが必要で、煩雑な書類作成に時間がとられるほか、費用も小規模事業者には負担が重い。海外展開のハードルは「途方もない高さに見えた」と島本氏は当初の思いを語る。
同社は1995年に「御室園芸」として創業し、93年に法人化。後継者は、島本氏の兄のはずだったが不慮の事故で亡くなる。その後、父親も病気で他界した。島本氏は外資系の大手日用品メーカーを退職し、2011年11月に4代目として事業を継承。屋号は「京都花室 おむろ」へ変更した。
店舗兼住居で育ってきただけに、花の修行はしていないものの体で覚えた感覚や花の美しさ、愛着は備わっていた。それでも花事業に没頭するにつれ「京都の四季の素晴らしさを再認識した。この感激を京都以外の地でも味わってほしい」との思いが募っていったという。
同時に抱いたのが花の流通市場への疑問。花の寿命は短い。市場を経由する流通過程で日数を重ねれば、消費者が花を楽しめる時間は短くなる。それならば、生産者から適正価格で直接仕入れ販売すれば、生産者と消費者の双方がメリットを得ることができる。
こうして全国の生産者を訪ね、花作りを勉強するとともに、どうすれば京都の四季を家庭で気軽に楽しめるのかを検討。そこから京都小鉢(ミニ盆栽)として、四季折々の花々をシリーズ化し、販売を始めた。「1年半ぐらいは認知度の向上に必死だった。地元紙をはじめメディアに取り上げられた効果も大きかった」とし、徐々に軌道に乗る。当然の如くホームページを立ち上げネットでの注文を受け付けるようにした。
国内向けネット販売から日を開けずに海外販売を開始した。手がけたのはシンガポールの実店舗での販売で、手間を惜しまず植物検疫を受け、梱包を工夫し運送時のダメージを受けない工夫をした。自身も現地に入り通関後から店舗での配置までスピード感をもって取り組んだという。
期間限定店舗を1カ月ずつ移動する形で、シンガポールの有名な植物園、日系の百貨店で、ミニ盆栽などを販売した。購入者は同社のホームページを見てくる。「サイトが店舗販売を補完し、店舗での購入者がネット利用者へとつながる」という形ができあがった。盆栽は生きているので、育て方など説明が必要になる。海外で普及させるには対面販売が欠かせない。
本格的な越境ECへの展開は、中小機構が実施した越境ECマーケティング支援事業での補助金採択から。これで海外の特定の人だけでなく一般消費者に向けたWebサイト構築ができた。海外の顧客ニーズ、サイト内で使用する写真素材、色など各国仕様に合わせる重要さも知る。現在は売上高の8割がネット販売で、そのうち3割程度が海外となっている。
次の展開は、タイ、ベトナムなどアジアから欧米へと対象エリアを拡大していくこと。そのために必要となるのが各エリアを担う人材だ。「10年先を共有できる人が不可欠だ。世界で京都の四季を伝える人を増やしていきたいのだが」と人材確保が課題という。
企業データ
- 企業名
- フラワーハウスおむろ
- Webサイト
- 設立
- 1993(平成5)年5月
- 従業員数
- 3人
- 代表者
- 島本壮樹氏
- 所在地
- 京都市右京区御室芝橋町6-16
- Tel
- 075-465-5005
- 事業内容
- 京都小鉢(ミニ盆栽)、花と関連商品の販売