起業のススメ
「株式会社ブイシンク」デジタルサイネージの新しい使い方を提案
駅、街なか、ショッピングモール—。人が多く往来する場所で目にする「デジタルサイネージ」(電子看板)。最近では飲料の自動販売機の商品陳列面に組み込まれ、アニメーションでキャラクターを流すなど、目を楽しませてくれる。技術とノウハウを駆使し、デジタルサイネージを広告媒体として魅力あるものにしたのが、ブイシンク社長の井部孝也だ。井部はサイネージを単なる媒体にとどまらせず、新しい購買喚起ツールとして、さらに情報提供ツールとして昇華させる青写真を描いている。
IT革命が転機
井部は大学で工業化学を学んだ後、製薬会社の学術営業職として社会にでた。その後、半導体装置メーカーの技術者に転職する。モノづくりへの思いが強く、玩具メーカーで製品開発に携わった。
転機は1990年代後半のIT革命だった。ネットワーク時代の到来を確信した。独立し、コンテンツビジネスに乗り出す。「半導体の設計で得たノウハウと、キャラクター企画のノウハウを生かせないか」とネットワークを生かしたコンテンツビジネスを通信会社に提案した。開発に携わった「インターネット冷蔵庫」は話題になった。
通信会社と連携したコンテンツビジネスを進めながら2008年に開発を始めたのが、デジタルサイネージだった。「海外諸国に比べサイネージ分野は日本が立ち遅れていることに気づいた。ネットワークで画面を結び、キャラクターを表示する点でノウハウが生かせると感じた」。「一瞬見ただけで近寄ってもらえ、使ってもらえるもの」を設計コンセプトに据えた同社のサイネージは注目を集め、現在では鉄道の駅や小売店内に設置した自動販売機などあらゆる場所に置かれている。
同社の自動販売機用サイネージは、タッチパネルにある飲料の画像を触ると購入できる。製品やキャラクターの表示内容はネットワーク経由で、ブイシンクの管制センターで管理している。ある店舗のサイネージ付き自販機で売る製品は、店舗陳列品より高価格なのに売れ行きがよいという。行動分析すると、売れる自販機の周辺には多くの人が集まるという。「サイネージのキャラクターが呼び水になっている。通販情報を載せてその場で買えるようにすれば、消費が促されるのではないか」。現在、一部の携帯電話ショップに専用端末を置いて効果を検証している。
駅のインフラになる
施設案内、災害時にネットワークを活用して避難勧告や避難場所を表示する防災設備、他言語対応、顔認証などデジタルサイネージ型自動販売機の可能性は大きく広がっている。現在、全国に清涼飲料の自動販売機だけで約250万台、すべての種類を合わせると500万台設置。そのうちデジタルサイネージ式のものは1千数百台だが、半数をブイシンクの製品が占めている。首都圏の駅のホームに設置した新型機の「スマートベンダー」は、列車の遅延や事故などの運行情報、天気予報、ニュースなどが配信され、駅の重要なインフラとなりつつある。
ハイテク日本の象徴に
過去の経験を生かしてサイネージ開発に取り組む井部。社内では装置の開発から、キャラクター企画、システムネットワーク構築まで社内で一貫している。「すべてを社内でまかなえるので、お客さまのニーズや微細な変更に対応しやすい。中小企業ならではの小回りのよさを武器にする」と胸を張る。強みを生かして、サイネージのさらなる普及に注力する。これまで目につきにくいところに置かれていた自動販売機が、情報端末として人を集める主役になるかもしれない。
外国人が日本に来て驚くことの1つに、自動販売機の多さがある。数もさることながら、生花や野菜、お米、はては温泉まで何でも売っている。そして現金がはいった自販機が略奪されない治安の良さもある。2020年の東京五輪にあわせ多くの外国人が来日するだろうが、デジタルサイネージ型自動販売機が「ハイテク日本」をさらに印象付けることだろう。
外国人が日本に来て驚くことの1つに、自動販売機の多さがある。数もさることながら、生花や野菜、お米、はては温泉まで何でも売っている。そして現金がはいった自販機が略奪されない治安の良さもある。2020年の東京五輪にあわせ多くの外国人が来日するだろうが、デジタルサイネージ型自動販売機が「ハイテク日本」をさらに印象付けることだろう。
(敬称略)
失敗を恐れずに、果敢にいろんなことにチャレンジしてほしいですね。起業もその一端でしょう。1回失敗したからといって、そこでチャレンジが全て終わるわけじゃない。思いつきで物事を進めるのは考え物ですが、常に努力を重ねアンテナを高く持っていれば、挑めるタイミングは必ず来ます。チャンスをものにして、自らを成長させる意味も込めて起業に挑んでください。
掲載日:2016年3月25日
企業データ
- 企業名
- 株式会社ブイシンク
- Webサイト
- 設立
- 2005年8月
- 法人番号
- 5010001130393
- 代表者
- 井部孝也
- 所在地
- 東京都中央区築地2-12-10
- 事業内容
- デジタルサイネージ自販機の開発