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「ナガエ(富山県高岡市)」ベトナム生産が軌道に

この記事の内容

  • 高岡市で鉄工所として創業。ダイカスト鋳造や建築金物を手がける
  • ASEANでの需要を見込み中小機構のF/S支援事業を受けベトナムに進出
  • 製造技術を活用し美術工芸品も展開。海外向けブランド確立を目指す
築金物を手に、海外市場開拓に意欲を示す長柄社長(本社ショールームで)

「経済成長が続くASEAN(東南アジア諸国連合)に需要があると思い、2014年5月からベトナムで建築金物の製造を始め、現在では軌道に乗っている」—。ダイカスト製品製造、ナガエの長柄洋一代表取締役社長(41)はこう語る。

ナガエが海外展開を考え始めたのは12年ごろ。当時、自動車向けダイカスト部品を手掛ける他社は次々と中国やタイ、インドネシアなどに進出。その結果、国内メーカーの海外調達が増えて価格競争が激化。その影響は、自動車業界以外にも及んだ。自動車向け事業の比率が低い同社への影響は少なかったが、将来を見据えてアジア展開を考え始める。

そこで、中小機構のF/S(実現可能性調査)支援事業を受けてベトナムを現地調査。同国だけでなく、周辺国でもマンションなどの開発機運が高いことから、門扉用レバーや物干し金物など建築金物の現地生産を決定。早くも翌年にはドンナイ省の工場団地に現地法人を設立、14年から生産を始めた。

現地工場は「ダイカスト工程、機械加工だけでなく、塗装、組み立てという最終工程までの一貫生産で付加価値を高めた」(長柄社長)。国内では塗装工程は外注しているが、ベトナムでは適した外注先が見つからないため自社で乗り出すことにした。「〝日本品質〟で付加価値の高い生産体制。ライバルはいない」(同)ため、現在は同国の需要を中心に人の従業員を擁するまでに成長した。

高岡銅器で有名な高岡市で創業したナガエは、鉄工所として長柄社長の祖父が1954年に創業。67年には鋳造の一種であるダイカスト製ガスメーター用部品製造に乗り出し、現在も主力商品。その後は建築金物などにも進出し、業容を拡大していく。これらの事業が成功したのは「企画・開発からデザインまで手掛け、オリジナル商品を開発できること」(同)だ。

70年には「機械の稼働率を上げる」ために、仏像・銅像、花器や置物などの美術工芸品の製造も始めた。原料は銅ではなく、アルミニウムや亜鉛合金。「コストが安く、クオリティも高いため」。工業用と一般消費者向け製品を扱うため、「アート&テクノ」がキャッチフレーズ。

ベトナム法人は現地の有名大学卒業生4人も雇用。日本で研修した後、現地で管理職となるなど組織体制の整備も進む。生産が軌道に乗ってきたことで、今後は「引き合いが増えているASEAN全域を商圏に入れる」(同)。タイやマレーシア、インドネシアなどにも日系の不動産デベロッパーが進出しているため、「品質を前面に出し、ASEAN地域の現地調達をサポートしたい」(長柄幸隆取締役常務)意向だ。

このため、14年には中小機構のパッケージ型海外展開支援事業によって外国語版ホームページも開設。これに伴い「アジアだけでなく、欧米からの問い合わせも増えている」(長柄常務)。

一方の美術工芸品は09年にオリジナルブランドを立ち上げ、海外展示会などに出品。日本の工芸品が昨今、外国人からも人気が出ていることに対応。一昨年には長柄社長が代表を兼務する新会社「ナガエプリュス」を設立した。「情報とデザインの中心は東京」(長柄社長)のため、ブランディング・マーケティングマネージャーを迎え入れ、渋谷区にオフィスを構えた。デザインと機能を前面に、国内だけでなく、海外に向けてもブランドを確立したい考え。

さらに、これまでの製造ノウハウを生かし「年内にも医療機器製造・販売の認可を取りたい」(長柄常務)と、新分野への展開も視野に入れている。

4代目として昨年就任した長柄社長は「海外比率を現在の5%未満から、5年以内に2倍程度にしたい」と語る。若い力をバネに、工業製品と工芸品という二兎を追う新たな挑戦が始まった。

企業データ

企業名
株式会社ナガエ
Webサイト
従業員数
182人
代表者
長柄洋一氏
所在地
富山県高岡市荒屋敷278
事業内容
ダイカスト鋳造、金型・ガス型・焼型・生型鋳造、プレス、板金加工、各種機械加工
創業
1954(昭和29)年(創立=1986(昭和61)年)