中小企業NEWS特集記事
「日本自動機工(さいたま市)」ゴムの堰でアジアへ進出
この記事の内容
- ゴム製の起伏堰「ラバーダム」を国内で初めて開発、累計約700件の施工実績を誇る
- 中小機構の海外市場F/S を経てJICA支援によるインドネシア進出を調査中
- アジアでのラバーダム潜在市場は大きく、次にベトナムでの事業化を視野に入れている
日本自動機工は、河川の利水、治水に欠かせない堰(せき)・水門の専門メーカー。一般水門、起伏堰(転倒ゲート)、除塵機、遠隔監視制御システムなどを長年取り扱い、業界の中で確固たる地位を築いている。特筆されるのが、ゴム製の起伏堰「ラバーダム」だ。1964年に国内で初めて開発、設置して以来、これまでに累計約700件の施工実績を誇る。
いま、その海外展開に向け新たな一歩を踏み出した。
「現在、JICA(国際協力機構)の支援を受けてインドネシアで調査を進めているところ。調査結果を踏まえ、早期に事業を立ち上げたい」。古屋久昭代表取締役社長は、同社の海外進出第1弾となるインドネシアプロジェクトの近況を、こう説明する。
インドネシアプロジェクトのスタートとなったのが、中小機構の海外市場F/S(実現可能性調査)だ。2014年にF/S案件に採択され、その後、JICA案件化調査に橋渡しされた。
同社と中小機構を結びつけたのは、古屋社長が持つ中小企業診断士の資格がきっかけとなった。もともと大手電機メーカーのマーケティング部門で活躍していた古屋社長は、家業を継ぎ、3代目社長に就任した後、中小企業経営の見識を深めるべく診断士の勉強に励み、資格を取得する。その縁で、中小機構を知り、F/Sに応募したという。
同社が「ラバーダム」の海外展開を目指した背景には、「国内市場は安定的に推移しているものの、大きな伸びは見込めず、先行き縮小する懸念もある。そこで海外市場の開拓となるが、外に出られるのはラバーダムだけ」(古屋社長)との事情があった。
ラバーダムを除く大半の同社製品は、金属製で重くてかさばるため、輸送に適さず、わざわざ船賃をかけて遠方から取り寄せるニーズは皆無に近い。その点、ゴム製で、中に空気を入れて膨らませるラバーダムは、軽くてかさばらず、品質の高さから競争力は十分にあるというわけだ。
もう一つ、同社をラバーダムの海外展開に向かわせた大きな理由がある。それは、同社と業務提携し、ゴム製の堰を世界各地に設置してきた日本の大手タイヤメーカーが同事業から撤退したことだ。提携に基づき、同社は制御装置や金具類など堰の付帯設備を提供してきており、その数は世界数百カ所にのぼる。
大手の撤退後、同社にはたくさんの問い合わせが寄せられるようになり、付帯設備の部品供給などを手がけている。そうした経緯から、「設置先のリプレースやメンテナンスの需要が少なくない」(同)と見極めた。
ゴム製の堰は、通常の鋼製の堰と比べ工事費が抑えられ、工期は短くて済む、維持管理が容易、景観を損なわないなど多くの利点がある。耐久性の面でも、鋼製の堰と比べて遜色ない。
近年、中国製品が出回り始めており、ラバーダムは中国製との競合が避けられない。その点に関して古屋社長は「中国製の価格は半値以下のようだが、ラバーダムの寿命が20年なのに対し、1年でおかしくなったとの話も聞いた」と、品質の違いから勝算は十分にあると説く。
JICAの実証事業を踏まえ、同社では2018年にもインドネシアでの事業化に乗り出す計画だ。「初年度売上高は1億円、2年目で2億円のペースで進めていく」(同)方針で、インドネシアに続いてベトナムでの事業化も視野に入れている。
アジア各国の大半は農業国で、どの国も灌漑や治水・利水が重要な課題になっている。それだけにラバーダムの潜在市場は大きいといえ、今後、インドネシアを手始めに潜在ニーズが次々と顕在化していきそうだ。
企業データ
- 企業名
- 日本自動機工株式会社
- Webサイト
- 設立
- 1950年(昭和25年)
- 従業員数
- 70人
- 代表者
- 古屋久昭氏
- 所在地
- さいたま市浦和区岸町7-1-7
- 事業内容
- ラバーダム、鋼製堰、除塵設備、遠隔監視制御システムなどの製造販売、各種構造物機械の据付工事、水門設備のメンテナンス