中小企業応援士に聞く
創業の原点である母親目線で「安心・安全」の商品開発【沖縄子育て良品株式会社(沖縄県南風原町)代表取締役・舩谷香氏】
中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。
2021年12月13日
1.事業内容をおしえてください
沖縄の素材を活用し、母子にやさしい食品や化粧品、雑貨などの商品の開発・販売を手掛けている。販売には小売部門と卸売部門があり、小売部門では、実店舗とEC(自社サイトと楽天市場)で販売を行っている。実店舗については、コロナ禍の影響で客足がかなり落ちているが、ECは順調に推移している。売れ筋として、実店舗ではお客さまからの相談を応じながら販売していることもあり、肌の弱いお子さんのための商品などが売れている。ECでは化粧品などが人気だ。一方、卸部門では、県内外の小売向けと卸問屋向けに商品を販売している。ちなみに売上高の60%は卸向けとなっている。
創業は2004年。3人の子育てをしているなかでの経験が創業のきっかけとなった。一番下の子(次男)がアトピーだったが、散歩の際に虫よけスプレーを使ったところ、肌がかぶれてしまった。調べてみると殺虫剤の成分が含まれていて、それがかぶれの原因だった。そこで、殺虫剤の成分を含まず、息子が安心して使えるものを自分で作ってみたのが始まり。その後、「こういう商品が欲しい」と思ったものを自分で商品として作って販売するようになった。
このように原点は母親目線。その母親目線をずっと持ち続けていきたいと思い、今も商品開発は、私のほか、いずれもママさんである社員やパートの意見を聞きながら進めている。さらに試作品についても、ママさんのモニターに使用してもらい、アンケート結果をもとに改良したうえで商品化している。
2.強みは何でしょう
「安心・安全」を経営理念に掲げていること。そして、社会の変化にとらわれず、「安心・安全」という軸を変えないことが強みだ。「安心・安全」という言葉に誤魔化しはきかない。対象となるユーザーは少ないかもしれないが、肌の弱い人でも安心して安全に使える商品は間違いなく必要とされている。そういう人の顔を思い浮かべながら安心・安全にこだわった商品開発を心掛けている。
こうした経営理念をパートも含めた全体で共有することが大事だ。そのために、月に1回、店舗を休みにして全体学習会や早朝学習会を実施している。そこでは、外部から講師を呼んだり、地元の南風原町のことを学んだりなど、資質向上のためのさまざまな活動を行っている。自分たちが出した廃棄物がどう処理され、どう再利用されるのかを知るため、ごみ処理施設である那覇・南風原クリーンセンターを見学したこともある。商品知識だけにとどまらず、幅広い知識や意識の底上げを行っている。
「安心・安全」に関連していえば、SDGsの目標、とりわけ「つくる責任・つかう責任」について知識を深め、発信していきたい。当社の商品にはどんな素材が使われていて、人体になんらかの影響を及ぼすものがあるのか、あればどんな影響があるのか、といった点を正確に理解し、お客さまや取引先などに説明できるようにしていきたい。
また、経営計画を全社員で作成している点も強みに挙げられる。反省点や改善点を細かく分けて部門ごとに作成し、目標を全員で共有している。さらに、障害を持つ従業員が当たり前に働ける職場であることも自慢できる点だ。
3.課題はありますか
経営の課題は利益向上だ。経費はすでに相当抑えている。利益を上げるには商品単価の引き上げが必要だが、そうすると今度は客離れが気になる。なかなか難しい問題であり、頭を悩ませている。
コロナ禍による売り上げへの影響も実感している。感染対策として外出制限が実施されると消費行動自体が抑えられ、たとえば日焼け止めのような生活必需品ではない商品は売れなくなる。コロナ禍は経営にマイナスの影響を及ぼしているが、アフターコロナやウィズコロナを見据え、どのようにしたらコロナがあっても事業を継続していけるのか。その道を模索している。
4.将来をどう展望しますか
現在、異業種への進出を検討している。当初は来年、南風原町周辺で飲食店を開店する予定でいたが、コロナ禍で計画は2年ほど遅れる見通しだ。
ターゲットとする客層は30代半ばから40代半ばの子育て中の母親で、もちろん、「安心・安全」のコンセプトを堅持していく。当社で働いている長女が栄養士の資格を取得していて、メニュー作りから店舗プロデュースを行うことにしている。無農薬の野菜など地元・沖縄の食材を使った自然派の店舗にしていきたいし、オープンキッチンにして調理法などを学べるようにもしたい。実は、開店を見据え、自分で野菜作りや養鶏を行っている。現在の事業との相乗効果を発揮できるような取り組みを考えている。
5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか
社員や社員の家族の幸せが地域の幸せにつながる。そのように「幸せ感」を広げていきたい。商品ひとつ作るにしても、一部は地域の障害者雇用施設に縫製などの作業をお願いしているといった具合に、多くの人たちに関わってもらっている。商流や物流を通じて「幸せ感」を地域に広げていくことができると思っている。
また、周囲の人たちに恩返しをしたいと考えている。商品作りに際し、できる限り沖縄の素材を使うことにしているのもそのひとつ。私は元々、栃木県の出身で、その後、熊本県を経て沖縄に移り住んだ。それ以来、沖縄の人たちに大変お世話になってきた。たとえば、創業後まだ1、2人で仕事をしていた際に私が体調を崩して入院してしまったことがあった。「もう店を閉めるしかない」とも考えたときに取引先が店を手伝ってくれた。おかげで経営を続けることができた。
6.応援士としての抱負は
沖縄には女性の起業家が多いので、彼女たちに向けて、その人に合わせたアドバイスを行っていきたい。ひとりひとりビジネスのスタイルが異なるので、私がフォローできない場合は、これまで築いた人脈の中で適切な相談相手を紹介するようにしていきたい。自分の経験からもわかるが、事業を続けていくのは大変なこと。彼女たちが事業を継続していけるよう支えていきたい。
企業データ
- 企業名
- 沖縄子育て良品株式会社
- Webサイト
- 設立
- 2004年6月事業開始・2010年2月法人化
- 代表者
- 舩谷香(ふなたに・かおり)氏
- 所在地
- 沖縄県南風原町字宮平259-101
- Tel
- 098-996-2550
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