SDGs達成に向けて
給水スタンド設置とマイボトル携帯でペットボトル30億本削減へ【ウォータースタンド株式会社(埼玉県さいたま市)】
2024年 2月 19日
水道水を使用するサーバー型浄水器のレンタル事業を行うウォータースタンド株式会社。2030年までに日本国内で30億本のペットボトル削減という壮大な目標を掲げ、自治体や企業などと連携し、誰でも自由に利用できる給水スタンドの設置やマイボトル携帯の普及をはじめとしたプロジェクトを進めている。本多均社長は「プラスチックごみ削減は世界的に大きな流れ」としてSDGs達成に向けた活動をさらに広げていく考えだ。
海洋プラスチックごみ問題に関心、「なにかできないか」
同社は本多氏の父、清氏が1969年に創業。旧社名はサニクリーン大宮で、オフィス向けに清掃用具レンタルなどを手掛けるサニクリーン東京のフランチャイジー(加盟店)として設立された。1998年にフランチャイズを離脱して以降、事業領域を広げていき、宅配水事業を2005年に開始。水道水を使用するサーバー型浄水器「ウォータースタンド」のレンタル事業は2008年から。その後、2012年に韓国企業と業務提携し、日本国内代理店として浄水器事業を拡大。その翌年には韓国企業から事業譲渡を受けた。そして2018年、3度目となる商号変更でブランド名と同じ現社名となった。ウォータースタンドは水道直結型と給水型があり、使用量にかかわらず月4000~5000円程度を中心とした定額レンタル。累積設置台数は約15万5000台(昨年6月末時点)。
清氏の次男である本多氏は、証券会社勤務や衆議院議員秘書などを経て1979年に入社。1991年に2代目社長に就任した。本多氏が環境問題、とくに海洋プラスチックごみ問題に関心を抱くようになったのは2018年頃。その数年前、ウミガメの鼻にストローが詰まっている画像や動画が世界中に拡散し、廃棄されて海に漂う大量のプラスチックがクローズアップされた。「2050年に海洋中のプラスチックの重量が魚の重量を超えるという予測が出ていた。スターバックスもプラスチック製ストローの使用を取りやめる方針を2018年に打ち出した。当社としてもなにかできないかと、との思いを強くした」(本多氏)という。
社員の提案でマイボトル携帯、姿を消したペットボトル
使い捨てペットボトル削減とプラスチック資源の循環を目指した連携・活動である「ボトルフリープロジェクト」は2019年にスタートした。きっかけは社員からの提案だった。「水筒を使えばプラスチックボトルを買わない、捨てないことができるのではないか」。これを受けて同社ではまず、社員全員がマイボトルを携帯。すると、それまで会議の際にテーブルの上に何本も並んでいたペットボトルは姿を消し、代わって社員はマイボトルを持ち歩くようになった。本多氏も「以前は1年で何百本もペットボトル飲料を買って飲んでいたが、マイボトルを使うようになってからは(ペットボトル飲料を)ほとんど買わなくなった」という。
そして2020年、「2030年までに日本の使い捨てペットボトルを30億本減らします」とするミッションと、「マイボトルを携帯する新しい文化を創り気候変動とプラスチックによる環境問題に取り組みます」というビジョンを策定した。このうち30億本という削減目標について同社ESG推進室の小野優雅子室長は「国内で出荷されるペットボトルは年間約240億本。そのうち10%程度はリサイクルされずに使い捨てとなっている。その分を当社の取り組みで減らすこととし、さらに努力目標分を上乗せして30億本とした」と説明する。
また、マイボトルについてはイベントなどの場で水筒を無料で配布する活動を進めている。オフィスや家庭だけでなく、公共施設や商業施設、観光スポットなどで誰でも無料で自由に給水できるスポットとしてウォータースタンドを設置し、マイボトル携帯の文化を広めることで、SDGsのゴール達成に貢献していこうという考えだ。
自治体や企業などと連携、前倒しで目標達成の見通し
目標達成に向け、同社は自治体や企業、大学などとの連携を進めている。このうち自治体とは2019年6月に地元・さいたま市と「プラスチックごみ削減の推進に関する協定」を締結したのを皮切りに、北海道から九州まで全国80以上の自治体と協定を結んでいる。これらの協定によりマイボトルに給水できるウォータースタンドを置いた給水スタンドが公共施設に順次設置されており、現在約2600カ所となっている。「自治体との協定をさらに進め、あと1、2年のうちに1万カ所に増やしたい」(本多氏)という。
また、SDGsにきわめて積極的なさいたま市では、公立の小中学校すべてに児童・生徒がマイボトルに給水できるウォータースタンドを設置。水を通じてSDGsに対する子どもたちの関心を高めることにもつながっている。さらに、本多氏は「ペットボトルのごみが減れば、ごみ収集車が排出するCO2や焼却時に発生するCO2が減り、全体として行政コストも削減できる」といったメリットを強調する。
企業では、大手製造小売業が2020年7月から国内の店舗に無料給水機を順次設置し、来店した客が自由に給水できるサービスを行っている。さらに、大手流通グループからも同様のサービス開始について打診があり、検討を進めているという。店舗内で無料の給水サービスを始めれば、ペットボトルを含めた飲料の売り上げが落ちるのは明らかだが、本多氏は「企業はそれを承知のうえでペットボトル削減に取り組もうとしている。それほどプラスチックごみ削減は世界的に大きな流れになっていて、企業も危機意識を持っている」と話す。このほか、昨年5月のG7広島サミットでは、大手飲料メーカー、アサヒグループのアサヒユウアス(東京都墨田区)と連携し、国際メディアセンター内にマイボトル給水器としてウォータースタンドが設置された。
自治体や企業などとの連携によるウォータースタンド設置台数の増加、さらには同様のサービスを開始・展開する同業他社の増加などにより、ペットボトルの削減は想定以上のペースで進行。当初はハードルが高すぎると思われた「2030年までに30億本削減」という目標も「何年か前倒しで達成できそうな勢い」(本多氏)との見通しを示している。
SDGsへの取り組み、未来の世代のため「一緒にやりましょう」
プラスチック削減に始まった同社のSDGsへの取り組みは各方面から高く評価され、これまでにリデュース・リユース・リサイクル推進協議会(3R推進協議会)の会長賞や彩の国埼玉環境大賞の優秀賞など数多くの賞を受賞。昨年10月には、かわさきSDGs大賞の特別賞に選ばれた。これは、2021年に川崎市と協定を締結した後、マイボトル用給水機として同市内の公共施設にウォータースタンドを設置するという実証実験を行ったうえでの受賞だった。「2年間に及んだ実証実験で、使い捨てペットボトルの削減を実現するという成果が評価されたもので、とくに印象深い受賞だった」(小野室長)という。
環境問題をはじめとしたSDGsの目標が注目されるなか、大企業だけでなく中小企業にもなんらかの取り組みが求められている。本多氏は「企業経営は大変だが、未来の世代のために、環境問題についてぜひとも考えてほしい」と訴える。また小野室長は「何をすればいいのか分からないのであれば、私たちがこれまで行ってきたことを伝え、一緒にやりましょう、と呼び掛けていきたい」と話す。SDGs達成のため連携の輪をいっそう広げていく考えだ。
企業データ
- 企業名
- ウォータースタンド株式会社
- Webサイト
- 設立
- 1969年3月
- 資本金
- 5000万円
- 従業員数
- 608人(パート・アルバイト含む)
- 代表者
- 本多均 氏
- 所在地
- 埼玉県さいたま市大宮区桜木町4−463
- 事業内容
- ウォータースタンド、空気清浄機のレンタル