中小企業NEWS特集記事
「福島情報処理センター」人材育成の現場から
この記事の内容
- 中小企業大学校仙台校に社員を延べ128人派遣し、積極活用
- キャリアステップの仕組みや評価基準を明確かつオープンに
- 昇格した社員は必ず仙台校の研修を受講し、全社員に成果報告
「中小企業大学校仙台校は管理者としての意識付け、心構えを習得できる唯一の研修機関だ」。福島情報処理センターの植杉稔取締役副本部長と三輪秋男総務部採用担当は口をそろえる。
福島県の中央に位置し、仙台に次いで東北地方第2位の人口規模(約33万人)を誇る郡山市。1965(昭和40)年に同地に設立されて以来、福島県内の地方公共団体および企業に情報処理サービスを提供してきた同社は、地元からの採用が8割を超える地域になくてはならない企業だ。植杉、三輪両氏ともに「当社の資源は“人財”だ」と言い切る。
情報処理という業界は、人の育成が最も重要な経営課題の一つだ。同社の人事考課システムは「階層クラスによってキャリアステップを構築しており、昇格や評価の基準もオープンで、社員は明確な基準値を目指してスキルアップすることができる」と植杉氏は胸を張る。キャリアステップで昇格した社員は必ず仙台校に派遣するという取り組みを3~4年前から始めたという。
具体的には、まず、研修を受ける前に現場長が研修の目的設定を指示。研修後にその目的の達成度合いや、どの程度役に立ったかといったアンケートに答えて、研修成果を評価する。さらに、全社員を対象とした報告会を開いて、受講者が研修内容を報告することで、社内に水平展開し、情報の共有化と会社全体の底上げに役立てている。
これまでに延べ128人を仙台校に派遣。受講後の評価結果によると、仙台校の研修内容は他の研修機関に比べて高い評価を得ており、次の研修派遣計画に反映して管理者候補の社員を選考する方法が定着しているという。
植杉氏自身も仙台校の第12期経営管理者養成コースの修了生だ。当時、一緒に受講した仲間とは今でも交流があるという。その後、会社の繁忙などで同コースへの社員派遣は途絶えていたが、「今年度の第23期にようやく派遣できるようになった」と、感慨深げに話してくれた。
一方、三輪氏は「技術系やコンプライアンスの研修をぜひとも開催してほしい」と仙台校に要望する。「IT(情報技術)系の研修は東京で実施するものが多く、経費も高額なので社員を派遣する回数が限られる」からだ。また、情報処理業界は個人情報などの漏えいが命取りとなるので、社員には会社の信用や法律・内規などを十分に理解することが求められる。そこで、「コンプライアンスを強化したいが、適当な研修が見当たらない」のだそうだ。
女性の管理者養成と社員の高齢化に対応した職種の創設も喫緊の課題。とくに、社内の技術継承において、職種柄、ベテランから新人への技術・ノウハウなどの引き継ぎができないことが植杉氏にとって悩みの一つのようだ。「顧客に対応するノウハウ、技術の承継が未整備な点を解消したい」という。
同社は社員の離職率が低く、近年は中途退職する社員がほとんどいない。人材育成に力を入れてきた結果だ。今年は仕事が多く、社員は多忙だったが、期末手当の支給や海外研修の実施、社長との懇親会開催などで社内コミュニケーションが一段と充実。社員全員が生き生きと働く企業風土にさらに磨きがかかっている。
企業データ
- 企業名
- 株式会社福島情報処理センター
- 資本金
- 2,000万円
- 従業員数
- 230人
- 事業内容
- 情報処理サービス、医療・福祉サービス
- 創業
- 昭和40(1965)年8月