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ハンズオン支援で物流コスト低減を実現「サンコー株式会社」

2021年 3月16日

河野伸之代表取締役社長
河野伸之代表取締役社長

扱うネジ数万点

同社本社
同社本社

サンコー株式会社は1961年に個人創業し、62年に法人化したネジ製造・販売会社だ。切削・プレス・鍛造による金属を中心としたネジを扱っている。経済産業省の2017年度「地域未来けん引企業」に選定された地域の注目企業でもある。

全国でも珍しい多業種対応型で、取引先は数千社。精密機械、家電、カメラ、携帯電話、情報通信、自動車、造船、工作機械、住宅、農機具、鉄鋼、橋梁、建築、土木など多岐にわたる。だから扱いアイテムも数万点。スマートフォンやデジタル家電などに使われる微細なサイズの製品から、自動車や造船、工作機械、産業機器、さらにビルや橋梁などの巨大構造物に使用される締結体まで多種多様だ。

生産や購買のネットワークが強み

造船用ネジ
造船械用ネジ

グループ会社のほかに国内外に協力工場が1000社以上あり、建築工事や土木工事などで使われる大口径のアンカーボルトやブレース、レベルマンなどの製品は、ISO9001とISO14001を認証取得したJIS認定を持つ協力工場で生産している。

一方で、地域密着型の営業による徹底した顧客志向で、モノづくりに関する顧客の困りごとを解決する商社機能も磨いてきた。自社工場以外に国内外で800社を超える「購買ネットワーク」を構築し、締結部品だけでなく、ねじ周辺の関連部品など顧客が求めるあらゆる商品を調達、適切なコストでタイムリーに提供している。顧客の求める品質・納期・コストに合わせるため、開発段階から図面や材質の変更も提案しており、特注品比率は約60%にのぼる。

課題は物流コスト低減

精密機械用ネジ
精密機械用ネジ

そんな同社でも抱える課題は少なくない。

ねじ流通業界は、競争力の激化やユーザーのコストダウン要請で収益確保が厳しい状況が続いている。同社は1万点にも上る商品を提供しているため、事業リスク回避ではプラス面も多いが、商品数の多さや特注品割合の高さ、小ロット短納期での納品が受注構造や管理を複雑にしており、物流コストがかさむ。

取引先からの受注は国内16営業所で対応しているが、受注頻度の高い在庫は各営業所に倉庫を設置して保有しているため、大きなコストがかかる。事業拡大へ向け他地域で新たな拠点を展開したくても、今のビジネスモデルではコスト負担が大きいため容易に実行できない。

在庫品は受注後翌日配送が原則で、1個単位からの発送を行い、一部は当日配送にも対応している。この細やかな対応は当社の強みでもあるが、全商品の約8割の配送を基本的に営業社員が行っており、本来の営業業務のウエイトが低くなっているという問題もある。

同社はこうした物流課題をどう克服してきたのか。

ハンズオン支援で活路

活用したのは中小機構の「ハンズオン支援」だ。意欲ある中小企業の事業を成功に導くために必要とされる あらゆる支援を継続的に行う支援のことで、同社は2015年3月から中小機構が派遣した専門家を受け入れた。

物流コストを低減するため、同社は当初、物流全般を外部に委託するサード・パーティー・ロジスティクス(3PL)を検討していた。だが、サンコーの取扱商品は大量で、それぞれに多様な規格・サイズが存在する。一部の地域拠点では実施できても、全体で実行することは難しかった。そこで専門家は、「現状分析に基づいた物流戦略を策定して目標達成をめざすこと」を提案した。

2015年3月から9月までの第1期では、物流改革を全社的取組みとして各部署を網羅したメンバーで構成するプロジェクトチームを結成。チーム員は在庫最適化のデータ分析手法、発注業務・調達システム改善手法などを習得、感覚ではなくデータに基づくコミュニケーションができるようになった。その結果、現場の一体感が生まれ「物流改革とは仕入先から顧客までの全体最適化を図ることであって、局部的な効率化を図ることではない」という考え方が社内に定着した。

続く15年11月から16年10月までの第2期では(1)在庫削減➁本社購買・物流センターと営業所間の即納体制の確立➂営業・配送専任化という3課題を設定。仕入の電子データ化による予算策定と参加仕入先増強、本社購買の既製品発注件数削減による事務コスト削減、特注品の発注合理化による対売上在庫比率の低減などに取り組んだ。これにより、人件費・配送費・保管費低減によるコストダウンを実現。出荷ミスも減ったため顧客満足度が向上した。

ハンズオン支援が始まった15年度3月決算の原価率と17年度3月期の原価率を比べると約1%減少。単純計算で1億円以上のコストダウンを実現したことになる。

サンコーは在庫削減、即納体制確立、営業専任化を実施することで、結果として売上の確保、コストダウン、独自の地域密着型3PL化を実現、同時に物流管理システム構築の基盤づくりを実現することができた。

顧客に選ばれる存在に

社内の新たな物流管理システムは2021年1月5日に稼働。既存の販売管理システムとの連動ができつつある。次の目標は文書を電子化し専用回線でやりとりする電子データ交換(EDI)との連動だ。ただ、業界では従来の固定電話回線からインターネット回線(IP)へ通信インフラを変更することが大きな課題で、当社内ではほぼIP化できたものの、一部取引先との回線が電話回線のまま。今後、改善が必要だ。

河野伸之代表取締役社長は「顧客にとってなくてはならない、選ばれる存在でありたい」と話す。コロナの影響で今はどの企業も守りの姿勢に入っている。サンコーは訪問営業による対面コミュニケーションを大切にして顧客を獲得してきたが、コロナを理由に訪問営業を断られ、新規顧客の獲得が難しい局面にある。Withコロナ、Afterコロナの時代を乗り切るため、今後はオンライン営業ツールを導入してオンライン上で新規顧客の獲得を検討していくことも重要だろう。挑戦はこれからも続く。

企業データ

企業名
サンコー株式会社
Webサイト
設立
1962(昭和37)年9月
代表者
河野伸之 氏
所在地
香川県高松市朝日新町20-4
Tel
087-821-0035