これからの訪日外国人旅行者ビジネス

「スズヤ」 楽しい思い出を持ち帰ってもらいたい。温かい心が基本

浅草エリアは、日本人にも親しまれているが、外国人観光客も多く訪れるエリアだ。浅草寺雷門から境内に続く仲見世商店街には活気があふれ、古き良き日本の風情を感じる。

外国人観光客も多く、浅草寺入り口近くにあるスズヤの店舗にも北米、アラブ、タイやインドネシアをはじめさまざまな国から観光客が訪れる。最近は、タイからの観光客が増えているという。

スズヤは元々、踊りの衣装やハンドバッグを販売する小売店だった。ある時、来店した外国人が土足で店に上がり着物を欲しそうに見ていたという。そこで、試しに刺繍のガウンを置いてみたところ、外国人観光客に大変喜ばれた。その様子を見て、踊りの衣裳の取り扱いをやめ、思い切って外国人観光客向けの店づくりを始めたのだという。以来25年間、スズヤは浅草の外国人観光客向けの土産物店として事業を営み続けていている。

商品を選ぶ外国人観光客

トレンドに沿った商品、品揃え

スズヤ店内には着物や甚平、Tシャツ、小物など日本的な商品が並んでいる。スズヤで販売されている着物は、土産として購入しやすい価格帯になっているとはいえ、作り手のこだわりが詰まっている。素材はポリエステルや綿など外国人にも扱いやすいもので、色・形・柄はメーカーの社員がじっくりと話し合って決めて版を作る。

また、商品の価値が分かりやすいようにとの配慮から、見やすく展示された商品それぞれに英語で書かれた温かみのあるPOPが掲示されている。着物や浴衣については、帰国後も着付けできるよう、着方を解説したリーフレットも渡している。また、漢字がプリントされたTシャツの近くには、その漢字の意味が英語で記されており、漢字の意味を理解した上で購入することができる。

観光客が購入する商品には何らかのトレンドがあるように、漢字にもトレンドがあるらしく、毎年同じ商品ばかり陳列していてはなかなか売れない。着物でも伝統的な柄を揃えているが、実際は、新しい柄が手に取られることが多い。そのトレンドを見て商品を入れ替えているのである。

オリジナルデザインの子供服

さまざまな外国語に堪能なスタッフによる親近感あるコミュニケーション

スズヤには英語、中国語、タイ語も話すことができるスタッフがいる。また、来店する観光客の母国語でできるだけ接客をしようと、スタッフが自発的に外国語を学んでいる。今では、スペイン語やロシア語などでも接客ができる。初めて耳にするような言語を話している観光客にも積極的に声をかけ、会話をするように努めている。その場で教えてもらった「ありがとう」を意味する言葉で送り出すと、とても喜んでもらえる。母国話が通じることを嬉しく思う観光客も多いためか、帰り際には笑顔が見られる。

購入した着物や浴衣などを着て浅草の街を歩きたいというリクエストにも応えて、店内での着付けもしている。その時に撮った写真をFacebookに載せたところ、自分の写真が載ったことを喜んで友人などに自慢して見せる人もいる。こうして、口コミも広がっていく。

インターネット通販の併用

スズヤでは、かなり前から外国人観光客向けにホームページを開設していたが、4~5年前からインターネット通販も始めている。ネット通販では、トラブルを避けるため、掲載情報に誤りが無いよう、とくに気を付けている。着物など衣料品については商品サイズの実測値を掲載している。

サイトからは、北欧や北米、サウジアラビアなど様々な国から注文がある。クリスマスギフトとして購入する人も多い。注文が入ると、在庫状況や配送スケジュールなどを細かに連絡する。お礼の手紙を添えたり、リピーターにはミニギフトを添えたりという心遣いもあり、ファンは確実に広まっている。

「日本にきてよかった」と、楽しい思い出を持って帰ってもらいたいという純粋な想いが、来店した外国人観光客に、“Japan is beautiful.”と言わせる。おもてなしの心であふれるスズヤは、外国人の心を掴み続けている。

企業データ

企業名
有限会社スズヤ
Webサイト
代表者
取締役社長 鈴木明子
所在地
東京都台東区浅草2-3-1
事業内容
みやげもの販売

掲載日:2015年3月 3日