売上アップ取り組み事例集
行動から学びつかむ成長の糸口。販路拡大で待ちの営業脱却(事例2回目)
文:鈴木佳文(中小企業診断士)
ひなさく堂は、駅から離れた場所に立地しており、店舗販売としては苦戦を強いられています。天候によって、お客さまの来店状況が大きく変わるため、日によってはお客さまが数人ということもあります。暇な時間でも大判焼きは作っておかなければならず、スタッフも常駐しておかなければ販売機会を逃してしまいます。そこで、店長の取った行動は『販路拡大』でした。
通信販売の開始
お店にお客さまが来ない時期に、愛情を込めて焼いた大判焼きを捨てる日々が、通信販売への発想につながりました。「冷凍すれば保存ができる筈だ!」と考え、商品品質を落とさずにお客さまに食べて頂くためにどうすれば良いかを試行錯誤で研究。通信販売に必要なさまざまなノウハウを学び、2007年4月に楽天市場に出店をしました。
短期間での商品ロスが無くなり、全国に販路が広がりました。何よりも大きかったのは、楽天市場に出店したことで、メディアに取り上げられるなどの露出が増えるきっかけにもなったことです。
以下に取りあげる業務販売や開業支援のきっかけも楽天でした。中元や歳暮、バレンタインなど、贈答用として購入するお客さまも増え、現在では販路の一つとして機能しています。
業務販売の開始
店長は、イベントや商店街の会合などに積極的に参加し、人とのつながりを作っています。PTAの父兄でなければ借りられない安全パトロールの腕章を借りられた(第1回参照)ことも、つながりが無ければ実現しませんでした。
ある時、イベントで知り合った方から「学童保育のおやつとして大量発注できないか」との問い合わせがありました。一度に数百個の発送は未体験でしたが、受注すれば、一定の売上が見込めます。しかも、店舗でお客さまが少ない時間帯を使って準備できるので、効率は高まります。
未体験の不安を乗り越え、無事納品。製品を卸す形を取るので、業務販売と名付けて販路の一つに加えました。さまざまな研究を重ねて、今では依頼が来るのを待つのではなく、積極的に販売先を探して営業活動を行っています。
開業支援の展開
ある時、楽天市場経由で「大判焼き店をやりたい」との相談が届きました。全く業界に縁の無い人が大判焼き店を行うのは困難です。大判焼きやたい焼きのフランチャイズチェーンが存在するにも関わらず、ひなさく堂に問い合わせが来た事に店長は商機を感じました。
自分自身が店を出す時も、さまざまなノウハウの習得に大変な苦労をした店長は、恩送りの意味も込めて、自分のノウハウを提供する開業支援を行うことにしたのです。現在では、ひなさく堂の開業支援を受けたパートナーショップは4店を数えるまでになりました。今は、積極的に開業支援を展開すべく、支援パッケージの更なる改良に取り組んでいます。
今回ご紹介した事例から見える、売上アップのポイントは以下の3点です。
1)視野を広げる
自店の業界や店舗だけを見ていては、得られる発想に限界があります。他業界から得られるアイディアは無いか、店舗以外の取り組みはできないか、さまざまな視点から事業を見直していくことで方策が見えてきます。悩みや困難は事業を進化させるチャンスと考えましょう。
2)人的ネットワークを広げる
最近はわずかな会費を惜しみ、商店街などの組織に参加しない店舗も多いようです。確かに、直接的に自店の業績向上につながる事は殆どありませんが、つながりが出来れば地域に根差した活動を行うきっかけになります。
地域に限らず、人的なネットワークを広げておくことは、お店を活性化させる糸口をつかむために有効な手段の一つと考えましょう。
3)失敗を恐れずに販路を開拓する
お店が上手く行かない時にリスクを取るのは怖いものです。しかし、従来と同じことを続けていたのでは、なかなか事態は好転しません。もちろん、リスクを最小限に抑えることは考える必要がありますが、これまでと違う販売ルートを開拓してみることを検討してみましょう。
商品品質に自信があった店長は、積極的に販路を広げようと工夫を重ねました。未知の分野に踏み込むのは勇気が必要ですが、今までと同じことをしていては結果が変わる事はまずありません。「行動する」と何らかの結果が見え、そこから学ぶことで成長の糸口がつかめるのです。
企業データ
- 企業名
- 有限会社ミラクル(ひなさく堂)
- Webサイト
- 代表者
- 石井直美(店長:石井裕)
- 所在地
- 東京都中野区野方6-23-13
- Tel
- 03-3338-8074
- 事業内容
- 大判焼きの製造・販売、卸
掲載日:2012年2月23日
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