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協和機電工業

海外展開と市場創造でグローバルプラントメーカーへ

協和機電工業は水処理システムや省エネ・省力化システム、生産設備のメンテナンスを主力に60年以上の実績を持つ。高度成長期に進捗著しい多くの企業の設備を支えてきた。その経験を生かして発展途上国の社会インフラの改善を目指しており、海外展開を積極的に進める。2007年には中国、2015年9月にはベトナムに拠点を設立した。さらなる成長のために、海外市場に狙いを定めた2020年までの戦略ビジョンを策定している。一方、東京工業大学や長崎大学と10年以上にわたり浸透圧発電技術の開発を続けるなど、産学連携にも積極的だ。東京オリンピックを終えて国内市場の収縮が予想される“2020年問題”に備え、「海外市場の取り込み」と「新技術による市場創造」を核に挑戦を続ける。

  • 競合他社との連携
  • 推進する海外展開
  • 産学連携による浸透圧発電の開発

海外展開は2003年、中国広東省深圳市に「中国深圳エンジニアリングセンター」を開設したのが始まり。設計・生産工程を底上げして、日本国内における受注量を高め競争力をつける目的があった。中国人設計者のスキルも年々向上し、2007年には「協和環保科技」を設立。現在は営業担当を含めた50人体制で主力事業の水処理機械や制御盤などの製造販売を行う。

GDP伸びると水処理需要も拡大

同社の2014年度連結売上げは約120億円。中国の売上げは2億5000万円と規模が小さいが、ここ3~4年は黒字で成長を続けている。その理由について坂井秀之社長は、「中間所得層が増えたことで環境意識が高まり、政府や工場が対応する必要が出たため」と分析する。中国でバブルが弾け全体の輸入量が減ったとしても、水処理を含む環境分野は追い風になるという。

坂井社長が各国の発展段階を判断するのが、1人当たりの国内総生産(GDP)だ。日本も高度経済成長を経験して例に漏れず公害問題などが発生した。坂井社長は「成長の時代が異なるだけで浮き彫りになる課題は同じ」と話す。例えばベトナムやカンボジアでは飲み水の確保が課題。GDPの数値が高くなるほど高度な水処理システムを求めるようになる。

中国では家庭や工場排水に特化した水処理事業を行う。売り上げの8割が水処理システムの受注だ。9月にはさらなる収益の増大を目指してベトナムに拠点を開設した。労賃の低さを背景に中国向けの設計をベトナムに移管するためだ。今後も官民共同でマレーシアに法人開設を図るなど展開を続ける。

水処理のプラントシステム

同業他社や大学と連携

中小企業は大手に比べ資本力に劣る。日本ブランドだけに依存した安易な海外進出では、経営の土台すら揺らぐリスクがある。事実、日本や欧米で途上国の留学者が先端技術を学ぶことで、途上国の技術力が押し上げられている。日本ブランドが発揮できるのは商品価格の1割程度で、それ以上に価格を設定すると現地企業に取って代わられるという。

そこで推進するのが同業他社との業務連携だ。坂井社長は「“オレが、オレが”の経営姿勢ではリスクが大きい」という。業務連携した清本鉄工(宮崎県延岡市)は、中国北部の大連市で水処理システムの事業を行う。一方で、協和機電工業の中国拠点は中国南部の深?市にある。中国市場というパイを奪い合うのではなく、南北の情報交換を行い、共存共栄を図ることで成長を遂げている。

海外展開と並行して進めるのが産学官連携。新技術を生み出すことによる市場創造が目的だ。同社は10年にわたって東工大、長崎大学と共同で浸透圧発電の実証試験を重ねる。10年には福岡市内の設備を利用して、水と淡水間の浸透圧で水流を発生させタービンを回すシステムに成功した。現在は8キロワットで発電量が小さい。そこで海外の規模が大きい試験場に場所を移し、100キロワット程の小規模商業発電所を目指す。

新技術の開発は商業化には至っておらず、全てが順調には進まない。だが社長が前向きに取り組んでいる姿勢を示すことで、社員も一生懸命業務に取り組む。結果として日本国内の受注も収益も伸びている。今後も技術力と戦略によってグローバルプラントメーカーを目指す。

One Point

連携に活路

海外売上比率の向上に向けて中国と並行して東南アジア市場の取り込みが必須だ。だが中小企業単独では限界がある。同業他社との連携だけでなく、中小企業の環境ビジネスを支援する産学官ネットワークの九州環境産業プラザなどと連携も強めていくことが重要だ。

企業データ

坂井秀之社長
企業名
協和機電工業株式会社
Webサイト
法人番号
7310001000473
代表者
坂井秀之社長
所在地
長崎県長崎市川口町10-2
事業内容
システム設計(水処理・産業機械・廃棄物処)、機械関係(水処理機械・産業機械・プラント設備工事)