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「日本FC企画(名古屋市)」燃料電池の試験受託が好調
この記事の内容
- エネファームと燃料電池の開発技術を礎に設立
- 燃料電池の発電評価試験受託が好調
- ドローンの飛行時間延伸技術開発にも着手
東日本大震災に伴う原子力発電事故の発生で、太陽光や風力など再生可能エネルギーという分散型電源の必要性が求められるようになった。停電対策としても、工場などでの自家発電や家庭用の燃料電池コージェネレーション(熱電併給)システムなどが注目を集めている。
日本FC企画は、堀美知郎取締役会長が時代の要請に応えようと、エネファーム(家庭用燃料電池コージェネレーションシステム)の開発部長を務めた大手メーカー時代と、退職後の大学教授時代に心血を注いだ燃料電池の開発・評価技術を基盤に2014年、65歳で設立したベンチャー企業。燃料電池の発電評価試験装置の開発・販売と、性能評価試験業務の受託という特殊技術を持つ世界でも希少な存在だ。
堀氏は大学で燃料電池を研究する工学部の教授を務めていた02年、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の燃料電池研究分野の技術委員に招かれている。05年にはNEDOで自動車用燃料電池の高分子膜の品質を評価するため、JIS規格に相当する基準を策定するプロジェクトチームのリーダーにも就いた。
この時の研究・開発が、日本FC企画立ち上げの礎になった。堀氏が同社で開発した低温型固体高分子形燃料電池の発電評価試験装置は、電池を構成するセルの問題点と改良方法を特定できるという。
しかし、目まぐるしく変わる時代のニーズは堀氏を新たな事業分野に導く。燃料電池自動車の開発・商用化や水素ステーションの整備が進められたことで、水素タンクの性能向上も議論の焦点になってきた。堀氏はこれまでの技術を応用して、水素自動車に搭載する水素タンクの品質をマイナス80度の環境下で調べる「超高圧水素材料強度試験装置」を開発し、特許も申請した。堀氏は、自社の強みであるマイナス80度での試験環境設定理由をこう説明する。
「水素には、北海道などの寒冷地で自然にあるマイナス30度の環境で充填し、時速100キロメートルで(高速道路を)走るとさらに50度下がる特性があることによる」
堀氏が日本FC企画の代表取締役に選んだのは、大学の堀研究室で特別研究員だった大野由佳博士(工学)。
大野氏の行動力で、強度試験受託業務の業績は好調。燃料電池試験装置の売り上げも堅調に推移して、創業以来3期連続で黒字の見込み。来期は水素タンク試験装置の発売を控えている。
大野氏は「大手メーカーが事実上独占している燃料電池市場と異なり、水素市場では大小さまざまな企業がステーションやタンク開発に参入している」と話し、水素燃料関連市場のシェア獲得に意欲を見せる。
同社は、ドローン用の燃料電池開発にも着手した。市場に出回っている主なドローンは、リチウムイオン2次電池で約15分しか飛ばないため、アルミを使った5リットル水素タンクで約2時間飛ばす技術を他社と共同開発している。すでに試作段階に近づいており、長時間飛行が可能なドローンを活用し、撮影した画像を解析する企業のデータ収集をはじめとする事業にも貢献する構えだ。
中小機構のインキュベーション施設であるクリエイション・コア名古屋への入居は創業1年後。両氏は「設備が整っていて、試験装置を置けるのが利点。当初は資金を借り入れることなく展開しようと思っていたが、借りた実績と返した実績があるのは大きいと速田義博IM(インキュベーションマネージャー)に教えられ、資金計画を見直せた」と振り返り、経営のイロハを学べたことを好感している。
企業データ
- 企業名
- 日本FC企画
- 設立
- 2014年4月
- 資本金
- 500万円
- 従業員数
- 2人
- 所在地
- 名古屋市守山区下志段味穴ヶ洞2266—22 201室
- Tel
- 052・726・3022
- 事業内容
- 燃料電池の部材の企画開発・販売および性能評価
- 取締役会長
- 堀美知郎氏
- 代表取締役
- 大野由佳氏