備えあれば憂いなし、BCPのススメ
リスクと向き合い人と技術を育てる「ニシハラ理工株式会社」
2020年 2月26日
東京都武蔵村山市を拠点とし、半導体・電子部品向けのフープめっき(コイル状のアルミ材などへの連続めっき)を強みとして展開しているニシハラ理工。2003年に顧客からBCPに関する取組調査票を受け取ったのとほぼ同時にメインバンクにもグローバル戦略におけるBCPの必要性を強く助言され05年、管理者級4人でBCP策定に着手した。防災対策から始めて06年にBCP災害対策マニュアルを作成。09年に中小企業BCP策定運用指針に基づいた事業継続計画を策定した。18年には、災害対策の再見直しで東京都のBCP策定支援事業を活用している。
生産拠点を分散
同社は本社のある武蔵村山市以外にも、埼玉県入間市に狭山工場、佐賀県三養基郡に佐賀工場を持つ。1969年に新設した狭山工場は生産機能と技術開発の拠点。佐賀工場は得意先の九州進出に合わせて84年に新設した。
同社が取り扱う製品のほとんどは認定品と呼ばれるもの。客先の多くの試験や検査に合格して採用される。災害時に自社工場が操業不能となった場合、他社に代替生産は依頼しにくいため、武蔵村山工場と狭山工場でできることは、佐賀工場でもできるようにして事業継続リスクを軽減している。
狭山工場と佐賀工場にコンピューター・サーバーを設置し、事業活動で発生するすべてのデータを同時に記録することで、どちらか一方がデータを喪失しても、もう一方で事業を継続できるようにしている。非常時のコンピューター稼働に必要な電力の供給には、ポータブルガス発電機で備えている。
めっき業では、毒物・劇物など化学物質を多く扱う。同社も災害時の流出防止、原液や排液の混合による有毒ガスの発生防止に、自社開発設備による生産ラインや倉庫保管などで特別の工夫や対策を講じている。
従業員の安全対策では設備機器の補強工事や建物への固定化工事を実施。水や食糧を備蓄するほか、非常用の簡易トイレ・テント、毛布も備えている。
セキュリティ会社の安否確認サービスも利用している。震度5強以上の地震発生時に、全従業員に安否確認メールを自動送信し、応答しない従業員を即時リストアップする仕組みだ。
前述の狭山工場の耐震・耐荷重工事は、東日本大震災の2カ月前に完了。西原社長は「工事前の発生であれば被害も少なからず出た可能性がある。改めて先手の対応が大事だと感じた」と振り返る。本社工場は計画停電のエリアにあったが、停電時間帯の勤務シフトを変更するなどBCPに基づいて乗り切っている。
TPM活動が事業継続に貢献
機械設備は壊れてから修理することを当たり前としていた同社の体質が大きく変わったきっかけが、04年に取り組み始めたTPM(トータル・プロダクティブ・メインテナンス)活動だ。
TPMは全員参加型の生産保全活動を意味し、生産性向上を目的として設備を計画的に維持・更新する取り組み。設備機器を常に最適な状態に保つため、メンテナンスを定期化する予防保全の考え方を重視する。現在は向こう10年間の設備更新計画を作成し、評価・見直しを毎年行っている。
狭山工場の改築もTPMの一環であるほか、災害時の薬液流出など2次災害も防止する仕組みを構築するなど、TPMが同社の事業継続に貢献する部分は大きい。TPMの効果で機械故障は6割減、良品率も飛躍的に改善し、生産性が3倍近く向上したという。
他方、同社が独自に開発しためっき技術は先輩技術者から後輩技術者にしっかり受け継がれる必要があるため、社内に設けた学習の場「ニシハラものづくり塾」で技能承継に努めている。
企業データ
- 企業名
- ニシハラ理工株式会社
- Webサイト
- 資本金
- 7620万円
- 従業員数
- 約180人
- 代表者
- 西原 敬一 氏
- 所在地
- 東京都武蔵村山市伊奈平二丁目1番地の1
- 創業
- 1951年(昭和26年)
- 業種
- 金属製品製造業(めっき業)