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「FUKUDA」業界初、潤滑油を量り売り
この記事の内容
- 独自開発のローリー車で顧客先の専用タンクに充填
- ドラム缶、ペール缶不要で環境に配慮。コスト削減も
- 同業の注目を集め、フランチャイズで全国展開も
エンジンオイルの使用量が少ないハイブリッド車、オイルを使用しない電気自動車の登場により、自動車潤滑油市場は今後も成長しない。だが、市場がなくなることはないから、生き残ることでシェアは取れる─。潤滑油卸売業、FUKUDAの福田喜之代表取締役社長はこう強調する。
生き残りの鍵となるのが、独自に開発した「IBCローリーサービス」だ。このサービスは、顧客先に同社の専用タンクを無償で設置し、IBCと呼ばれるタンクを搭載したローリー車両で顧客を定期的に巡回し、使用した分をホースで補充していく。いわばオイルの「量り売り」だ。ドラム缶などの容器が不要になり、廃棄物を減らせるので地球環境の保全にも役立つ。IBCはリターナブル容器と認められたことで、2013年には自動車潤滑油の販売方法として初めてエコマークの認定も受けた。
ちなみに、IBCとはインターミディエート・バルク・コンテナの略で、国際基準の中型容量コンテナのこと。
通常、ホームセンターや修理工場、カーショップ向けなどの自動車・二輪車オイルは、200リットル入りドラム缶や4リットル・20リットルペール缶などで納入する。ただ、200キログラム以上のドラム缶を運搬するには納入先にも重労働。使用後の缶は素材上からリサイクルも難しい。産業廃棄物収集運搬の許可を持ち、使用後の缶の処理も引き受ける同社としては、缶の廃棄の問題もある。さらに、原油高、鉄鋼製品高という逆風が吹く中で、「コスト増分を価格に転嫁できない」(福田社長)状況が続いた。
缶を使わないローリーサービスは「オイル料金の5〜10%を占める容器のコストを削減できる」ほか、発注のための事務処理も不要。2012年から始めたところ、「ユーザーは現在までに約450件に達した」(同)。
父親が創業した潤滑油卸売業を2006年に引き継いだ福田社長は、経営改革に乗り出す。地元の京都を中心に、近畿2府4県にエリアを絞った地域密着型の営業により、顧客は3,000件以上と約3倍に拡大していた。ただ、ホームセンターなどの量販店向けが7割、残りが近畿地域のカーショップ向けだったが、量販店向けの収益は厳しい。そこで、この比率を逆転しようと「小規模なショップなども地道に営業し、ライバルが少なかったこともあって成功した」(同)。
新サービスは、これに続く生き残りのための経営改革だ。
ローリー車両台数は現在2台だが、その効果は経営面にも表れている。今年7月期決算では、新サービス導入前に比べ売上高増加に加え、粗利益率が「2ポイント以上向上した」(同)。それも、コスト削減分の一部を「顧客先に値下げした」うえでの数字だ。
ローリーサービスは、今年2月に国の新連携事業計画に認定された。ビジネスモデルだけでなく、エンジンを停止して給油する電源システム、計量器付きポンプ、残量検知システムなどを開発する。電源システムは危険物を扱うだけにアイドリングなしで給油するため。残量検知システムは、専用タンクに発信機を付けて顧客先のオイル残量を自社で集中管理する。
ローリーサービスの新分野として期待しているのが、機械用潤滑油の工業用途だ。生産現場でも潤滑油の調達では自動車などと同様の問題を抱える。新規需要開拓に向けては、新連携の認定を受けたことで中小機構の支援で出展した展示会で大手企業と出合い、具体的な商談に入っている。
福田社長は「現在は四輪車向けだが、来年には二輪車用、さらに工業用を含め、ローリーサービスの件数を全ユーザー3,300件の半分にしたい」と意気込む。
さらに、新しいビジネスモデルは同業他社の注目を集めている。「一緒にやりたいという話もきており、フランチャイズ方式の全国展開も考えたい」としている。
企業データ
- 企業名
- FUKUDA
- 資本金
- 1,000万円
- 従業員数
- 20人
- 創業
- 1969(昭和44)年9月