中小企業応援士に聞く
3兄妹の若い経営陣に世代交代 イノベーションを追求【株式会社中原製作所(岡山市中区)会長・中原健一氏】
中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。
2023年 2月 27日
1.事業内容をおしえてください
航空機設計技師であった私の父・中原希世士が1948年2月に岡山市で独立・創業した。主力は、新聞輪転機や枚葉印刷機部品といったローラーを中心とする機械部品の製造。このうち新聞輪転機は、新聞を高速で、しかもわずかなシワやよれも作らずに印刷することが求められる。ここで当社の技術が磨かれてきた。薄いものをロールで巻き取るというプロセスは、機能性フィルムや食品、リチウムイオン電池などの製造工程にもあり、印刷関係の技術を活用する形で、それらの製造装置部品も手掛けることとなった。
また、私の社長就任(2013年)後の2016年に5軸加工機を導入。これは、直線軸XYZの3軸に2軸の回転傾斜軸を追加し、より柔軟な加工が可能となるもので、導入以降、産業用ロボットなどの部品加工事業を本格的に開始した。
2.強みは何でしょう
創業当初から新聞輪転機や枚葉印刷機のローラーを製造してきたことで磨いてきた技術が強み。2008年のリーマンショックを機に、新聞・書籍のデジタル化がいっそう進展したことなどで印刷関係の国内市場が縮小した。しかし、創業以来、鍛えてきた当社の技術を応用し、他分野への展開を進めることができた。また、多品種小ロットの単品加工を得意としつつ、工場の自動化を進めたことで量産にも対応できる。
同業他社や他業種の企業と連携することが当たり前だというカルチャーを有している点も強みだ。1963年12月に現在の工業団地に居を構えて以来、近隣の製造業と協力して仕事を行うという経験の積み重ねがある。さらに「つながれ!オープンイノベーションプロジェクト」を2018年に開始した。これは工場を「展示場」として開放するもので、工場を訪れた企業とつながりを持ち、事業の拡大につなげたいと考えている。2019年8月には、5軸加工機でどういった加工ができるのかを実際に見てもらおうと、5軸加工機のメーカー、DMG森精機と共同で展示会を開催。会場となった当社の工場には2日間で200人以上が訪れた。
さらに、早い段階で世代交代を行った点も挙げられる。創業70周年の2018年、私が60歳になる2022年に社長の座を長男(中原健太郎氏)に譲ることを早々に宣言した。その宣言どおり昨年1月、私は会長職に就き、長男が社長に就任。さらに次男(康太郎氏)が代表権を持つ専務に、長女(さくら子氏)が執行役員経営企画室長になり、3兄妹による若い経営陣が誕生した。宣言から数年かけて事業承継を完了させたことで、60代以上のOBたちが現役世代に対して効果的に助言する体制を保持しつつ、20~40代の若い世代を中心として安定した組織運営が行うことができている。
3.課題はありますか
現在は、先達の努力の積み重ねのおかげで仕事が常にあるのだが、現役世代(20~40代)にとっては、そういう状態が当たり前になっている。新たな仕事を企画して自ら生み出す熱意を持っていないのではないかということが課題。また、現役世代は新しいものづくりへ挑戦する意欲がまだまだ乏しいように感じる。
コロナ禍で途絶えかけている、人と人とのリアルでの関係づくりも考えていく必要がある。お客様とも、社員とも、どのような関係づくりを行っていくか。とくに社員に関しては、さまざまなライフスタイルに合わせた働き方を受け入れるなど企業側もどんどん新たな取り組みに挑戦していくことが必要だ。
4.将来をどう展望しますか
印刷関係で鍛えたローラー技術をフィルムや食品分野など他のローラーに横展開する戦略を「インバウンド(技術探索)」、他社との連携でローラー以外の加工分野に進出する戦略を「アウトバウンド(技術提携)」と位置付け、オープンイノベーションを通じてアウトバウンド戦略を進めている。しかし今や、それすら古い形になってきている。引き続き他社との様々な連携の形を模索し、常識にとらわれないイノベーションを追求していきたい。資源の少ない日本では、ものづくりの力が大事。大手・下請けのような上下関係ではなく、緩やかに企業同士がつながってチームを組めることが日本企業の強みだと思っている。
また、当社の固有の技術であるローラー技術をさらに極めていきたい。ハンバーガーと言えばマクドナルド、牛丼と言えば𠮷野家、という具合に、ローラーといえば中原製作所、と思ってもらえるようになりたい。
5.経営者として大切にしていることは何ですか
まず、経営者は一人で悩まないことが大事。中小機構や他の公的機関などを有効に活用すべきだ。たとえば、当社は中小機構が実施しているハンズオン支援を通算で2年間にわたって利用したが、派遣されてきたアドバイザーは、当社の改善点をはっきりと指摘してくれたし、大企業での技術やノウハウの伝承の方法を学ぶこともでき、とてもありがたかった。また当社の事業承継に際しては、公的な投資育成機関である大阪中小企業投資育成(大阪市北区)に相談して情報を提供してもらった。当社は長男が承継したが、親族内承継がいい会社もあれば、M&Aが合っている会社もあるはずなので、とにかく各種の機関を活用して経営者自身が勉強し続けなければならない。
その事業承継についてだが、他の経営者にはどんどん次世代に事業承継を進めていこうという話をよくしている。上の世代には、社長の座に居座るのではない、他の支え方があると思っている。
さらに、当社の社員にもよく言う話だが、できない理由を探すのはやめて楽しいことを自らつかまえにいくことが大事だと思っている。当社のパンフレットやホームページに記載しているように「人生いつだって楽しい‼」と感じてほしい。
6.応援士としての抱負は
2020年に委嘱されて以降、中小機構中国本部のハンズオン支援事業大会で事例発表したり、中小企業応援士の立場で地元エフエムラジオ局に出演したりしてきた。これからも、私でよければ、いつでもどこででも、自分の経験や思い、中小機構の施策を使ってみての感想などを話していく所存だ。
企業データ
- 企業名
- 株式会社中原製作所
- Webサイト
- 設立
- 1948年2月
- 代表者
- 中原健太郎 氏
- 所在地
- 岡山県岡山市中区乙多見463
- Tel
- 086-279-1221
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