生産性向上に取り組む企業事例
店頭と変わらないおいしさを、パック詰めスムージーで届ける 製造機を一新して高速充填・冷凍を実現【有限会社ベビブレ】(岐阜県各務原市)
2022年 5月23日
「バナナ×セロリ×ケール」「かぼちゃ×シナモン×さつまいも」。いずれも、ベビブレの店頭で飲めるスムージーの味だ。店頭で飲めるだけではなく、パック詰め商品としてお取り寄せできる。人目を惹くカラフルさが特徴で、企業とのコラボイベントなどでも声がかかってきた。2020年にECサイトを開始。高性能機械を導入していたことが、コロナ禍でも新たな販路を切り拓いていく後押しとなっている。
フリーズ保存できるパック詰めスムージーの開発
野菜と果物を使用したスムージー専門店「ベビブレ」は、他業界で働いていた代表の小島さんが、飲食に関わる事業をしたいと2007年に立ち上げた会社だ。飲食業といっても多様な選択肢があるが、健康に役立つ事業をしたいとスムージーに注目した。
ベビブレのスムージーは、野菜や果物をそのまま使い、牛乳ではなく豆乳を活用。甘味はオリゴ糖とはちみつを使い、合成着色料や保存料は一切用いていない。有機栽培をしている野菜農家と契約し、食の安全・安心にもこだわる。
店頭ではこれを、その場で飲めるストロー付カップで販売する。そして、同じ品質、同じ味をお持ち帰り・お取り寄せ用にも展開する。使っているのは密封型のドリンクパックだ。高品質でフリーズ保存できる製法を用いることで、鮮度そのままに賞味期限を長くできるようになった。今は2年の賞味期限で販売している。
パック詰めスムージーを手掛けだしたのは2017年だ。冷凍商品として届け、必要なときに必要なだけ解凍して飲んでもらえる商品として、設立10周年のタイミングで手掛け始めた。
実はこの数年前から、スムージー愛用者がブームのように広がっていたことも事業拡大を後押ししている。美容にも健康にもよい飲み物として、口にする人が増えたのだ。雑誌特集やレシピ本なども増えていた。ベビブレにもさまざまな相談があり、企業へのケータリングや、イベントでの告知・販売などの依頼も相次いできた。
充填機と冷凍機の一新で、生産性が格段に向上
ケータリングやイベント出店が増えると、まとめて多くの数をつくる必要が出てくる。実はこの時点ではまだ、パック詰めは手作業でおこなっていた。製造力の強化が事業拡大のスピードを左右することが見えてきたなか、新しい機械の導入を考えるようになった。
具体的な用途と事業展望を示して「ものづくり補助金」が得られたことで、機械購入が現実的となった。そこで導入を決めたのが、充填機と急速冷凍機である。パック詰めスムージーをつくるには、店頭と同じ要領で材料を攪拌し、それを容器に充填して急速冷凍する。攪拌後のプロセスをできるだけスピーディーにおこなうことで、鮮度を落とさず、おいしさをそのまま封じ込めることができる。「店頭に出すときの状態で瞬時にパック詰めして、急速に凍結できるので、おいしい状態のままお届けできるんです。生鮮食品の冷凍にも使われるような、高品質な機械を選んだのですが、このタイミングで機械を入れられてよかったです」と小島さんは語る。
充填の作業効率が格段にあがったことで、製造過程の生産性も大いに改善された。機械を購入するときには、さまざまなメーカーの機械を比較し、実際に触って本当に使い勝手がよいものを選んだという。手作業がいらない機械ほど値段は多少あがるが、生産性向上は売り上げと直結する。現在、ECサイトを通じて多様な商品を販売できているのも、このときの製造強化があってスムーズに進められている。高性能の急速凍結庫を導入したことで、食品品質を保ち栄養素を壊さず長期保存できるようになったのも大きい。
コロナ禍にもチャレンジを続け、ECサイトの拡大へ
べビブレの創業期までたどっていくと、ここまでの過程がすべて順調に進んできたわけではない。創業当初は岐阜に店舗を構えたが、なかなか軌道に乗らず1年程度で閉めることになってしまった。そこで店舗にこだわらず、キッチンカーでの販売をはじめた。近隣のイベント会場へ出店するとともに、東京にも遠征して売り始めたのだ。東京での最初の活動は、週末に開かれている青山ファーマーズマーケットである。そこで手ごたえを感じたのは、東京の人の多さとトレンドに敏感な層の存在だ。スムージーブームもあいまって、大行列ができるほどの活況となり、毎週末の出店へとはずみがついた。
そこから商業施設への出店話があり、マロニエゲート銀座(出店時はプランタン銀座)に店舗をオープンした。店舗経営は順調に進み、中国でもライセンス契約で3店舗を構えるようになった。企業とのコラボ企画なども増えてきたのが2018年、2019年のころである。しかしそんな折に直面したのが、今回のコロナ禍だ。もともとインバウンド観光客の効果が大きかったこともあり、店舗売り上げは激減してしまった。
またも困難に直面することとなったが、コロナ禍でも事業を発展し続けられたのは、パック詰めスムージー事業であった。2019年に機械を導入していたので、安定的に製造できる状態がつくれていた。そこに、かねてから検討を進めていたECサイトをオープンして、店舗とは別の売り上げをつくることができたのだ。ECサイトの立ち上げには、手軽に開設できるサービスを利用した。大変なときこそ挑戦していこうというのがベビブレのモットーだ。店舗もコロナ禍のなかでリニューアルし、持ち帰り商品が目立つようなレイアウトに変更している。
スムージーは、朝食として、フィットネス後の飲料として、あるいはギフトとして、さまざまな場面で飲めるドリンクだ。パック詰めタイプは保冷庫があれば長く置いておけるので、オフィスの片隅に置いて働く人に手に取ってもらったり、病院の売店に置いて妊婦さんの食事代わりに使ってもらったりできないかと、考えが広がる。
過去には、日清オイリオとのコラボで、フルーツミックスボウルを共同開発したり、腕時計ブランド「Swatch」とのコラボでカラフルな腕時計にあわせたオリジナルスムージー提供などをおこなったり、企業とのコラボレーションも複数おこなってきた。今後も企業連携を意欲的に考えるとともに、各地のご当地野菜や果物を使ったプレミアムスムージーの商品開発、地域連携もしてみたいという。「何をやるにも体が資本なので、健康に役立ち、おいしく飲める商材として今後もやっていきたいと思っています。お店で飲むだけではなく、家庭やオフィスで、手軽に口にできるものですからね。新しい連携活動もぜひ進めていきたいです」と今後の展望をもちながら事業を進めている。
企業データ
- 企業名
- 有限会社 ベビブレ
- Webサイト
- 設立
- 2007年
- 従業員数
- 10人
- 代表者
- 小島央之 氏
- 所在地
- 岐阜県各務原市那加前野町1丁目92番地1