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「暮らし」起点のSSTでは、企業連携による新サービスが続々誕生【パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長・山本賢一郎氏】<連載第2回>(全4回)

2021年 2月17日

山本 賢一郎(パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長)
山本 賢一郎(パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長)

産官学連携のもと、IoTなどの先端技術を活用して持続可能な街づくりを推進するパナソニック株式会社の「サスティナブル・スマートタウン(SST)」について、プロジェクト責任者の山本賢一郎氏にお話を伺う本連載シリーズ。第2回では、SST特有の開発プロセスや具体的な連携事例を紹介します。

SSTに見る「コト」発想の街づくり

日本における分野横断型スマートシティの先駆けとして多方面から注目を集める「サスティナブル・スマートタウン(SST)」。連載第1回でも触れた通り、その特徴の一つは、モノではなく「人々の暮らし」を起点とした「コト」発想の街づくりにあります。「Fujisawa SST(以下、藤沢SST)」では、まず藤沢市とパナソニック株式会社の間で「地域の課題を解決し、エコ&スマートな暮らしが持続する街」という目標を設定し、続いて「生きるエネルギーがうまれる街。」というコンセプトを決めました。

「その上で、再生可能エネルギー利用率30%以上、CO2排出量を1990年比で70%削減、非常時も3日分のライフラインを確保といった数値目標を決定。太陽光やエネファームでの発電設備、蓄電池との連携による非常電源、全住宅のスマートハウス化といったインフラ整備を進めていきました」

2014年に神奈川県藤沢市に誕生した藤沢SST
2014年に神奈川県藤沢市に誕生した藤沢SST

介護、物流の課題解決につながるサービスを開発

SSTでは、パートナー企業同士の連携による製品・サービス開発も進んでいます。例えば、この藤沢SSTでの開発・実証を経て、パナソニックと学研グループの連携による「エアコンみまもりサービス」が事業化されました。同サービスは現在、パナソニックを介して日本各地の福祉・介護施設などに導入されています。

「エアコンとセンサーを組み合わせることで、居住者の室内環境と生活リズムを見える化し、福祉施設などのサービス向上とスタッフの負担軽減を同時に達成します。全国各地でサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)※を運営する学研グループと1年ほど意見交換をしながら藤沢SSTでサービスを形にし、1年間の実証を行った後に全国に展開しました」

同様に、ヤマト運輸との連携では「まとめて配送・オンデマンド配送サービス」を開発しました。物流過程での環境負荷低減や配送の効率化などを実現するこの新サービスでは、IT管理を行いながらSST宛の物流をヤマト運輸が一元化。ラストワンマイルは電動自転車などで配送します。各戸のテレビなどに宅配予定のプッシュ通信が入り、不都合があれば配送時間の変更も行える仕組みです。

※マンションのように独立した住居で自由度の高い生活を送りながら、各種生活支援サービスが受けられる高齢者用賃貸住宅。

SSTで多くの共同開発が成功する理由

藤沢SST内では、なぜいくつもの共同開発が成功しているのでしょうか。

「パートナー企業には、持続可能な街づくりを通し、社会課題を解決するというSSTの理念を共有した上で参画いただいています。さらに各社の担当者が熱意をもって社内をまとめ、現場から経営層までが重要なプロジェクトと認識いただいていることも特徴。当社もそれに応える体制作りに力を入れています」

SSTでは、取り組むテーマごとの協議会を定期的に開催。パートナー企業同士が随時、意見交換できる共通プラットフォームも整備され、そこから連携のアイデアが生まれることもあるそうです。

藤沢SST以外にも現在、神奈川県横浜市、大阪府吹田市でそれぞれSSTが進行中。さらに次のSSTも検討しているといいます。次回は横浜・吹田両SSTでの取り組み内容や連携先の決定方法、連携先に求める要素などについて紹介します。

連載「「サスティナブル・スマートタウン(SST)」を新たな価値創造の舞台に」

山本賢一郎(やまもと・けんいちろう)
パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長

1990年4月、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)入社。以来、社内で一貫してB to B事業分野を担当する。パナソニックシステムソリューションズ社首都圏本部や、本社の建設事業推進本部、設備事業推進本部などにおける多彩なチームをリーダーとして率いた後、2016年4月に本社ビジネスソリューション本部企画・開発担当総括に就任。2018年10月より、同本部CRE事業推進部部長およびFujisawa SST協議会代表幹事を務める。

取材日:2020年12月14日