BreakThrough 企業インタビュー
ものづくりの工程で直面する課題をお客様と一緒に検討・解決することで、日本のものづくりを応援したい【株式会社MTI.Network】
2018年 11月 29日
summary
ものづくりの開発・製造工程のサポートをワンストップで!
お客様の要望に適した設計・試作・評価をご提案
株式会社MTI.Networkは、エイキット株式会社(主たる評価技術サービス事業と加工技術サービス事業を展開)で、技術開発支援と受託評価のサービスを行ってきた一部門が前身となる。2017年、ものづくりの開発・製造工程において新しい技術を検討・導入する際に必要な設計・試作・評価をワンストップで提供できる企業を目指して分社化した。製造業におけるものづくりの開発・製造の工程をサポートする企業としてスタートしたわけだが、分社化のきっかけや具体的な事業内容、企業とどのような関わり方をしているのかを野原社長に伺った。
分社化のきっかけ
株式会社MTI.Networkがもともと所属していたエイキット株式会社は、技術開発支援や治工具の設計・製作、部品や材料に対して要求される分析・試験・計測などを行っていた。扱う治工具は幅広く、鋳造・加工・熱処理・メッキ・溶接・塗装・組み立て・検査などの製造工程で使われる治具から、取付け具・固定具およびそれらを使って各種工作をするための取付け用工具・切削用工具まで含まれる。
顧客から開発支援や部品評価関係の依頼を受ける中で、顧客の不満の声を何度も耳にしていたことが分社化のきっかけだと野原社長は言う。
その不満とは、新しい工法・技術を提供するメーカーが個別に動くため連携がとれておらず、非効率なことが多いということだ。新しい工法・技術の導入検討を行う場合、顧客はいくつものメーカーとやりとりをする必要があるが、例えば加工メーカーは加工のことだけ、装置メーカーは装置を販売するだけの対応となり、顧客が最終的な目的とする工期の短縮や品質の向上を実現するという意識が少なく、貴重な時間と経費を浪費しているという事実だった。
そこで、野原社長は顧客の目的・要望に合わせて設計から評価までの工程をすべてつないで管理することで、工期の短縮・品質の向上・工程の最適化・コスト削減を実現することができると考え、独立した事業体とすることを決意した。
株式会社MTI.Networkのワンストップサービスとは
お客様目線のワンストップサービスの提供が同社の目指すところだが、ワンストップとは一か所で最初から最後までできることをいうが具体的にはどんなものになるのだろうか。ワンストップの事例を訊いてみた。新しい分野や課題に取り組む際に、技術的な知見が不足しており、社内に協力者もいないため適切な設計や検証が出来ない顧客が対象となる。顧客から目的・要望をヒアリングして、装置選定・設計・試作・加工・評価に至るトータルのサポートを行う。工程の一部を外部のメーカーに委託する場合は、メーカーの選定・手配・管理まで行う。
ものづくりの幅広い分野への対応、開発・製造工程に対する柔軟な支援体制の構築を目指し取り組む
作業的な工程のサポート以外にも顧客の状況や要望に合わせた柔軟な対応を心掛けている。装置の購入を検討されている場合は要望に合わせたメーカーを選定し手配する。設計や評価において必要となる試作品や試験体を製作する時間が無く困っている場合は、顧客に代わって作製を請け負うこともある。顧客にとっては、自社目線でものづくりに関するアドバイスも受けられ、開発にかかる時間が短縮でき、人員不足もカバーできることになる。
ものづくりにおいて材質・形状・加工方法などの検討すべき項目は多数あり、網羅すべき技術分野の幅は非常に広い。技術サポートは加工メーカーや装置メーカーからの情報の収集・提供だけでなく、大手自動車部品メーカーの開発系のエンジニアや材料メーカーの出身者、大学の先生などの顧問からなる技術部隊によって技術的な支援ができる体制となっている。
協業メーカーとしては治工具の設計・製作、金属・セラミック・樹脂加工、金型の設計・製作(樹脂・プレス・ゴム)、試作成形、試作金属プレス加工、試作ゴム加硫成形、熱処理、表面処理、ロウ・はんだ付け、CAE解析と幅広い。装置メーカーとしては加工装置、製造装置、評価装置などのメーカーとの繋がりも多い。
評価エリアでは様々な機器を揃えている。分析用として走査電子顕微鏡、元素分析装置、イオンミリング装置、マイクロスコープ、X線CT装置、大型バンドソー、ファインカッター、研磨機、ドラフトチャンバー、試験用として引張圧縮試験機、衝撃試験機、高速度カメラ、リークテスター、恒温恒湿槽、高温槽、データロガー、計測用として三次元測定機、表面粗さ・形状測定機、レーザースキャナー、工具顕微鏡がある。さらに、エイキット株式会社の受託評価部門とは技術者・装置を共有しており、短納期や数量が多い場合でも柔軟な対応が可能である。
装置メーカーや加工メーカー単独では対応が難しい、新技術を検討・導入する際に必要となる装置選定・設計・試作・評価などの様々な工程を支援できる体制を整えたことが、同社の最大の強みと言える。
自由な発想と他との連携で広がる分野
現在は自動車のガソリンエンジン回りの部品や、自動車の新しい動力源となるモーター関連、燃料電池関連の依頼が増えているという。また、ファイバーレーザー加工に関しては、光産業創成大学院大学が主導する「レーザーものづくりセンター」に参画し、レーザーの活用を支援する活動にも取り組んでいる。
2019年3月からは会社内に「ラボエリア」を設ける予定だ。ラボエリアにはラボルームとレンタルルームがあり、ラボルームには購入した加工機の他にもメーカーのデモ機も設置され、様々な加工のトライを実施することができる。レンタルルームでは顧客が購入した機械を持ち込むことができ、自社内ではできないようなトライアルも行うことが可能となっている。さらに、評価エリアがラボエリアに隣接しているため、加工後のサンプルをスピーディーに評価して加工方法や条件にフィードバックすることも可能である。
あくまでも顧客のものづくりをサポートすることが同社のミッションという野原社長は、想いの一つひとつを具現化するために計画を進めている。自動車や家電、半導体から航空宇宙関連の産業まで、様々な分野のものづくりを縁の下で支える企業になること、それが同社の目指す姿だ。
企業データ
- 企業名
- 株式会社MTI.Network
当社は前身の会社にて技術開発支援と受託評価のサービスを20年間提供してきた実績があり、元大手自動車部品メーカーの開発系エンジニアや大学の先生等の技術顧問からなる技術部隊を整えておりますので、新しい技術に関して装置メーカー単独では対応が難しい装置の選定・設計から試作、評価に至る様々なご支援が可能です。
取材日:2018年9月27日