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国産素材・技術を組み合わせ世界に発信「株式会社三幸グローバル」
2022年 7月25日
化粧品や健康補助食品(サプリメント)のOEM(相手先ブランドによる生産)事業を主力に、世界18カ国でビジネスを展開する三幸グローバル(奈良県橿原市、大阪営業所=大阪市中央区)。国内の協力工場に生産を委託し、「日本の素材と技術を世界に提供する」を旗印に、BtoB(企業向けビジネス)事業に強みを発揮してきた。
ただ、化粧品・健康食品市場の競争環境はここ数年で大きく激変した。このため、別会社であるICHIインターナショナル(京都市西京区)のネットショッピングサイトを大幅に改善し、BtoC(消費者向けビジネス)分野を強化。その勢いで、既存のBtoB分野のテコ入れも進めようとしている。
国際競争の激化で海外売り上げが減少
創業は1969年。現社長である山田博賢氏の父・博志氏が山田商事として個人創業した。73年に三幸トレード(現三幸グローバル)を設立し、吉田工業(現YKK)の輸出代理店として、主にYKKファスナーの海外販売を開始。社名の「三幸」は得意先、仕入先、そして同社の社員とその家族を意味し、ビジネスを通じて三者が幸せと豊かさを共有できれば素晴らしいという願いを込めたという。
輸出商社としてスタートした三幸グローバルは、現在でも売り上げの7割を海外向けが占める。輸出先は台湾、韓国、シンガポール、タイ、香港、米国、英国、フランスなどが主力だ。海外での展示会にも積極的に出店し、7年前までは中東諸国の企業にもOEM供給していた。
ところがここ数年、海外の同業他社が低価格攻勢をかけるなどして、一部商品の取引先を奪われた。一時は4億円を超えていた年間売上高も、3億円台まで落ちこんだ。さらに2020年初頭からの新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、国際物流分野で「世界的なコンテナ不足による海上輸送費の高騰」に陥った。
海上輸送費の高騰は、今後も続く見通しだといわれる。海外向けOEMビジネスはますます苦しくなることが予想され、この穴を埋め合わせることができる新たな事業を創造することが求められた。
ネットショップを刷新し、国内通販を強化
ICHIインターナショナルは、先代から三幸グローバル社長を引き継いだ2004年の同時期に設立した。BtoB事業の三幸グローバルに対し、BtoC分野に強い会社を作れないかと考えた結果だ。ただ当時はBtoB事業が順調だったため、BtoC事業にそれほど力を入れていなかった。
ICHIインターナショナルが扱う化粧品は、肌への負担を抑えるため、すべての製品で合成香料、合成着色料、紫外線吸収剤、鉱物油などが「無添加」という点が売り物。日本人の肌に合った、より安全・安心な化粧品にするため、パッチテスト、アレルギーテストなどの臨床試験を日本人の被験者のみで行う。1種類でも十分なスキンケアが行え、敏感肌や乾燥肌で悩む人に最適だという。
化粧品のベースとなる水には、北アルプス・立山連峰の地下水脈からくみ上げた温泉水を使用する。肌なじみがよく、ミネラルが豊富で、代謝やバリアーの働きをサポートする。また日本の食文化をヒントに「梅・宇治茶・有機米・酒粕・大豆」などの植物由来成分を保湿成分として積極的に取り入れている。
商品そのものには自信がある。そこで「海外向けOEM事業に代わり、日本国内向けの自社製品を扱うICHIインターナショナルのEC(電子商取引)サイトを抜本的に改良し、通信販売を伸ばそう」と考えた。BtoC分野についてはノウハウがないため、まずは大阪市の中小企業支援施設を訪問。そこで、中小機構が提供する「EC活用支援アドバイス」という支援メニューを紹介された。
2021年夏ごろから、この支援サービスを活用し、まずはECの専門家に既存の自社サイトを見てもらった。すると「正直言って何を売っているサイトか分かりにくい」「ショッピングサイトには見えにくい」と親身にアドバイスを受けた。
その上で、ランディング(集客)ページの作り方から、ブランディングの仕方、価格戦略、商品の定期購入機能の設定、キャンペーンの組み方、リピート客の追い方、さらにはメールマガジンの書き方まで、事細かな助言を受けた。「ここまで親身になって教えてくれるとは考えていなかった」と振り返る。専門家に対する相談回数は22年4月までに8回に上ったという。
消費者向けとOEM、ともに1億円上乗せ目指す
今後は、さらに5~6回ほど専門家のアドバイスを受け、今夏から秋にかけて全面的に刷新したショッピングサイトをオープンする計画だ。サイト刷新後の売上目標は初年度3000万円。さらに「自然派化粧品会社が考える無添加食品シリーズ」の販売も手がける計画だ。並行して化粧品のセット販売を強化する方針で、3年後には1億円の売上高を目指している。
一方、主力事業である三幸グローバルのOEM事業の強化も進める。「消費者向けの新たなショッピングサイトがOEM事業の入口商品としての宣伝ツールにもなる」と考えているからである。
現状は「海外企業を中心に20社程度と得意先が少ないのが弱み」と山田社長。コロナ禍によって過去2年間、海外展示会などに出展できなかった影響もあり、新規取引先が増えなかった。このため今後は、日本国内を含めて毎年4つ以上の展示会に積極的に出展するなどして、毎年13社ずつ新規取引先を開拓する。
今後3年間でOEM供給先を39社増やし、年間1億円以上の売上高上乗せを目指す三幸グローバル。10年後のあるべき姿として、山田社長は「社員が実践で国際ビジネスを学べる企業でありたい」と強調する。
企業データ
- 企業名
- 株式会社三幸グローバル
- Webサイト
- 設立
- 1973年11月21日
- 資本金
- 1000万円
- 従業員数
- 7人
- 代表者
- 山田博賢 氏
- 所在地
- 奈良県橿原市今井町4-9-4(大阪営業所 大阪市中央区博労町1-4-10博労エステートビル401号)
- Tel
- 06-6268-4835
- 事業内容
- 化粧品、ヘルスケアサプリメント、容器・包装資材