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「サスティナブル・スマートタウン(SST)」を新たな価値創造の舞台に【パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長・山本賢一郎氏】<連載第4回>(全4回)

2021年 2月19日

山本 賢一郎(パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長)
山本 賢一郎(パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長)

本連載シリーズでは、IoTなどの最先端技術を活用しながら、産官学連携によって持続可能な街づくりを行うパナソニック株式会社の「サスティナブル・スマートタウン(SST)」について、プロジェクト責任者の山本賢一郎氏に伺ってきました。最終回は、SSTの事例から読み解く自社リソースの活用方法について掘り下げるとともに、山本氏からの中小企業に向けたメッセージを紹介します。

SSTに学ぶ、自社リソースの活かし方

自社の保有リソースを最大限活かすことは、あらゆる企業が発展するために欠かせない要素です。湘南の中心という人気エリア・神奈川県藤沢市の工場跡地を売却して資金に換えるのではなく、その資産を家電などの事業で培ってきた自社の知見と組み合わせることで、産官学の共創による新価値創出の舞台とした藤沢SSTは、その好例とも言えるでしょう。

「SSTの構想が生まれた2010年は、『スマートシティ』のコンセプトが社会に広がりつつあった時期です。人々の暮らしに近いB to C事業を行ってきた当社がこの課題と向き合い、藤沢市にあった『土地』という資産をどう活かすかを考えた時の答えがSSTでした。技術などほかの企業リソースの活かし方もこれに通ずるものがあります」

まずは「自社の価値を高める」という視点から、社内リソースを捉え直す意識を持つことが最初のステップと言えるでしょう。

世間を広く見て、リソースの活かし方を探る

同時に、時代の動きに目を配ることも欠かせません。

「この技術は今こんな使い方をしているけれど、別の目的にも使えるんじゃないか。そんな発想をもちつつ広くアンテナを張り、業界内に限らない社会全体の動きを捉えていけば、きっとその技術の別の活かし方につながるヒントが見つかるはずです」

自社リソースの活かし方が見えてきたら、次はそれを外部に“伝わる形”でアピールする段階。この時に欠かせないのが「顧客視点」です。

「私もかつて『自分が製品を使った時にどう思うか考えなさい』とよく言われました。想定顧客の先にいるエンドユーザーの姿まで視野に入れ、利用シーン全体にどんな課題があるかを探り、どこをどう改善すればどんな利点があるかを考える。それを分かりやすく相手に伝えることができれば、単なる技術が『説得力ある技術』になります」

実証フィールドをもつSSTを挑戦の舞台に

SSTの推進において、特に中小企業に求められることはあるのでしょうか。

「スピードが重視される今の時代、中小企業の身軽さは大きな武器になると思います。そして何より、中小企業は大企業より深い部分を突き詰めている分、独自技術など尖った強みを持っている。これらを広く社会で役立てていくには、道を極めると同時に、柔軟性をもって外からの声を取り入れることも大切だと思います」

連携によって、自社の技術をより大きな舞台で活かすという道も考えられるでしょう。山本氏はSSTのプロジェクトを進めていて実感したことを基に、最後にこんなメッセージを残してくれました。

「昨今、連携による価値創造の重要性が広く伝えられていますが、企業間で議論を重ねていくと、壁にぶつかる時が訪れます。その壁を超えるには、形にしたモデルを磨いていく実証フィールドが必要です。連携を通じて、社会課題を解決する先進的なソリューションを形にしたいと考えている方には、ぜひSSTを挑戦の場として考えてもらいたいですね」

連載「「サスティナブル・スマートタウン(SST)」を新たな価値創造の舞台に」

山本賢一郎(やまもと・けんいちろう)
パナソニック株式会社 ビジネスソリューション本部 CRE事業推進部 部長

1990年4月、松下電器産業株式会社(現・パナソニック株式会社)入社。以来、社内で一貫してB to B事業分野を担当する。パナソニックシステムソリューションズ社首都圏本部や、本社の建設事業推進本部、設備事業推進本部などにおける多彩なチームをリーダーとして率いた後、2016年4月に本社ビジネスソリューション本部企画・開発担当総括に就任。2018年10月より、同本部CRE事業推進部部長およびFujisawa SST協議会代表幹事を務める。

取材日:2020年12月14日