これからの訪日外国人旅行者ビジネス
「ジョセンミュージアム」 外国人で大盛況なロボットレストラン
アパレル業界に関わっていた、ジョセンミュージアムの大澤奈美恵社長は、女性が輝ける場所をつくりたいと常々考えていた。そこで、ガンダムが好きだった世代のサラリーマンをターゲットに、ダンサーとロボットを合わせた何かをつくろうと考えたという。
当時の日本では未だショービジネスは確立されておらず、ダンサーを職業にしようとしてもその収入だけでは生活が成り立たない。そのため国内のダンサーのほとんどがアルバイトをしているという状態だった。
それに対して大澤社長は常々ダンサーという職業を確立させたいと考えており、また当時、東日本大震災で沈んだ雰囲気にあった新宿・歌舞伎町に元気を取り戻そうと自ら秘めていたビジネスの立上げを決意した。
そして東日本大震災の翌2012年7月、ロボットレストランがオープンした。大澤社長もダンサー兼社長としてショーに参加する。集客のために店舗周辺でチラシを配り、2台の奇抜な大型ロボットを乗せたトラックを走らせ宣伝した。しかし、広告宣伝に力を入れるも来店客は一向に増えなかった。
外国人観光客がソーシャルメディアで紹介したことで一気にブレイク
そんなある日、ロボットレストランに転機が訪れた。ショーを見学した外国人観光客が自ら撮影した写真をフェイスブックにアップしたり、ツイッターにコメントを書くと、それを見た海外メディアが取材に訪れたのだ。
その結果、海外マスメディアの放映を見た外国人観光客が来店し、彼らが写真やコメントをアップしていくといったサイクルで外国人観光客にロボットレストランの存在が広まっていったのだ。やがてロボットレストランは日本のメディアからも取材を受けるようになった。
オープンして半年後には外国人観光客が一気に増えたため、ロボットレストランはターゲットを外国人に変更した。ホームページは、日本語に加えて中国語、英語でも対応できるようにした。また、どんな空港にも置かれている外国人向けフリーペーパーにディスカウントクーポン付の広告を掲載した。
英語で対応できるスタッフを店外に配置し、メニューには日本語と英語を併記し、店内アナウンスも英語で行うように変更した。大澤社長自ら海外視察を行い、そこで学んだものを随時ショーに加えたりもした。その結果、国内外の有名人も来店し、彼らが感想をツイートしたこともあり来店客はますます増えていった。
「カッコいい、かわいい、面白い」をコンセプトに
ロボットレストランで上演されるショーには「カッコいい、かわいい、面白い」の3要素を必ず入れるようにしている。簡単なストーリー仕立てのものもあるが、あまりセリフはない。
レストランでは50体のロボットを所有し、ショーの内容によって使うロボットは適宜変更している。太鼓なども取り入れた和のイメージのショーも行う。それにより国籍や老若男女を問わず楽しめるエンターテイメントとなっている。
海外のショーと比較しても価格に対してクオリティーは高いと評判だ。来店客は、オープン当初は男性が多かったが、最近は女性も増えてきたという。聴覚障がい者や車椅子の顧客も来場される。ロボットレストランのショーは顧客を選ばず、楽しめるという証拠であろう。
ブランド化を進展させる
ロボットレストランの来店客は圧倒的に欧米人が多い。欧米にはショーなどの娯楽にお金をかける文化があり、逆にアジア圏からの観光客はブランドなどモノにお金をかける傾向があるように見受けられる。今後は、ロボットレストランをさらにブランド化することで、アジア圏の観光客も誘致したいという。ブランド化を図りつつ、タイ、シンガポール、香港、台湾などからの観光客を誘致すべく、旅行会社関係の展示会にも出展しPRに努めている。
すでにロボットレストランは大手の旅行代理店のナイトツアーやオプショナルツアーに組み込まれている。新宿は外国人観光客が多く訪れる街であるが、外国人が夜遊ぶところはあまりないといわれる。そのためツアー客の需要はあると考えられる。
ロボットレストランの出店では驚くほどの費用がかけられているが、ジョセンミュージアムには「儲ける」という概念がないという。来店した人たちを楽しませ、ショーを見た人たちからのお礼の言葉と笑顔こそがやりがいだという純粋な想いが、ロボットレストランの最大の原動力であり魅力なのだろう。
企業データ
- 企業名
- 株式会社ジョセンミュージアム
- Webサイト
- 代表者
- 代表取締役 大澤奈美恵
- 所在地
- 東京都新宿区歌舞伎町1-7-1
- 事業内容
- アミューズメントショー企画運営
掲載日:2015年3月 9日