BreakThrough 企業インタビュー
多彩な半導体レーザの技術を活かし、社会の課題を解決【株式会社QDレーザ】<連載第2回(全2回)>
2020年 12月 14日
各種半導体レーザの開発・製造を手がける「株式会社QDレーザ」は、世界で初めて実用化に成功した「量子ドットレーザ」をはじめとする独自の技術によって、さまざまな分野の課題を解決しています。2回連載の後半となるこの記事では、製品・技術を開発する際のポイントや、企業連携を成功させるための考え方などについて菅原充社長に伺いました。
コア技術を磨き幅広い分野に展開
ベンチャー企業の株式会社QDレーザは、半導体レーザによる光の生成・制御という自社のコア技術を磨きながら、広く社会での活用可能性を探り、通信、加工、センシング、ディスプレイなど幅広い分野で事業を展開しています。
「ナノサイズの半導体粒子である『量子ドット』を発光源に使った『量子ドットレーザ』は、200°Cでも安定して稼働し、低電力で高速通信が可能。このレーザを搭載して集積回路内の情報を光で伝送する当社の『光/電気変換チップ』を使えば、データセンターの消費電力を大きく削減できます」
情報処理や光通信の基盤技術として高い期待が寄せられるこの量子ドットレーザは、顔認証や自動運転の車間距離計測などでも活躍。三原色のレーザ光で網膜上に映像を描く「VISIRIUM(ビジリウム) Technology」は視覚支援やAR表示に、また従来は不可能だった緑やオレンジの光を放つ半導体レーザは細胞一つ一つの高速測定などに利用されています。
従来にない技術を生み出すために
イノベーティブな技術を数多く生み出してきた同社は「株式会社富士通研究所」で半導体の研究をしていた菅原氏が、2006年にスピンオフベンチャーとして設立した会社。半導体技術の可能性を突き詰め、さまざまな社会課題の解決につなげていくことが目標です。
「新発見は偶然から生まれることも多いので、何事もいろいろ試してみる姿勢は大切だと思います。ただ、その発見を社会で役立てようとするなら、物理的な原則に照らして、上手くいった理由を明らかにすることが必要。また、従来にない技術や製品を生み出そうとするなら、自分にない技術を持った相手と上手く連携していく方法もあるでしょう」
「量子ドットレーザ」の開発を進め、その性能を向上させる上では、「量子ドット」をつくる結晶成長などの知見を持った東京大学との共同研究が大きな力になったと言います。
企業連携成功の鍵はwin-winのパートナーシップ
そんな菅原氏に、連携を成功させる秘訣を尋ねてみました。
「互いの強みを活かしながら、新しいものを創造していく。そうしたwin-winのパートナーシップを築くことがまずは重要だと思います。その上で目標や情報をしっかり共有する。社内に共同研究の意義をアピールし、認めてもらう突破力も必要になると思います」
「人の可能性を照らせ。」をスローガンに、幅広い分野で自社技術の社会実装に力を入れる同社は、現在、「VISIRIUM Technology」の応用として、網膜に投影したレーザー光の反射データを利用して検眼を行う小型眼底検査機の開発などにも取り組んでいます。
「『VISIRIUM Technology』やそれを製品化した『RETISSA(レティッサ) シリーズ』は、視覚支援やAR表示の手段として、社会のさまざまな場面で活用できると思います。自社の技術を活かしながら、この技術・製品をともに社会に広げていってくれる企業の方とご縁を結べたら嬉しいですね」
連載「多彩な半導体レーザの技術を活かし、社会の課題を解決」
- 第一回 半導体レーザで網膜に画像を描く、従来にない視力支援・VR表示の技術を開発
- 第二回 多彩な半導体レーザの技術を活かし、社会の課題を解決
企業データ
- 企業名
- 株式会社QDレーザ
- 設立
- 2006年創業
- 代表者
- 代表取締役社長・菅原 充(すがわら・みつる)
2006年、株式会社富士通研究所のスピンオフベンチャーとして創業。各種半導体レーザの開発、製造、社会実装を手がけ、通信、レーザ加工、センシング、ディスプレイなど幅広い分野での事業を展開。世界で初めて実用化、量産化に成功した量子ドットレーザや、網膜にレーザー光で直接画像を投影する「VISIRIUM Technology」など多数の独自技術を保有している。
取材日:2020年11月5日