中小企業応援士に聞く
1000年の歴史を誇る土佐和紙の伝統を継承していく【株式会社三彩(高知県土佐市)代表取締役・鈴木佐知代氏】
中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する 全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。
2021年11月 8日
1.事業内容をおしえてください
清流・仁淀川(によどがわ)の水の恵みを受けて栄えた1000年の紙の町・土佐市で、土佐和紙の生産技術を活用した不織布を用いて、美容や調理、生活関連の商品の企画開発・販売を行っている。三和製紙(土佐市)を中心としたグループ企業の一員で、女性向けの商品を扱うことから、2012年に私を含めて女性2人で創業した。「三彩」という社名は、安定感がある数字だとしてグループ企業の多くが使用している「三」に、女性だけの会社で彩りを添えるという意味で「彩」を付けた。現在も女性4人で仕事をしている。
創業時から展開しているブランド名の「りぐる」は、「おしゃれをする」「こだわる」などといった意味の高知の方言。繊維が太くて長いという特徴を持つ「楮(こうぞ)」を原料とする不織布は、薄くても丈夫で、水に濡れても破れにくい。そうした「こだわり」の素材から、フェイスマスクなどの商品を開発・販売している。その後、「mizukami(みずかみ)」「くらす三彩」のブランドを立ち上げ、「りぐる」と合わせて3ブランドを展開している。いずれも使用した人たちが笑顔になることを目指して企画した商品だ。
2.強みは何でしょう
上質な土佐和紙の伝統的な技術に、女性ならではの視点で新しい工夫を施して商品を開発しているのが強み。2013年には「りぐる不織布ロール 美活クッキング」が「高知家のいい物・おいしい物発見コンクール」非食品部門で大賞を受賞した。また、土佐和紙の技術に新しい工夫を加えた「ハイブリッド和紙」である「mizukami」は、調理ペーパーなど5商品で2018年に第32回高知県地場産業大賞の奨励賞を受賞した。
ユーザーも女性が多く、そうした女性たちからの声にも対応している。たとえば、不織布に化粧水を含んだフェイスマスク「りぐる夢美肌マスク」に対して、「自分が普段使っている化粧水や美容液を使いたい」という声が多数寄せられた。確かに女性は使い慣れた化粧品を好むので、その後、ユーザーが手持ちの化粧水や美容液を含ませることができるドライシート「和紙マスク」を開発した。ちなみに、この商品には美術品の修復にも使用される和紙の原料である楮を配合していることをアピールしようと、商品パッケージにモナリザの絵を使っている。
また、原料の楮をグループ企業のクリーンアグリ(土佐市)で栽培するなど、原料から原紙の製造、オリジナル商品への加工・販売まで、一貫した生産体制をグループ内で確立しているのも強みだ。
3.課題はありますか
四国以外での販路の開拓が一番の課題。以前は大都市圏に出張して営業活動を行っていたが、コロナ禍で遠出ができなくなったことで、EC(電子商取引)の必要性を痛感した。現在は自社の公式ホームページだけで販売しているが、これからはECモールに出店したいと考えている。
それと合わせ、情報発信力も強化したい。ECによる販路開拓には、SNSを通じた情報発信を積極的に行い、自社のファンを作らないといけない。インフルエンサー(主にSNSでの情報発信によって世間に対して大きな影響を与える人たち)に自社の商品を使用してもらい、情報発信を進めたい。
また、現在展開している3つのブランドのコンセプトを明確にしたい。もともとは「りぐる」だけだったが、2015~16年に受講した中小機構のセミナーでブランディングの重要性を認識した。創業後、「mizukami」「くらす三彩」のブランドを追加したが、それぞれのブランドの区分けがまだ不十分に思える。ユーザーに分かりやすいブランディングを確立したい。
4.将来をどう展望しますか
課題でも取り上げたが、四国内だけでなく、国内外に販売できるよう販路開拓に努めたい。SNSを通じた情報発信やECモールを活用した販路開拓に取り組みながら売上拡大につなげたい。以前に受講したセミナーで講師から「10年後に売上高1億円を目指そう」と言われたことが強く印象に残っている。あれから5年ほど経過し、まだ道半ばだが、その目標を達成したい。
5. 地域や業界とのつながりで、御社が大切にしていることは何ですか
1000年以上の歴史を誇る土佐和紙の高度な伝統技術や優れた品質などを継承するための取り組みを、グループ企業と一体となって続けている。生産量が激減している和紙の原料・楮をグループ内で栽培しているのもその一環。土佐和紙の産地としてのブランド構築、認知度向上に努めたい。
地域に根付く企業への取り組みもグループ企業とともに行っている。たとえば、昨今のコロナ禍のなか高知県内の飲食店や土佐市へ除菌シートを寄贈している。また、高知龍馬マラソンなど地域イベントへは以前から協賛などの形で協力している。高知市や土佐市などがコースになっている龍馬マラソンは今年2月開催予定だった前回、コロナ禍で中止となったが、次回は参加人数を制限したうえで開催される予定。従来どおり賞品として自社商品を提供することにしている。
さらに、浅尾沈下橋(あそおちんかばし)など仁淀川流域が舞台として数多く登場するアニメ映画「竜とそばかすの姫」では、タイアップ商品「CAMP KITCHEN CLOTH(竜とそばかすの姫Ver.)」を販売し、地域の宣伝のお手伝いをした。
6.応援士としての抱負は
応援士を委嘱され、その責任の重さに身が引き締まる思いだ。私を含めてスタッフ全員が中小機構主催のセミナーや商談会などに積極的に参加してきている。そうした機構の支援を通じて得た知識やノウハウをもって地域の企業やグループ会社に還元していきたい。応援士としても、地域の皆さんが笑顔になれるような活動を行っていきたい。
企業データ
- 企業名
- 株式会社三彩
- Webサイト
- 設立
- 2012年5月(創業:同年9月)
- 代表者
- 鈴木佐知代氏
- 所在地
- 高知県土佐市北地4517-2
- Tel
- 088-852-3866
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