コロナ禍でがんばる中小企業
従来のスキー場モデルから脱却、通年で集客できるマウンテンリゾート地へ進化【株式会社岩岳リゾート】(長野県白馬村)
2022年 7月20日
1.コロナでどのような影響を受けましたか
当社は北アルプスの絶景を望む白馬村で「白馬岩岳マウンテンリゾート」を運営している。スキー客が訪れるウインターシーズン(前年12月~3月)だけでなく、グリーンシーズン(4月~11月)も含めた通年で集客しようと、ここ数年、各種の施設を新設している。かつては他のスキー場と同様、ウインターシーズンのみで年間の売り上げの大半を稼いでいた。しかし、1990年代をピークにスキー人口が減り続けるなか、そうしたビジネスモデルは通用しなくなってきた。そこで、従来のスキー場モデルからの脱却が重要と考え、オールシーズンで楽しめるマウンテンリゾートを目指すこととした。
具体的には、2017年にマウンテンバイク(MTB)の初心者向けダウンヒルコースを「白馬岩岳MTB PARK」内に造成、翌年には、ニューヨーク発の人気ベーカリー「THE CITY BAKERY」を併設した絶景テラス&カフェ「HAKUBA MOUNTAIN HARBOR(白馬マウンテンハーバー)」を開業した。ここからは紅葉シーズンをはじめ四季折々の白馬三山の美しい眺めを堪能できる。これらの取り組みが奏功し、グリーンシーズンの来場者数は2017年の2万9000人から、2018年は6万人、そして2019年は13万人と2倍以上に伸び、初めてウインターシーズン(11万9000人)を超えた。
しかし、2020年はコロナ禍で来場者数が減少した。最初の緊急事態宣言下では全施設で1カ月ほど営業を休止し、5月に予定していたアウトドア・音楽イベントも9月に延期した。来場者数はウインターシーズン(2019年12月~2020年3月)が5万2000人、グリーンシーズン(同年4月~11月)が10万3000人。とくに冬は厳しく、インバウンド(訪日外国人)客が激減するなどして、来場者数は前年同期の半分以下となった。
2.どのような対策を講じましたか
緊急事態宣言が解除された後はまず長野県在住者のみを受け入れ、状況を見ながら徐々に制限を解除していった。施設内では、消毒やゴンドラリフトの抗菌処理、ゴンドラリフト内のアクリル板設置などの基本的な感染予防対策を実施。延期されていたアウトドア・音楽イベントでは、会場にソーシャルディスタンス確保のためゴルフのマーカーを等間隔で置き、密を回避する工夫を施した。
コロナ禍前から始めていたオールシーズンマウンテンリゾートを目指す取り組みは、国の事業再構築補助金や自治体の助成制度を活用するなどしてさらに進めた。2020年8月に「ヤッホー!スウィング presented by にゃんこ大戦争」を新設。人気アニメ「アルプスの少女ハイジ」の世界を彷彿とさせるような大型ブランコで、雄大な北アルプスに飛び込むような感覚を楽しめる。昨年7月には日本初となるマウンテン・アクティビティ「Mountaincart(マウンテンカート)」を導入した。グリーンシーズンには使用していなかったスキー場の斜面も活用し、大自然の中を最高時速50kmのスピードで駆け抜けるスリリングな体験を味わえる。また、ペット連れの来場者専用の絶景ドッグテラス「HAKUBA WAN! TAIN HARBOR(白馬ワン!テンハーバー)」も昨年7月にオープンした。
さらに同年11月には、新展望エリア「白馬ヒトトキノモリ」がプレオ—プンした。標高1100mに位置する「5線サウスリフト」乗り場一帯を整備したもので、北アルプスの絶景を見渡すことができる。エリア内には、東京・表参道や京都・嵐山で人気のティ-ラテとスコーンの専門店「CHAVATY(チャバティ)」が出店した。これに合わせて、ウインターシーズンだけ運行していたリフトをグリーンシーズンにも稼働させたほか、「白馬ヒトトキノモリ」につながるマウンテンバイクとマウンテンカートのコースを新設した。
こうした積極的な展開で2021年のグリーンシーズンの来場者数は対前年同期比30%増の13万4000人と大きく伸び、コロナ禍前の2019年を上回って過去最高を記録した。この流れは今年に入っても続いている。「白馬ヒトトキノモリ」が4月28日にグランドオープンしたこともあり、ゴールデンウイーク期間中(4月29日~5月8日)の来場者数は過去最高となる1万7000人にのぼった。一方、ウインターシーズンはコロナ禍前の水準にまだ戻っていないが、2021年は6万6000人、2022年は9万9000人と回復傾向にある。
3.今後はどのように展開していく予定ですか
「世界水準のオールシーズンマウンテンリゾートへの進化」を合言葉とし、通年で楽しめるマウンテンリゾートへの進化を続けていきたい。大自然に囲まれた白馬エリアは、単にスキー場としてではなく、非日常性が味わえるリゾート地としてのポテンシャルが高い。とくに、リゾート地でゆったりとした過ごし方を好む外国人観光客からは、コロナ禍前から人気が高く、それだけに訪日外国人の受け入れ再開の動向にも期待したい。
また、地域全体の活性化にもつなげていきたい。従来のように冬だけスキー客が訪れ、それ以外の時期は閑散としているという状態では、雇用は季節的なものにならざるをえないし、事業者は設備の新設・更新といった投資にも消極的となり、結果的に施設の老朽化が進んでしまう。一方、通年で集客できるようになれば、安定的な雇用が可能となり、設備投資もしやすくなる。白馬岩岳マウンテンリゾートが地域の集客装置として通年で白馬エリアに人を呼び込むことで、地域に活気を取り戻していきたい。
1998年の長野五輪の会場にもなった白馬エリアは、「白馬バレー」と呼ばれ、当社が運営する「白馬岩岳スノーフィールド」を含めて10カ所のスキー場が集まっている。当社だけがよくなればいいということではなく、エリア全体として取り組みを進め、白馬バレーが世界でトップ10に入るようなオールシーズンのリゾート地を目指していきたい。そのためにまずは当社がモデルケースを構築していきたい。
企業データ
- 企業名
- 株式会社岩岳リゾート
- Webサイト
- 設立
- 1985年8月8日
- 資本金
- 7500万円
- 従業員数
- 正社員29人
- 代表者
- 和田寛(わだ・ゆたか)氏
- 所在地
- 長野県北安曇郡白馬村大字北城12056番地
- Tel
- 0261-72-2474
- 事業内容
- スキー場一般(索道事業・飲食業)
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