BreakThrough 企業インタビュー
本音で語り合える仲間と連携し、ものづくり企業の地位を高めたい【株式会社奥谷金網製作所】(兵庫県神戸市)<連載第2回(全2回)>
2020年 10月 22日
総合金網、パンチングメタルメーカーの「株式会社奥谷金網製作所」は、主力事業で高い評価を得ながら、自社の技術開発や連携にも注力し、熱可塑性炭素繊維強化樹脂(CFRTP)製「CFRTP EXメッシュ」の共同開発を業界で初めて成功させています。同社の奥谷智彦代表取締役社長にお話を伺う連載の後編は、企業連携の意義やポイント、同社が思い描く業界の未来などについて紹介します。
まずは“外に出る”ことから
奥谷金網製作所では、自社の顧客となる製造業界全体に目を配り、今後の動きを見据えて新技術開発や企業連携に力を注いできました。
「今後は中小メーカーも提案力を問われる時代になると思います。得意先から受注した部材を提供するだけでなく、他メーカーとともに各社の得意分野を活かしながら従来にない価値を持つ製品を生み出せれば、1000円の部材を10倍100倍の価値をもつ製品に変えることもできる。そのためにも、展示会や製造業の集まりなどには積極的に顔を出し、自社の技術を外に発信することが大切だと思います」
外に出ることが、自社の立ち位置の客観的な理解や、将来のパートナーとの出会いなどにもつながります。奥谷社長自身も若手の頃、地元の中小ものづくり企業による共同開発プラットフォームで連携の仕方や共同特許の出願方法などを学べたことが、後の大手企業との連携で大きく役立ったといいます。
連携の学びを自社事業にどう活かすかが大切
では、企業連携を成功させるためのポイントとは何でしょうか。
「まず、各社の役割をはっきりと決め、まとめ役を設定すること。各社の認識をすりあわせ、全関係者で共有すること。そして機密保持契約や特許の共同出願で、情報漏洩を防ぐこと。また、受注中心で活動していると忘れがちですが、『作ったものをどう販売していくか』という視点も重要です」
連携では自社の利益ばかりを考えるのではなく、「連携で得た学びを後の自社の事業にどう活かすか」というスタンスで臨むほうがよい結果を生みやすいといいます。
「企業連携を行えば、従来とは異なる分野への知見や新たな人脈、連携をサポートしてくれる行政機関とのつながりや、外の空気に触れた自社の連携担当者の成長など、必ず得るものがあります。そうした学びが、企業の体幹を強くしていくと考えています」
共感に基づく仲間づくりを進めていきたい
同社は今後、どのような未来を見据えているのでしょうか。
「パンチング技術力世界ナンバーワンを目指し、独自の価値を持つ企業として世界での認知度を向上させていきたい。そのためにも情報をどんどん発信する。安易にできない理由を並べず、トップ自らリスクを取って挑戦を続けていきたいです」
その上で、企業連携による付加価値の高い製品づくりによって、金網・パンチングメタル業界、中小ものづくり企業の地位を向上させていきたいというビジョンを持っています。
「実際、1社でできることは限られています。ビジネスである以上、連携もある程度のメリットが見込まれることが前提ですが、お互いがいかに良い技術、シーズ、販路を持っていたとしても、相性が合わなければ協力関係を続け、シナジーを生み出していくのは難しい。相手に敬意を持った上で、本音で話をし、時にはケンカもしながら、表面上の連携ではなく、共感に基づく仲間づくりを進めていきたいですね」
連載「本音で語り合える仲間と連携し、ものづくり企業の地位を高めたい」
- 第一回 業界初!強く、軽く、そして再利用も可能な炭素繊維強化樹脂メッシュを開発
- 第二回 本音で語り合える仲間と連携し、ものづくり企業の地位を高めたい
企業データ
- 企業名
- 株式会社奥谷金網製作所
- 設立
- 1895年創業
- 代表者
- 代表取締役社長・奥谷智彦(おくたに・ともひこ)
1895年創業。金網・パンチングメタルの製造を中心に、樹脂パンチングなどの新規事業にも積極的に取り組む。大手メーカー各社から製品・品質認定を得るとともに、経済産業省の「地域未来牽引企業」など、公的機関からも数多く表彰、選定を受けている。企業連携による開発、特許出願も多数。
取材日:2020年8月17日