BreakThrough 企業インタビュー

土に還るまで安心・安全。 ゼロエミッションの理念から生まれた「くん炭ボード」は 縁の下の力持ちから住の主役へ【株式会社工房成瀬】

2017年 10月 29日

高い吸放湿性を持つ工房成瀬の資源循環型商品「くん炭ボード」
高い吸放湿性を持つ工房成瀬の資源循環型商品「くん炭ボード」

学ぶべきポイント

「昔からある」ものをより良い形で活用する着眼点
環境問題を後世のツケにしない取り組み
顧客の要望に応える応用商品の展開

日本を代表する農作物である米。米が主食の日本人にとって米の豊作は歓迎されることだが、その一方で精米時に排出される稲の籾殻は国内で年間200万トンにものぼる。稲の籾殻には有効な処理方法が存在せず、米処ではその処理に苦慮する現状がある。

炭の一種であるくん炭は稲の籾殻を燻焼にしたもので、それ自体の歴史は古く、江戸時代には既に作られているものだ。くん炭には大小無数の微細な穴が空いており、付着する微生物の数は他の炭と比較して桁違いに多いことから吸放湿性が高く、消臭・断熱に有効でその効果はほぼ半永久的に持続する。

環境問題を将来のツケにしない資源循環型

この高い吸放湿性や消臭・断熱効果に早くから着目し、断熱材として建築に取り入れたのが工房成瀬だ。当初はくん炭をそのまま利用していたこともあり、建築中の現場において粉末で建材が汚れてしまうといった問題点があったが、くん炭の固形化(ボード化)に成功したことで、住宅の断熱材として取り入れやすい形として同社の主力商品となった。「くん炭ボード」は製造過程において人体に有害な化学物質が一切使われていないため、住環境においてホルムアルデヒドなど人体の健康に対する影響がない。

また、将来住宅の取り壊しなどで廃材となった場合、化学物質が含まれる他建築廃材では処理コストの問題や、焼却処理で有害物質が発生するといった環境面への影響を考える必要がある。その点、くん炭は従来土壌改良材として農業用培地の再利用にも使われており、「くん炭ボード」も同様に土に戻すことで処理できる資源循環型のエコ商品だ。

顧客からの提案を新たな形で展開

家屋の断熱材としてスタートした「くん炭ボード」。しかし、新築住宅への導入ならまだしも、既存住宅の場合はリフォームを必要とするため導入コストもかかり気軽に行うことは難しい。“断熱材以外にもその用途の幅は広いのでは?”という顧客の提案からヒントを得て、すぐに新商品の開発に着手した。現在では消臭だけでなく、防虫効果などを全面に打ち出した張替えの容易な畳床や取り替えのしやすいドア、天井パネルといったオリジナル建具・家具も展開している。

くん炭ボード

顧客の声からヒントを得る姿勢、そして新商品開発に着手する取り組みの早さは、多くの企業が学ぶべきところ。
消臭・耐熱・防虫といった様々な特性を生かした技術は、枕やベッドなど消臭効果を求める寝具業界や、防虫効果に期待する家具業界などで応用できるのではないだろうか。

企業データ

企業名
株式会社工房成瀬

弊社は、省エネルギーで環境負荷の低い低炭素社会の実現に向け、課題解決に寄与する製品、サービスの開発、普及・提供に取り組んでおります。また、製品原材料の生産を地域農家との連携事業として行う事で地域経済の振興を図ると共に自治体を含めた地域一体としての新たな産業の創出を目標として事業運営を進めております。