中小企業応援士に聞く
正直に王道を行く経営で業容拡大【株式会社はなおか(徳島県北島町)代表取締役会長CEO・花岡秀芳氏】
中小機構は令和元年度から中小企業・小規模事業者の活躍や地域の発展に貢献する全国各地の経営者や支援機関に「中小企業応援士」を委嘱している。どんな事業に取り組んでいるのか、応援士の横顔を紹介する。
2023年 3月 13日
1.事業内容をおしえてください
注文住宅の設計・施工、リフォームなどを事業としている。2004年に徳島県内の注文住宅着工戸数で第1位になって以来、18年連続で注文住宅着工数ナンバー1を継続しており、地域密着型の注文住宅会社として事業を展開している。
もともと家業は、祖父が米・穀物問屋と漬物問屋、父はスーパーマーケットを経営していた。私自身も1979年に大学を卒業した後は、父の「綜合ストアーはなおか」に就職し、店長を経験した。ところが近隣の人口減少が進む中、大手スーパーの進出が相次ぎ、信用を保てる余力があるうちに閉店しようと決意した。妻と水処理業の「四国アクアシステム」を89年に起業し、6年間はスーパーと重複して経営した。
97年に「はなおか」に社名を変更して、住宅事業に進出。もともと水処理業で起業した当初から第二創業の必要性を考えていた。幼い時から土地・建物に興味があり、宅地建物取引士の資格を取得していたこと、また将来的に市場そのものは縮小する半面、やり方によっては可能性があると感じていたことが、住宅業界に進出した理由である。
近年の売上高は、2019年6月期が36億9000万円、20年6月期は44億円、21年6月期は48億5000万円、22年6月期は50億1000万円で推移している。県内の新築住宅着工戸数は右肩下がりで減少する中、当社の着工戸数は少しずつ伸びており、コロナ禍という逆風の中でも一歩ずつ前進している。
2.強みは何でしょう
事業面では、まず当社専属の大工を約60人、一級・二級建築士の資格保有者を約30人抱えている点が挙げられる。特に専属大工制度は住宅事業参入当初から導入。毎月実施される「大工会議」で建築技術の勉強会や情報共有を行い、スキルアップにつなげているほか、各地の伝統的な建築物を見学する大工旅行・研修も実施している。これに加え、社員大工制度を導入し、若手大工の育成にも取り組んでいる。
米大手格付け会社、S&Pグローバルマーケットインテリジェンスの国内中堅・中小企業向け格付けサービス「日本SME格付け」を取得していることも強みだ。2007年に四国で初めて取得して以来、15年連続で取得し、2021年10月には最高評価である「aaa」(トリプルエー)を獲得した。
ただそれ以上に、組織面で「理念経営」を進め、従業員や顧客を大切にしながら利益を生み出す手法が大きいと言える。はなおかでは「正直に王道を行く」を経営理念に掲げ、社訓は「親切に、丁寧に、きっちりと」、社風は「自由・活発」であり、社員全員がそれを理解し、行動指針としている。
この行動指針を実現するために、「人間力」の向上に力を入れているのも特徴だ。年間平均100回を超えるセミナー・研修への参加や、講師を招いての勉強会など、知識や技術の向上に向けた取り組みを実施している。「見聞を深め、人としての幅を広げる」という考えから、20年連続で海外などへの社員研修旅行も積極的に行っている。
こうした社員育成制度や職場環境づくり、さらには取引先や顧客・地域を大切にする風土が認められ、17年に「第6回四国でいちばん大切にしたい会社大賞」の中小企業基盤整備機構四国本部長賞を受賞した。20年には経済産業省から「地域未来牽引企業」に選定され、地域経済の中心的な担い手となり得る企業として認められた。
3.課題はありますか
新型コロナウイルス感染症の世界的蔓延により、特に中国からの資材が輸入できなくなり、納期もわからない状況となった。住宅業界では木材や金属価格が高騰する「ウッドショック」「アイアンショック」や、最近では円安による物価高騰も深刻化している。
注文住宅の場合、住宅の見積もりから、契約、引渡しに至るまで平均で約1年間はかかる。ところが会社の方針として、お客様に再契約を求めなかったため、資材高騰に伴う価格転嫁ができず、通期で想定していた経常利益に比べて2億円のマイナスとなった。
これに対し、事業継続計画(BCP)を策定し、この計画に基づいた対応を実施している。例えば中国からの輸入停止については、お客様に説明・了解を得た上で、各メーカーと打ち合わせを進め、代替品対応をした。また各メーカーに約1年分の納品予定計画を明示し、できる限り対応していただくよう要請した。円安による資材のコストアップについても、取引企業と打合せを密にし、比較的原価の上昇を抑えることができた。
コロナ禍による影響では、週1回の社内全体会議や、月1回の県下全域建築中現場の一斉清掃、社員旅行・大工さん旅行・忘年会・新人歓迎会などができなくなった。集客の基本である注文住宅の完成見学会も開催できず、開催しても予約制により来場者数が低下した。対策として、コミュニケーションツールの活用やeラーニングの採用、SNSの発信強化を進めている。
また大手2社が徳島県に進出し、県内での競争が激化したことも大きな課題だ。現に優秀な人材の引き抜きを継続的に仕掛けられた。こうした動きに対し、社内で経営理念などを再確認し、会社の考え方や目指すべき方向を社員と再度共有した。この結果、現在のところ人材の流出は起きていない。普段の経営理念・社訓の浸透と社風への共感によるものと考えている。
4.将来をどう展望しますか
DX(デジタルトランスフォーメーション)については、まず情報を共有化できる施工管理アプリケーションを導入した。写真や図面の管理、報告書や工程表の作成に加え、協力業者とのコミュニケーションもグループチャットで行うことが可能になる機能を備えているので、効率的でリアルタイムな意思疎通が図れるようになった。
使い方がわかると施工管理アプリケーションは現場にとって欠かせないツールになった。今では60歳代のベテラン大工もスマートフォンでクラウドにアクセスし、図面を拡大・縮小するなど、十分に使いこなし、効率的な業務が実施できている。
近い将来、徳島県外に営業エリアを拡大することも検討している。また今までは注文住宅がメインだったが、今後は分譲住宅の販売も広げていく。
5.経営者として大切にしていることは何ですか
地域社会の発展に貢献できる会社を目指して「とくしま協働の森づくり事業」への参画や、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギーハウス)住宅の推進、2018年11月にオープンした事務所別館「hanaco(ハナコ)」を通じてのコミュニケーションスペースの提供(無料開放)など、地域のサスティナビリティー向上に向けた活動を推進している。
これらの取り組みに加え、「健康リスクの少ない住まいの提供」「体験学習の提供」「経済産業省の地域未来選定企業としての取り組み」「業務へのICT導入」「行政との防災協定」「BCP(事業継続計画)の作成」など会社での取り組み事例46件について、SDGs(持続可能な開発目標)の具体的事例として発信している。
6.応援士としての抱負は
最近は大学の教職員向けや、事業構想大学院大学などの教育機関対象の講演も増えてきている。また、企業幹部の視察の受け入れや、他企業後継者からの相談の機会も増えてきている。そういう機会には「中小機構」や「中小企業応援士」にも触れて、情報発信していきたいと考えている。
企業データ
- 企業名
- 株式会社はなおか
- Webサイト
- 設立
- 1989年7月1日
- 代表者
- 花岡秀芳 氏
- 所在地
- 徳島県板野郡北島町鯛浜字西ノ須162-9
- Tel
- 088-698-1114
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